
9月19日の19時より、スマートフォンアプリ『グランブルーファンタジー(以下、グラブル)』にて9月分の古戦場イベントが開催中です。今回の有利属性は火、敵の属性は風です。ボスは召喚石で先に登場していた、「シャインホーク・ガルラ」。CVは速水奨さんで、とても威厳のあるボスになっています。
実はこのガルラ、元ネタと思われるインド神話でも、まったく違和感のない活躍をしているんです。
まさに無双。神々ですら太刀打ちできない鳥、ガルラ

インド神話でのガルラは、とにかく強いの一言です。設定等、インフレ気味で知られるインド神話ですが、その中であってもガルラは負け知らずの存在。神々の王ですら退けています。
彼の物語自体、まるで主人公が辿るようなエピソードになっています。ガルダは生まれた時から強大な存在で、インド神話の神々を恐れさせるほどでした。そんな彼にももちろん母親がいるわけですが、彼女はナーガという蛇の一族と賭けをして負け、彼らの下で奴隷として扱われるという罰を受けることに。ガルラは母親の開放を願ってナーガたちと交渉します。その結果、神々が管理している不死の聖水を奪ってこい、と無理難題を吹っかけられることになるのです。
神々は厳重にその聖水を管理していましたが、ガルラは警備についていた神々を倒して見事に聖水を奪取。あっさりと目的を達成してしまいますが、そう簡単に相手も諦めてくれるわけではありません。神々の王、インドラも追撃に加わります。しかしガルラはインドラの攻撃をものともしませんでした。そしてそのまま反撃……はせず、ガルラはインドラに敬意を払い、神々と友情を結ぶことになります。聖水も、母を解放した後に返すことで和解しました。
更にこの時ガルラは、破壊神シヴァとも同格の守護神・ヴィシュヌとも友情を結び、彼から不死になる力を得、ガルラ自身はヴィシュヌを運ぶ神鳥として活躍するようにもなります。
さてその後、ガルラはナーガたちの下に聖水を持ち帰ることになります。ナーガたちは喜びますが、前述の通りガルラにはインドラとの約束がありました。そこでまず、ナーガたちに聖水を飲む前に沐浴をするべきだと吹き込みます。既に母親が解放されていたこともあって、その間にインドラは聖水を回収。母を騙したナーガを逆に騙すことに成功したわけです。
風属性なのに、なぜ「大雷」? ガルラの正体とは

聖なる鳥として語られるガルラは、『グラブル』だと鳥人とでも呼ぶべきデザインになっています。これはインド神話の方でも同じで、鷹の顔や嘴、翼を持っており、身体は人間のものでした。また、古戦場で使用してくる特殊技、「大雷」にも由来と思われるエピソードが神話にあります。
雷といえばガルダが聖水を奪った時に戦ったインドラのモチーフで、ガルラと直接的な繋がりがあるわけではありません。しかし実は、ガルラはインドラの分身とも呼べる存在だったりします。
彼がなぜインドラの分身のような存在となったのか。原因はガルラが生まれる前にまで遡ります。ガルラの母は彼が生まれる前、なかなか子供が出来ずに悩んでいました。そこで儀式を行い、子供を得ようと考えます。その手伝いをインドラはしていましたが、同じように儀式に協力していた小人の賢者たちのことを侮辱してしまいます。これに怒った小人たちは、儀式に別の祈りを込めることを思いつきました。もう1人のインドラが生まれるように、というものです。
それを知ったインドラはガルラの母にも頼んで問題の解決を図ろうとしますが、儀式自体は成功してしまっていました。この後、ガルラの母は彼を生み、インドラと互角の存在として成長するわけです。
ちなみに、インドラとは関係なくガルラには兄弟が1人います。アルナという暁の神で、ガルラと同じくタマゴから生まれました。しかしタマゴがなかなか孵らなかったため、焦った2人の母はアルナのタマゴを割ってしまいます。その結果、アルラは上半身だけで生まれることになり、母親のことを恨むように。彼女が奴隷になる呪いもかけてしまいました。ナーガの奴隷になった原因は、実は母親自身にもあったりしたわけです。
ガルラは仏教にも登場。『グラブル』の威厳に溢れたキャラクター像はここから?

ガルラはインド神話だけでなく、仏教にも登場します。ガルラがモデルになっているとされる「迦楼羅天(かるらてん)」という神様で、基本的にはガルラと同じような性質を持っている存在です。人々を煩悩から守るため、煩悩の象徴である蛇を食べる、という部分も同じ。
『グラブル』のガルラのデザインも、仏教からの影響をいくつか推測することが出来ます。錫杖のような杖を持っていますし、背中には後光のようなものも。オーバードライブ状態になると、雷が流れているような演出があります。これはインドラの分身であることを考えると、決してあり得ない演出ではないでしょう。
他には左右に浮いている黄金の球体ですが、これも仏教と無関係ではなさそうです。「如意宝珠」という宝珠が存在しており、これは願いをかなえる道具でもあります。如意、という言葉には、意のままに操る、という意味も。特殊技の「イエロースフィア」では縦横無尽に球体が動いている姿が確認できるので、元になっている可能性は高そうです。
また、ガルラの周囲にあるスフィアは風が輪を描いているような演出があります。輪、チャクラムはヴィシュヌが所持している武器で、こちらはガルラとの関係から来ているのかもしれません。
名前やデザインがよく似ている風属性の恒常ボス、ガルーラ。神話由来の名称はこちらの方が多め?

神話ではよくある話ですが、ガルラという名前は読み方の1つでもあります。ガルラはガルダと呼ばれることもあり、『グラブル』に以前から存在しているマルチバトルのボス、ガルーダとは元ネタが一緒という可能性が非常に高いです。
デザインはより人に近い形となっていますが、羽が生えているなど、シャインホーク・ガルラとの共通点は多いです。属性の方も風。特殊技やドロップする武器もインド神話から名前を得ていると思われるものが多くなっています。
例えば特殊技ですが、「ラクタパクシャ」、「ラーサナ」、「ガルマトーン」、「スレーンドラジット」と、使用するものはすべてガルダの異名から取られています。ドロップする武器、「スパルナフェザー」もガルダの異名ですし、もう1つの「インドラリム」については、上述したインドラとの関連性を考えることが出来ます。
『グラブル』のガルーダは対戦中のセリフ、デザインからも幼い印象がある一方、シャインホーク・ガルラは威厳に満ちた、神々しい雰囲気があります。もしかするとガルーダはインド神話における若い頃の彼を、シャインホーク・ガルラはインドラの分身としての側面、あるいは仏教にあるような守護神らしい姿をイメージしながら制作されたのかもしれません。
参考文献:『知っておきたい伝説の英雄とモンスター』(監修:金光 仁三郎、出版:西東社)、『知っておきたい伝説の武器・防具・刀剣』(監修:金光 仁三郎、出版:西東社)、『知っておきたい世界と日本の神々』(監修:松村 一男、出版:西東社)、『ゼロからわかるインド神話』(著:かみゆ歴史編集部、出版:イースト・プレス)、『マハーバーラタ 第1巻』(訳:山際 素男、出版:グーテンベルク21)