FC時代の代表的ホラーADVは、スーファミで鮮やかに蘇る──『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女』
ゲームのジャンルは、時代に合わせて人気が変動することや、新たなジャンルが登場することも度々あります。また、2つ以上のジャンルを合わせ持つ作品が出てくることも珍しくありません。
ホラー・サスペンス系の作品は、時代に合わせて発展した分かりやすい例と言えるでしょう。ファミコン時代にもホラー系の作品はありましたが、グラフィック表現という壁があり、恐ろしさをビジュアルで演出するのは難しい時代でした。
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例えば、アーケード向けに登場した『スプラッターハウス』は、ホラー映画のようなビジュアルを徹底し、恐怖体験とアクション性を融合。インパクト満点の見た目は、ホラーアクションの代名詞としても知られています。
そんな『スプラッターハウス』も、ファミコン版になるとタイトルが『スプラッターハウス わんぱくグラフィティ』となり、雰囲気も一変。移植ではなくアレンジ作とでも言うべき作品で、その見た目は可愛らしく、コミカルにデフォルメされたキャラクターが活躍するゲームとなりました。
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また、ガチ方向でホラーに挑んだファミコンソフトとしては、『スウィートホーム』が有名です。RPGを下地にホラー要素を取り入れ、得体の知れない恐ろしさと閉塞感のある不気味さを巧みに醸し出し、ファミコン時代の代表的なホラー作品のひとつとして知られています。
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ですが、『スウィートホーム』の恐怖感は、優れた演出や緊張感を伴うゲーム性、そして想像力を刺激する展開とシチュエーションが軸となっており、見た目の表現には一定の限界がありました。例えば移動パートは、当時のRPGで一般的だったデフォルメキャラを操作するタイプで、そこにリアルな臨場感はありません。
視覚的なハンデを、想像力の誘導で補った点も『スウィートホーム』の素晴らしい点ですが、同時にファミコンソフトである以上、グラフィック表現は超えがたい壁として存在したのです。
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そんな、ホラー・サスペンス系のゲームにとって厳しかったファミコン時代に、ADVという角度から切り込んだ作品がありました。それが、『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女』です。謎めく事件の真相に迫る推理系ADVですが、物語を進めると妖しいオカルトの影をちらつかせ、鮮やかなジャパニーズホラーでプレイヤーに忘れがたい恐怖体験を与えたのです。
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女子高生殺人事件の調査と、高校に広がる「うしろの少女」という怪談。このふたつの物語が次第に絡み合い、結末に向けて集約していく手法も流石ですが、タイトルの「うしろに立つ少女」の意味が分かった時は、比喩ではなく本当に背筋がぞくりとし、記憶に刻まれるゲーム体験となりました。
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物語の内容を詳しく語るとネタバレになってしまうのが難しいところですが、ファミコン時代のホラー作品のひとつとして、『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女』は燦然と輝く存在でした。
そして、この『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女』も、スーパーファミコンで鮮やかに蘇ります。ファミコン版はどうしてもドットが目立つビジュアルでしたが、その見た目は大きく進化。殺人事件や怪談など、日常に潜む異常や異端が軸となるだけに、グラフィックの向上は臨場感・没入感を力強く後押ししてくれました。
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基本的な物語に大きな変更はありませんが、新たなシーンが追加され、シナリオ全体も遊びやすく再構成。また、サウンドもより豊かとなり、ゲームデザインも含め、プレイ環境が大きく改善されたのも嬉しい点です。
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ちなみにファミコン版『うしろに立つ少女』はカートリッジではなく、拡張機器を使うディスクシステムソフトです。ディスクシステムのソフトは、A面・B面があり、その両面を使う作品が主流でした。
ファミコン版『うしろに立つ少女』も同様に両面を使用しており、プレイの合間にディスクを取り出し、ひっくり返して挿入し直す手間がかかります。ちょっとした作業とはいえ、没入感が少し損なわれるのは否めません。しかも、前編・後編の2枚組構成なので、入れ替える手間はもう一手順増えます。
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ですが、スーパーファミコン版『うしろに立つ少女』は、前編・後編を1本にまとめたカートリッジソフト。入れ替えの手間は一切なく、集中力が続く限り最後まで一気に楽しめます。地味ながら、こういった点もリメイク化のメリットです。
ゲームハードの進化に伴い、ホラー作品はスーパーファミコンで広がりを見せます。『弟切草』や『学校であった怖い話』、『クロック タワー』など、いずれも名の知れた作品ばかり。そして、リメイクされた『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女』も、名作度では負けていません。
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ただし、本作にはいくつか問題点・・・というか惜しい点があります。まず、通常の販売経路ではなく、ニンテンドウパワーによる書き換えでの提供だったため、当時のユーザーにあまり認知されなかったこと。そして、プレイステーションやNINTENDO64が既に登場している1998年に発売されたこと。この2点の条件が重なった結果、プレイ満足度が高い一方で、プレイ人口には恵まれない形となりました。
そんな不遇な一幕もありましたが、作品としての面白さや評価の高さに揺るぎはありません。後年、オリジナル版・リメイク版ともにバーチャルコンソール化を果たし、そして2021年には、前作に当たる『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』と『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女』が、ニンテンドースイッチ向けにリメイクされる予定です。
平成元年にファミコンユーザーを震撼させ、スーパーファミコンでリメイクを遂げて蘇った『うしろに立つ少女』は、20年以上の時間を飛び越え、令和の時代に新たな復活を果たします。どのような形で、あのラストの衝撃を描くのか。一ファンとしても実に気になるので、3度目の復活を心待ちにするばかりです。