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1984年から2001年にかけで登場した、カプコン珠玉のアーケードタイトルが楽しめるニンテンドースイッチソフト『カプコンアーケードスタジアム』が、先週リリースを迎えました。
本作は、10本セットになったパック(3種類、各1,500円)か、30本をまとめたパック(4,000円)を別途購入することで、プレイするタイトルを増やすことが可能。懐に余裕がある方は好みのパックを購入し、懐かしい名作を存分に楽しんでいることでしょう。
また、ベースとなる『カプコンアーケードスタジアム』(無料)をダウンロードするだけで、なんと『1943~ミッドウェイ海戦~』がついてきます。つまり、実質無料で1本のタイトルを遊ぶことができるのです。
欲しいゲームが立て続くと、金銭事情はどうしても厳しくなりがち。そして、『カプコンアーケードスタジアム』を今導入すれば、無料で『1943~ミッドウェイ海戦~』が遊び放題。この絶好の機会を、逃す手はありません!
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・・・と断言したいところですが、この『カプコンアーケードスタジアム』は非常に危険な存在でもあります。もちろん、バグが~とか、価格設定が~といった、きな臭い話ではなく、純粋に“嬉しい悲鳴”を上げてしまう可能性が高いためです。
当時の少年心に描いた夢や願望が、ぎっしりみっちり詰まっている『カプコンアーケードスタジアム』。各タイトルの面白さ以前に、このソフト自体が素晴らしく、だからこそ恐ろしい! その、危険で甘美なポイントに、今回迫りたいと思います。
あの頃に夢見た「自分の部屋に筐体並べたい」を実現!
移植では満足できない時。アーケードにしかないゲームをプレイしたい時。24時間いつでも没頭したい時。当時のゲーム少年たちは、「自分の部屋に筐体があったら!」と夢見たものです。無論、筐体を買うお金なんてありませんし、部屋に置いたら親に怒られるのは必至。また、到底1台で満足できず、何台も並べたくなるのは火を見るより明らかでした。
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様々な理由(主に金銭と設置スペース)から、自室に筐体を並べる夢は自然と諦めてしまいました。ですが、この『カプコンアーケードスタジアム』を立ち上げると・・・そこには、憧れの筐体がズラリと並んでいるのです!
これが、ただゲームタイトルやサムネイルが並んでいるだけだったら、特に心を動かされることはなかったでしょう。また、それはそれで、スピーディにプレイを開始できて便利だったかもしれません。しかし『カプコンアーケードスタジアム』は、筐体を並べるレイアウトをチョイスしました。
自室のモニタに並ぶ、筐体の数々。あくまで画面の向こうの景色でしかありませんが、自分の部屋だって網膜に映った景色に過ぎません。部屋の中に筐体ズラリな画面があれば、この部屋に筐体があるも同然! 間接的にでも、かつての夢が叶ったようで、感慨深さが込み上げました。
──まだ起動しただけなのに、筆者は既にこの有様。しかし、『カプコンアーケードスタジアム』の恐ろしさは、まだまだ続きます。
店員だけに許された「難易度変更」「クレジット」も思いのまま!
ゲーセンで遊んでいると、店員が筐体を開けてる現場に出くわすこともあります。そんな時、当時は「ああ、設定を弄らせて欲しい!」と願ったものです。残機設定や難易度を調整できれば、あの難しいゲームもクリアできるのに、と。
ゲーマーとしては志が低い願望ですが、店員にしか許されない領域だからこそ、興味も湧くし触ってみたい。ついでに、有利な状態で遊びたい。そんな、好奇心と欲望の交錯もまた、当時のゲーム少年にありがちな願いでした。
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こうした(ちょっとよこしまな)夢も、『カプコンアーケードスタジアム』は叶えてくれます。さすがに筐体こそ開けられませんが、各作品ごとにゲームのセッティングが可能。例えば『魔界村』なら、難易度を「イージー」「ノーマル」「ハード」「ベリーハード」から選べます。
また、残機数は「3」「4」「5」「7」と、こちらも幅広く設定できます。残機7の『魔界村』、これなら筆者でもクリアでき・・・いや、『魔界村』はキツそうだ・・・。
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ちなみに、セッティングできる項目はタイトルごとに異なっており、『1943~ミッドウェイ海戦~』は「難易度」「ゲームスピード」「デモサウンド」の3項目。好みのセッティングで楽しめるのが嬉しいのはもちろん、あの時手が届かなかった設定が弄れるのは、ささやかながら喜びを感じられるポイントのひとつでしょう。
当時の憧れ「連コイン」がいくらでも出来る!
ゲーセンにおける憧れの行為といえば、それぞれの思い出の数だけあることと思います。1コインでクリア、対戦格闘で連戦連勝、ギャラリーを魅了する神プレイ・・・いずれも、ゲーセンを彩る名シーンです。
こういったものとは全く別のベクトルになりますが、これもひとつの憧れとして、羨ましく見つめた行為があります。それはずばり、「連コイン」。ゲームオーバーになるたび、クレジットを投入してプレイを続行する。もしくは、あらかじめ大量のクレジットを確保しておく。そんなプレイへの憧れもありました。
連コインが出来ない理由は、単純に金銭的事情に他なりません。1プレイ100円に手が出ず、やや型遅れなタイトルが並ぶものの、1プレイ50円のゲーセンに通い詰める・・・そんな日々を送っていたゲーセン少年(筆者含む)にとって、「連コイン」は高すぎるハードルでした。
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ですが、本作では「連コイン」もし放題! いくらコインを投入しても、リアルマネーはかかりません。しかも1クレジット目は、ちゃんと100円玉を挿入する、心憎い演出付きです。
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100円を投入すると、クレジットが1増えました。そこで、Rスティックを更に押し込むと・・・。
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クレジットが2に! ゲーム画面も、「1 AND 2 PLAYERS」にちゃんと変化します。
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調子に乗って押しまくり、クレジットが9まで増やしてしまいました。これに、先ほどの残機設定を合わせれば、かなり心強い状態で懐かしの名作たちに挑めます。これが石油王プレイか・・・!
「次はどれを遊ぼうかな」と歩き回る、あの時の感覚が蘇る
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『カプコンアーケードスタジアム』の中には32台もの筐体が並んでおり。DLC購入の有無に関わらず、筐体を眺めることが可能です。
そしてゲームの選択方式は、筐体の中身がチェンジするのではなく、各タイトルの筐体へと移動するスタイル。一見すると筐体が移動しているようにも見えますが、床の照明や筐体奥の背景を目安にすると、視点の方が動いているのが分かります。
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「次はどのゲームで遊ぼうかな」と店内を物色しながら、デモ画面を眺めるひととき。限られたお小遣いだからこそ、じっくり時間をかけて厳選したものです。ブラブラと彷徨いつつも、好奇心たっぷりに注視する・・・あの感じが、まさかゲーム内の空間でもう一度味わえるとは!
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ちなみに、筐体の前でBボタンを押すと引いた視点になりますが、この引きの視点でも各タイトルのデモは動いています。視界いっぱいにデモが展開するこの光景、まさにゲーセンそのもの!
地味なポイントですが、イスにバリエーションがあるのも泣かせます。イスの数が足りない時(意外とよくある)、四角いイスに2人で座ったこともありました。そして、イスに座っていいのは、プレイしている人だけ!
筐体プレイ中、「隣の画面がちょっと見える」まで再現!
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実際にゲームを遊ぶ前段階だけで興奮の連続でしたが、いざプレイが始まった後も、地味ながら心くすぐる演出がありました。それは、筐体モードでのプレイで味わえます。
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画面には、当然ながらプレイ中のゲームが表示されています。そして、画面の端をよく見てみると・・・なんと、隣の筐体の画面も映っているのです。いえ、映っているだけでなく、向こうの画面もしっかり動いており、どうやらデモを繰り返している模様です。
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無論集中すべきは、目の前のゲーム画面です。しかし、隣りのゲームプレイも気になるもの。真横で超絶テクニックなどを繰り出された日には、面クリア時などの合間に、横目で覗き込んでしまうこともしばしばありました。
目の前のゲームに集中するのが一番ですが、隣のゲームにも惹かれてしまう。あの頃の、移り気ともいえる好奇心の塊は、ゲームセンターを宝箱のように眺めていました。そんな感覚を、僅かなデモ画面が思い出させてくれる──『カプコンアーケードスタジアム』は、本当に罪作りな演出だらけです。
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ちなみに筐体のデザインによっては、隣の画面を見られる範囲がちょっと広がります。
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デモ画面が延々と流れるだけなので、一定時間で繰り返すのみながら、単体のゲーム作品では味わえないこの世界観。これだけ豊かな演出を見せられると、そのお礼を兼ねて・・・と、ついDLCに手が伸びそうになります。
『1943~ミッドウェイ海戦~』が付属するとはいえ、『カプコンアーケードスタジアム』自体はゲームではなく、システム周りや演出などを担っています。そして、そのこだわりぶりだけで、こちらの心を動かしかねない力に溢れていました。
80・90年代のゲームセンターに通い続けた、かつてのアーケード少年たちよ!本作を起動すると、怒濤のノスタルジーに襲われるので要注意だ! もちろん、ヤラれてDLCパックに手を出すのも、幸せな顛末のひとつに違いありません。
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