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コンピュータゲームの歴史は、ゲームハードごとに様々な時代を築いてきました。黎明期に爆発的ブームを起こしたファミコン時代や、新たな波を感じさせたプレイステーション時代など、直近のニンテンドースイッチとPS4の盛り上がりにも決して引けを取りません。
ファミコン時代の活気を受け継いだスーパーファミコン時代も、実に活気に満ちたひとときでした。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といったファミコンの名作RPGが、より美麗なドット表現を手に入れ、容量の大きさを活かしたボリューム感溢れるシリーズ作を展開。その正統進化に、多くのゲームファンが酔いしれました。
また、シリーズ作ばかりでなく、スーパーファミコン時代に生まれた新たな名作も少なくありません。その数は枚挙に暇がないほどですが、スクウェア(現 スクウェア・エニックス)が世に送り出した『クロノ・トリガー』も、忘れられないRPGのひとつ。時代を超える冒険は良質の物語と相まって、新規IPながら非常に多くのユーザーに親しまれました。
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名作が生まれると、その続編を望む声が自然と挙がるもの。その点で言えば、『ドラクエ』や『FF』などはまさに代表的な作品で、現在にも続く長いシリーズ展開を続けています。そしてこの『クロノ・トリガー』も、続編に当たる『クロノ・クロス』が登場しました。ですが、多くのシリーズ作が辿る“正統進化”とは異なる道を、この『クロノ・クロス』は選んだのです。
そんな意欲作『クロノ・クロス』が発売されたのは、今からちょうど20年前の1999年11月18日。今回は本作の20周年を祝い、『クロノ・クロス』がどのような作品だったのか、その特徴を振り返ってみたいと思います。また、『クロノ・クロス』に寄せた熱い想いが読者の方々から到着しているので、そちらも合わせてご覧ください。
◆『2』ではなく『クロス』を選んだ挑戦作『クロノ・クロス』
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1995年3月11日に発売されたスーパーファミコンソフト『クロノ・トリガー』は、スーパーバイザーとして堀井雄二氏と坂口博信氏が参加しており、メインキャラクターのデザインは鳥山明氏が担当。『ドラクエ』や『FF』を語る上で決して外せないクリエイター陣が参加する、まさに夢のようなソフトでした。それだけにゲームファンから高い期待を集めましたが、その期待を裏切らない完成度の高さで、今も語り継がれる名作として名を残しています。
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ですが、『トリガー』のリリースから4年以上の月日を経て登場した『クロノ・クロス』は、プラットフォームもプレイステーションに変更し、見た目やバトルシステム、物語の軸となる「時間」との向き合い方も変化させるなど、様々な点で異なる道を選んでいます。
一目で分かる最も大きな違いは、グラフィックでしょう。『トリガー』はスーファミソフトだったので、まさにドット絵の全盛期。一方『クロス』は、プレステが得意とする3D描写を活かし、キャラクターをポリゴンで表現。キャラクターデザインも結城信輝氏が手がけており、ビジュアルについては一新と表現していいほどの変化を遂げました。
バトルシステムも、『トリガー』はアクティブタイムバトルをグレードアップさせた「ATB Ver.2」を採用し、緊迫感ある戦闘を演出。ですが『クロス』では、「スタミナ」の概念を導入し、スタミナがある限り“いつでも誰でも”コマンド入力が可能となる「クロス・シーケンス・バトル」で、戦略性の高い戦闘を実現しました。
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パーティに加わる人数も大きな違いがあり、『トリガー』は一般的なRPGと同程度の人数ですが、『クロス』では40人以上のキャラクターをパーティに加えることが可能。この多様性が、編成とバトルの選択肢を更に増やしてくれます。
そして、物語の根幹に関わる“時間”へのアプローチですが、現在・過去・未来を旅する『トリガー』は、いわばタイムトラベル型。対する『クロス』は、異なる展開を辿ったパラレルワールドを行き来します。流れた時間は同じでも、その道程に違いがある平行世界を渡る『クロス』の冒険は、『トリガー』と明確に異なる刺激を与えてくれます。
共通する世界を背景としながらも、『トリガー』の要素をそのまま継承する選択はせず、独自性を模索した『クロス』。前作を引き継ぎ、正統進化を果たすシリーズ作が多い中、本作は新たな可能性にチャレンジしたことが、作品の様々な部分から窺えます。
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正統進化となる『クロノ・トリガー2』ではなく、『クロノ・クロス』という道を選んだ本作は、『クロノ・トリガー』が歩まなかった“パラレルな『クロノ・トリガー』”なのかもしれない──あくまで筆者個人の考えですが、そんな想像を膨らませたくなるくらい、『クロノ・クロス』は自由な作品だったように思います。
誤解のないように補足しておきますが、『クロノ・クロス』は『クロノ・トリガー』を否定するものでは一切ありません。設定は関連作としてしっかりと結びついていますし、音楽面も光田康典氏が引き続き担当しています。世代のバトンを渡す親子のような関係ではなく、尊敬する師匠と弟子のような関係が、『クロノ・トリガー』と『クロノ・クロス』に近しいと言えるでしょう。
◆『クロノ・クロス』を今遊ぶには、ゲームアーカイブス版がお勧め。その前に『クロノ・トリガー』もプレイして欲しい!
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『クロノ・クロス』はプレイステーションソフトですが、ゲームアーカイブス入りを果たしており、PS3やPSP、PS Vitaでプレイすることができます。オリジナル版を入手するには中古市場しかないので、もし本記事で興味を持った方は、価格もお手ごろなゲームアーカイブス版をお勧めします。
ですが、『クロノ・トリガー』も未プレイならば、まずは『クロノ・トリガー』をぜひ遊んでください。ビジュアルやゲームシステムも異なる両作ですが、世界観は同一なので、『クロノ・トリガー』でその世界をあらかじめ知っておくと理解がより深まります。
ちなみに『クロノ・トリガー』は、スーファミ版以外にも、様々なプラットフォームで展開。ゲームアーカイブス版もありますし、ニンテンドーDS版も発売済み。多くの人が所持しているスマートフォン向けにもリリースされていますし、2018年にはアップグレード版も登場しているので、場所を選ばず遊びたい人にはスマホ版がうってつけです。「スマホよりも大きな画面で遊びたい!」という方は、SteamにてPC版が配信されているので、そちらを一考してみましょう。
『クロノ・トリガー』と比べると、『クロノ・クロス』のプレイ環境は限られているので、PCやスマホへの移植やリメイクなど、今後の展開に期待したいところです。
グラフィック、音楽、ヒロインとのラスト・・・様々な魅力に惹かれた読者たちの声もご覧あれ