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皆さんは「神様」に祈ったことはありますか?この答えは、それぞれのパーソナリティや経験によって変わることでしょう。筆者はクリスチャンですが、(ここだけの話)あまり神様に祈ることがありません。しかし、もし身近な人が重い病に臥せってしまったら、毎日のように教会へ行き、手を合わせると思います。
『WILL-素晴らしき世界-』は、そんな「どうにかしてほしい」という人々の願いを、神様となって叶えていくアドベンチャーゲームです。プレイヤーは神様である少女・ユアンとなって、「イシ」と名乗るしゃべる犬(?)とともに、人間の運命を変えていきます。
因果関係を変えて運命を変える
プレイヤーの元に届くのは、人間からの祈りの手紙。そこには、手紙の差出人が体験した出来事が書かれています。学校でのトラブルから、心中を図る現場まで、その“重み”はさまざま。しかし共通するのは、「どうにかしてくれ!」という切なる願いです。
イシから手渡された魔法のペン。これを使うと、手紙の内容を分割し、入れ替えることができます。プレイヤーは手紙に書かれた出来事の順番を変え、因果関係を変え、結末を変えるのです。
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手紙の差出人は、快活なテニス少女、貧しさから自殺未遂をしてしまう画家、オタクの青年、マフィアの抗争に巻き込まれるメキシコ人の姉弟、韓国警察の新米刑事など、実に多種多様。彼らの人生は手紙でしか知る由もありませんが、文面からそのパーソナリティがひしひしと感じられ、人間ドラマに没頭することができます。
シーンによっては、テキストの背景にスチルが表れ、より鮮明なイメージを私たちに与えてくれます。少女漫画ライクなイラストタッチは、プレイヤーを選びません。
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ADV+ロジックパズル
手紙の内容を入れ替えた結末は、手紙ごとに「Rank S」から「Bad」まで複数用意されており、プレイヤーは基本的にRank Sを目指します。
実は、因果関係を入れ替えるのは、一通の手紙の中だけとは限りません。時には二人のキャラクターから送られてきた手紙を読み、まとめて解決しなくてはならないことも。
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二人が陥るシチュエーションは場所も状況もまったく異なっており、読んでいる間は「入れ替えてどうにかなるの?」とつい思ってしまうのですが、これが不思議と解決します。人の運命っておもしろいですね。
また、場合によってはどう入れ替えても解決できないことがあります。こんなときは、別の人物の運命を変えてみましょう。そちらで知った事柄やパーソナリティが、何か変化をもたらすかもしれませんよ。
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この、手紙の内容を入れ替えるという本作のゲームプレイは、やや難しいところがあります。というのも、「この手紙では誰をどうすればいいのか」というゴールが明記されておらず、入れ替えるテキストも非常に短いので、因果関係が少々わかりにくいのです。
難易度ノーマルでプレイすると、文字色の変化によるヒントが表示されるので、これを頼りに考えをめぐらせてみましょう(難易度インポッシブルでは、ヒントは表示されません)。どうすれば幸せになるのか想像し、そこへ導くように出来事を入れ替えるのがポイントです。
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言うなれば、ロジックパズル的な要素を孕んだ作品ということ。ゲームが進むにつれて、ちょっと頭を使ったり、手紙の内容を確かめることが多くなります。「神様も頭を使うんだな……」と実感できるはずです。
その結末に、何を感じますか?
良いことがあったとき、人は神様に感謝こそすれ、願いはしません。神様に「願う」のは、不幸だったり、困難に直面してしまったり、自分の力ではどうにもならないことが起きたときです。
神様であるプレイヤーは、そんな不幸や困難と対峙しなくてはならなくなった人間たちの“傍観者”でもあります。そして、時には「この願いを叶えていいのだろうか?」とも考えることになるのです。
その先にある結末は何なのか……もしかしたら、神様なのに無力感を覚える瞬間があるかもしれません。でも、それが人間。それが運命。最後までプレイすると、きっと何かを感じられるはずです。
なお本作は、ニンテンドーeショップにてセールが実施中。通常価格1,480円のところ、20%オフの1,184円で販売されています。