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初代プレイステーションの時代は、3D表現が大きく注目を集め、世界を立体的に描くゲームが徐々に増えていきました。その勢いはハードを超えてもなお続き、PS2の時代になると、更に進化したグラフィックで豊かな世界を紡ぐ時代に突入します。
広大な世界を立体的に表現した作品は多様性を増し、リアルな描写を追求するものもあれば、可愛いデフォルメ表現を求めるケースなど、実に多種多彩。その中で、独自かつ優れたデザインセンスと良質なアクション性、そして魅力的な物語で話題を集めた作品がありました。それが、PS2ソフト『大神』です。
この『大神』が発売されたのは、2006年4月20日。今からちょうど15年前となります。そこで今回は、名作『大神』の15周年を記念し、その魅力や特徴などを振り返ってみたいと思います。
まるで動く日本画! 唯一無二のデザインが時を超えてなお美しく、ゲームとしても抜群に面白い『大神』
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『大神』の世界は、日本神話や語り継がれる逸話などをベースとしながら、独自の視点とセンスでオリジナルの世界を確立しています。特にそのビジュアルデザインは今見ても美しく、他の作品に埋もれない唯一無二の魅力を放っています。
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その方向性を敢えて例えるならば、水墨画とでも言うべきでしょうか。力強くも繊細な筆致と、パステルな彩りながら落ち着きを感じさせる配色が、刺激と癒やしを合わせ持つ独特の美しさを見事に成立させました。
しかも、美しく描かれた世界は活力に満ちており、静止画ではなく動画としての美麗さを感じさせます。本作の舞台「ナカツクニ」を眺めるだけでも、目を奪われてしまうことがしばしば。解像度という点では、(15年経っているので当たり前ですが)昨今のゲームには敵わないものの、そのセンスは今も通用する洗練さに満ちています。
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ですが本作の魅力は、その見た目だけに留まりません。美しい世界を描く一方で、主人公・アマテラスが繰り出すアクションや操作性は心地よく、「動かしているだけで楽しい!」という手応えを実現。特に戦闘では、アマテラス自身の機敏な攻撃アクションに、独自要素の「筆しらべ」が加わることで、戦闘に大きなメリハリを与えてくれます。
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シンプルに恰好良い「断神・一閃」をはじめ、「筆しらべ」はいくつもの種類があり、新たなものを覚えるたびに、戦闘に広がりが加わったり、行動範囲が広がることも。また、「筆を使って画面に直接描く」というダイナミックさも、プレイヤーが一体感を覚える一助になりました。戦闘中に「筆しらべ」を使って倒せば、その演出の美しさと相まって、クセになる爽快感が得られます。
ボスクラスとの戦いでは、的確に「筆しらべ」を使う必要があるため、敵の攻撃を避けながら模索しなければなりません。糸口を見つけるまで焦ることもありますが、苦戦している時間を乗り越えた時の心地よさはまた格別。共に苦難を乗り越えた手応えは、本作への思い入れを更に後押ししてくれます。
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ビジュアルとアクションを両立している『大神』ですが、物語とそれを支えるキャラクター陣の魅力も外せません。物語の詳細はネタバレなので伏せておきますが、危機的な状況にありながらコミカルな要素も随所に見せ、多くの方が受け入れやすい間口の広さがあります。それでいて、燃える展開や涙を誘う一幕もあり、いい意味で油断の出来ない物語がたっぷり詰め込まれているのです。
音楽面も高い評価を博す『大神』ですが、その中でも「太陽は昇る」が流れるシーンでは、アマテラスの相棒「イッスン」の口上と相まって、感情が最高潮にかき立てられます。ここはゲーム史に残る名シーンと言えるほどなので、興味はあるけど未プレイという方は、この機会にぜひ遊んでいただければと! イッスンとアマテラスの関係は、ここで見事に昇華されます。
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ちなみに『大神』は、対応プラットフォームが多いという特徴も持っています。オリジナル版はPS2向けにリリースされましたが、2009年にはWii版が発売。また、HDリマスターされた『大神 絶景版』は、PS3やPCなどに広がった後、PS4にXbox One、そしてニンテンドースイッチにも登場しました。これだけ多くの広がりを見せているのも、本作の根強い人気を伺わせる一端と言えるでしょう。
完成度が高く、熱烈なファンも多い『大神』。それだけに、今も続編を望む声が絶えません。この先どうなるかは分かりませんが、だからこそ白紙の未来を、鮮やかな「筆しらべ」で彩って欲しいものです。
※パッケージ画像を除き、画像及び映像はPS3ソフト『大神 絶景版』のものです。