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現実がバレンタインで、『原神』が璃月の祭り「海灯祭」で盛り上がる中、私は1人のNPCを通して切ない思いを体験することとなりました。NPCの名前は「王鉗」。造船所で働く豪快な笑い方が特徴の男です。
彼は「思妤」という幼馴染を愛しており、社会人として生活基盤が整った暁には告白するつもりでした。しかし、2年前に思妤は別の人と結婚。「彼女も“お嫁さんになる”という夢を叶えて、お金持ちと結婚したんだぜ。時間は待ってくれないというけど、幼馴染はもっと待ってくれないぜ、ハハハ…」と結婚を祝福しつつも、告白が間に合わなかったことを悔いるのです。
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私との会話で「ハハハッ!」と笑いを絶やさなかった彼が、思妤の話題を終えるころには「くっ…俺が最初に…うううっ…」と涙を浮かべる始末。口には出さなかったものの、言おうとしたのは「好きになったのに…」でしょう。
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さらに追い打ちをかけるのが、彼に対する思妤の認識です。幼い頃からよくしてもらった“本当の兄のような存在”と思っており、そこに恋愛感情は見られません。結婚後も頼りになる友人として、旦那のために買った大量の食材を運んでもらえないか悩む姿まで見られます。
いちおう彼が旦那を気に入っていないのは勘づいていますが、その理由は分かっておらず、頑張って仲良くさせようと頭を悩ませているんだとか。彼の恋愛感情にも一切気づいていません。
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おまけに彼がよく笑う理由は、思妤から言われた「嫌なことがあっても寝て起きたらまた新しい1日だよ」でした。思妤の励ましと笑顔に支えられ、嫌なことでもいつか終わると信じるようになったのです。
しかし、現在進行形で彼が感じる嫌なことは、支えだった思妤が結婚した事実。これから励ましと笑顔を向けられるたびに、告白ができなかった悔しさを思い出す“終わらない嫌なこと”が続くわけです。
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――というわけで、恋敗れた王鉗の物語をお届けしました。NPCの中には、彼に限らず“恋の話題”を提供してくる者が何人かいます。その内容は王鉗に負けず劣らず、一癖も二癖もあるものばかり。
本記事では、そんなNPCたちの恋愛事情をいくつかまとめてみました。ドロドロなものからピュアなものまで、テイワット大陸の住民がどんな恋をしているか見てみましょう。
親の反対を押し切ってまで愛を貫く純愛カップル
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王鉗が悔し涙を浮かべる中、モンドでは一組のカップルが純愛を貫いていました。男性の名前は「マーヴィン」、女性の名前は「マーラ」です。お互いを深く愛し合う2人ですが、人前で堂々と会うことはしません。なぜなら、この恋愛が明るみに出せない“秘密の恋”だからです。
2人に立ちふさがる大きな障害が、結婚に猛反対なマーヴィンの父親。仲を裂かれてなるものかと考える2人は、ひそかに続く交際がバレないよう、皆が寝静まった夜にだけこっそり出会うのです。
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愛を確かめ合った後は何事もなかったかのように日常へ戻るものの、毎晩の逢瀬が響いてか常に寝不足状態。2人の恋が成就するかは、「父親を説得しなければ…」と考えるマーヴィンの行動力にかかっています。
ヘタレ彼氏と盲目彼女
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モンド城に住む盲目の女性「グローリー」には、遠征中の騎士団員「グッドウィン」という恋人がいます。遠征がいつ終わるか分からないため、グッドウィンに会えず寂しい思いが続く毎日。それでも、高名な騎士団長の率いるチームにグッドウィンが選ばれたことを喜び、早く再会できることを願うのです。
しかし件のグッドウィン、実は遠征に行っていません。モンド城からほど近い風立ちの地で、当てもなくさまよう毎日を過ごしています。遠征隊に選ばれたのは事実ですが、トラブルで置いて行かれたのです。
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トラブルの原因はグローリーからの贈り物をなくしたからで、必死に探していたら置いて行かれたとのこと。結果的に贈り物も遠征隊の行方も見つからず、「グローリーに会わせる顔がない…」とモンド城に戻れずにいるのです。惨めな気持ちも分かりますが、信じて待ち続けるグローリーが不憫でなりません。
“元”一番理想的な吟遊詩人夫婦
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吟遊詩人の「マイワイス」は、過去に「愛を称えるマイワイス」の異名で人気を博していました。しかし、離婚後は愛に対して憎しみを抱くようになり、異名も「愛を終わらせるマイワイス」に変化。モンドの女性たちに愛が嘘であることを伝えるべく、今日も吟遊詩人として活動中です。
マイワイスの元夫も吟遊詩人で名前は「デービー」。かつては2人揃って「一番理想的な吟遊詩人夫婦」と言われたそうですが、結婚生活でいろいろあってか、夫婦仲は地の底まで落ちたようです。
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今ではお互いを嫌悪する間柄になり、“愛は嘘だ!”をモットーに新曲「愛情は人を思考できないヨシにする(マイワイス作)」、「結婚は監獄(デービー作)」を手掛ける日々を送っています。愛は時にここまで人を変えるのですね。
侍女に恋するおぼっちゃん
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商人の経験を積むために無茶苦茶な買い物をし、父親から家を追い出されたおぼっちゃん「輝」。彼がひそかに想いを寄せる相手こそ、お付きの侍女「茜」です。
今は家を追い出され荒れていますが、成功した暁には告白する気満々。ただし、プライドが高いため直接的な愛は語りません。「いつか成功したら…待ってろよ!」や「俺は望舒旅館をまるごと買ってさ…茜にひとりで皿洗いしてもらうよ、フン…」など、遠回しに茜への恋心をほのめかすのです。
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このまま堕落しそうな雰囲気もありますが、輝の母親いわく「父さんも若い頃に似たようなことをしたから、特に心配していない」とのこと。成功者である父親と同じ行動をするあたり、将来は成功しそうですね。
ちなみに茜は、輝の恋心に気づいた素振りはありません。今の輝は“まだ間に合う王鉗”なので、悲しい思いをしないよう応援したくなります。
星を見ずに想い人を見る
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層岩巨淵の封鎖で仕事がなくなった鉱夫「鉄塊」は、新たな目標として天文学を学ぶことにしました。教えを乞うのは天文学者の「紫微」です。
毎晩のように天体観測へ向かう2人ですが、実は鉄塊に天文学を学ぶ気はありません。なぜなら、真の目的が天体観測を利用して紫微を見つめることだから。そうです、鉄塊は紫微に片思い中なのです。
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紫微は大好きな天体観測ができてイキイキするし、常に夜空を見ているから視線に気づかれないし、目的が天体観測だから口下手でも問題ないしで、条件的にも好都合。この男、意外と策士です。
海灯祭では関係を一歩進めるために、想いを込めた詩を贈り勝負に出ました。しかし、内容がいまいち理解されず撃沈。恋心が伝わる以前の問題なので、まだチャンスはあります。めげるな鉄塊、がんばれ鉄塊。
夫をつなぎとめる仮病
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「グミ」と「青蓮」の夫婦はちょっと訳あり。船乗りとして生計を立てていたグミですが、生まれつき体が弱かった青蓮のため、会えない時間が長いからと船乗りを退職。いつでも看病でき、おまけに薬も用意できる薬草採りに転職したのです。
毎日の生活は貧しくなったものの、夫婦の時間が増えたことを青蓮も喜んでいました。しかし、自分が元気になったら船乗りに戻るかもしれない、また会えない時間が増えるかもしれないと、青蓮に不安がよぎります。これを受け入れられない青蓮は、すでに病気が完治していることをグミに隠すのです。
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ただし、グミも「青蓮が少しでも元気になれるなら、どんなことでもする」や「どんな病気も治せる薬があるなら、私はどんな代価を払ってでも…」と言っているので、青蓮への愛は本物。事情を話せば、この生活がずっと続く気もします。
色男の二股
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どこの世界にも浮気をする人間はいるものです。冥海巨獣と戦ったり、1人で海賊団を全滅させたりと、英雄的な武勇伝を自称する男「潮汐」は、璃月港で2人の女性を虜にしました。片方は町娘の「思思」、もう片方は珠鈿舫で働く「翠児」です。
どちらも潮汐を恋人と言っており、その信頼は共に生きていくことを考えるほど。しかし、潮汐にその気はありません。思思から結婚の件を振られても、なにかと理由をつけて後回しにする始末。おまけに「君を不幸にしたくないんだ。君にはもっといい相手がいるはずだ」と、思思にやんわり別れ話を切り出しています。
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ならば翠児が本命かと言われれば、そうでもありません。次に会う時は珠鈿舫から連れ出すと約束したものの、それから長い間音沙汰は無し。翠児が想いを込めた手紙を送っても、中身を見ることなく事前に用意していた「あと数日時間が欲しい」という旨の手紙を返すだけです。
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また、思思によれば別の女性と一緒にいるのを見かけたとか。潮汐はただの友達と言いますが、なんとも説得力がありません。この男、たぶん三股四股ぐらいはしてますね。
文通から始まったピュアな恋愛
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北国銀行の警備員「ナディヤ」は、もう1人の警備員「ヴラド」と文通をする仲にあります。しかし、ナディヤは遅番、ヴラドは早番のため出会う機会もなく、お互いが文通相手の名前すら知りません。
元々スネージナヤ出身の2人ですが、どちらも璃月の人々に壁を感じ、歩み寄ろうと努力しても輪の中に入れないことを寂しく思っていました。そんなある時、ナディヤが兄に向けた手紙を銀行前で紛失。それを拾ったヴラドが自分への手紙だと勘違いし、返事を書いたことで文通が始まったのです。
ヴラドの寂しさに気づいたナディヤは、文通相手として寂しさを埋めてあげたいと思い、この文通を続けることに。そしていつしか、ヴラドに手紙を書くことが生活の一部となり、その返事を楽しみにしている自分がいると気づくのです。
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この時点でエモさ極まる2人が、海灯祭でついに顔を合わせました。お互い文通相手と気づいていないものの、話すうちに親近感を感じたり、初めて会った気がしなかったりと、意気投合するのです。
晴れて知り合いとなった2人は、そのまま一緒に海灯祭を見て回りました。いつかは文通相手の正体に気づき、正式にお付き合いするのでしょう。どうか幸せになってください。
本記事で紹介したのは、あくまでも私が確認できた特徴的な恋愛のみ。テイワット全土を探せば、これ以外にもNPCの恋が見つかるかもしれません。意味深な過去を語る釣り人や稲妻から来た女性など、NPCの中には恋愛以外にも面白い話をする者がいるので、それらを探してみるのも一興です。