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本日2021年7月12日に、プレイステーションソフト『ポポロクロイス物語』が25周年を迎えました。
当時のプレイステーション(以下、PS)は、新たなゲームハードとして大きな注目を集め、その関心度の高さに応える目覚ましい活躍を展開。『FFVII』をはじめ、サードパーティのラインナップも強力でしたが、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現 ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が発売したタイトルの数々も人気を博し、盛り上がりに貢献しました。
1996年7月12日に発売された『ポポロクロイス物語』も、PSを活気づけたタイトルのひとつ。PS黎明期を支え、その後も活躍を続けた名シリーズは、四半世紀の歩みを続ける形となりました。今回はこのアニバーサリーを記念し、『ポポロクロイス物語』やシリーズの歴史を振り返りたいと思います。
■少年少女の成長と、優しい世界が織りなす『ポポロクロイス物語』
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1996年7月12日にPSソフトとして登場した『ポポロクロイス物語』ですが、本作の世界が始まったのはさらにもっと前の話。実は、田森庸介氏が手がけていた同名の漫画が、本シリーズの原点になります。
その世界観や登場人物などを引き継ぎ、RPGとしてゲーム化を果たした『ポポロクロイス物語』は、原作と同様、ガミガミ魔王に奪われた「知恵の王冠」を取り戻すべく、ナルシアや白騎士と共に、王子ピエトロが挑む物語として幕を開けます。
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厳しい冒険に立ち向かう主人公のピエトロは、わずか10歳という幼さ。そのため、時に臆病な面を見せたり、頼りないところもありますが、冒険による様々な経験を通じて頼もしく成長していく姿にこそ、彼の魅力と真価が込められています。
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そんなピエトロを支えてくれるのが、森の魔女・ナルシア。まだ修行中で、性格も内向的で大人しめの彼女ですが、ピエトロよりも1歳年上の11歳。そのためか、お姉さん的な振る舞いで頑張る姿を見せることもあり、その健気さに胸が打たれることも。
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このほかにも、正義感に篤い一方で、ちょっと間が抜けていて親しみやすい白騎士や、悪役ながら人情味に溢れており、どこか憎めないガミガミ魔王など、登場人物の多くが魅力的に描かれています。
特にピエトロとナルシアの、幼いが故の成長は目を奪われるほど。ふたりが育んでいく初々しい感情もまた、物語とユーザーの心に心地よいアクセントを与えてくれました。
また、丁寧に積み上げられているのはキャラクター描写だけではありません。彼らの行動や決意、成長を綴るストーリーも素晴らしく、非常に満足度の高いものでした。「お母さんを返せ!」などの名台詞を覚えている方も少なくないでしょう。
そして、独自の味わいがあるキャラクターデザインや、そのビジュアルにマッチしたグラフィックの数々、世界観への没入度を更に助けてくれる音楽など、全てが秀逸と言えるレベルでまとまっています。
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カジュアルなユーザー層を意識してか、ゲーム性も複雑さはなく、直感的なのも高評価の一因でしょう。バトルは、シミュレーションRPGのようにも見えますが(マス目のあるマップ上でキャラを動かす)、“分かりやすいし、可愛い”といった『ポポロクロイス物語』が持つ魅力は、このバトル面にもしっかり反映されていました。
しかもバトルは、優しげなビジュアルから連想するよりも歯応えがあり、しっかりと遊び応えを感じさせてくれるバランスに。カジュアルなゲームファンにとっては手強かったかもしれませんが、「乗り越える達成感」の入門編として最適に近い作品だったように思います。
田森庸介氏が描く魅力溢れる世界をゲームへと落とし込み、幅広いゲームファンに訴求する切り口と、ほぼ全ての要素にわたって高い完成度を実現した『ポポロクロイス物語』。このパワフルな名作は、後にシリーズ展開を生み出し、今も続く歴史を記し続けています。
■『ポポロクロイス物語』が歩んだ四半世紀と今
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『ポポロクロイス物語』の勢いと人気は、シリーズ展開へと結びつきます。まずリリースされたのは、1998年11月発売の『ポポローグ』。1作目の後日談が語られるほか、ローグライク要素をゲーム性に取り入れており、こちらも特徴的な番外編として高い評価を獲得しました。
その後も、『ポポロクロイス物語II』や『ポポロクロイス はじまりの冒険』、『ポポロクロイス 月の掟の冒険』に『ポポロクロイス物語 ピエトロ王子の冒険』といった、新作やリメイクなどを含めた様々な作品が、PSとPS2、そしてPSPに展開していきます。
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家庭用ゲーム機向けの展開は一度落ち着きを見せますが、「牧場物語」シリーズとコラボレーションを果たした『ポポロクロイス牧場物語』が2015年に発売されるなど、時を経てもなお新たな動きを見せてくれました。
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そして近年の動きといえば、2018年5月に正式サービスが開始された『ポポロクロイス物語 ナルシアの涙と妖精の笛』があります。本作は、iOS/Android向けにリリースされたタイトルで、「ピエトロとナルシアがどのように結ばれたかの過程をいつか描きたいと思っていたからです」といった開発者コメントも飛び出し、話題となりました。
シリーズ最新作の『ナルシアの涙と妖精の笛』で、ピエトロは18歳、ナルシアは19歳になりました。作品として四半世紀の歩みを続け、作中ではピエトロとナルシアが大人へと近づきました。
作品と時代を超え、成長する姿を見せてくれる作品は、人気シリーズでもなかなかありません。こうした発展を遂げられたのは、シリーズを愛するファンの存在があってこそ。そして愛するための原動力となったのが、ゲーム版の原点になったPSソフトソフト『ポポロクロイス物語』に他なりません。
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本作は、今もゲームアーカイブス版が配信されているので、PS3やPS Vita、PSPでのプレイが可能です(※PSPの場合は、PS3かPS Vitaのストアからダウンロードし、移動させてください)。また、全ての始まりとなった漫画「ポポロクロイス物語」は、電子書籍で発売中です。
原作漫画やゲームアーカイブス版に触れるもよし。当時の思い出を振り返るもよし。今も愛され続けるピエトロたちの冒険に、今改めて想いを馳せてみてはいかがでしょうか。