脱出ADVと弾幕STGを組み合わせる──そんな新作の発表が行われた当時、この移植の組み合わせに誰もが驚き、関心を寄せた作品があります。それは、PS5/PS4/スイッチ/PC(Steam)に向けてリリースされる『冤罪執行遊戯ユルキル』です。
しかも本作は、漫画「賭ケグルイ」の原作者・河本ほむら氏が原作を書き、その弟にあたる武野光氏(代表作:「小説賭ケグルイ悦」「小説賭ケグルイ戯」「へんなかんじ」など)がシナリオを執筆。
また、清原紘氏(『蒼き革命のヴァルキュリア』キャラクターデザイン)がキャラクターデザインを、『モンスターハンター』シリーズの作曲で知られる小見山優子氏がBGMを手がけ、シューティングパート開発はSTGファンなら誰もが耳にするグレフが担当するなど、錚々たるクリエイターが結集する一作です。
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これだけのメンバーや開発陣がどんな作品を送り出すのか、気になる方も多いはず。そこで今回は、TGS2021に出展された試遊プレイを通して、本作の魅力や特徴へと迫ります。
実は本作は、2019年の東京ゲームショウでいち早く試遊出展が行われました。この時は、脱出ADVと弾幕STGを組み合わせた「メインモード」の一部を提供。体験としてはSTGが中心でしたが、その最中にADV形式の会話が挿入され、単なるSTGではない要素を垣間見せてくれました。
ちなみに製品版では、STGパート内で発生するやり取りを通して、難易度が変化します(脱出ADVで情報や証拠をしっかり集めておくと、敵の攻撃が控えめになる等)。調査の成果が反映されるとなれば、ADVパートのプレイも更に力が入りそうです。
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そんな2年前の体験と比べて、今回の試遊はどんな風に変化したのか。その点についてまず訊ねてみると、前回はいわゆる「メインモード」の一部がプレイできる形でしたが、今回はSTGパートだけ楽しめる「スコアアタックモード」の試遊出展。そのためプレイ中にキャラクター同士の会話は発生せず、STGだけに専念できます。
スコアアタックモードは、以前の試遊で話だけ聞いていた“通しプレイ”が可能なモードのことで、メインモードでストーリーを進めることで通しプレイの範囲が広がっていきます。ちなみにメインモードは、脱出パート+STGパートで構成されており、この構成からなる1章のプレイ時間は約2時間ほど。そして全クリアまでは、約20時間ほどになる見通しと教えていただきました。
また、製品版のスコアアタックモードはオンラインランキングに対応しており、全国のプレイヤーとその腕前を競えます。難易度も選択可能で、「EASY」「NORMAL」「HELL」の3種類が選べます。ちなみに、オンラインランキングは各難易度別に分かれているので、好みの難易度で挑むのも吉です。加えて、STGモードは通しプレイだけでなく、1ステージ単位でのプレイも可能なので、苦手なステージをやり込む練習もできます。
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そしてもうひとつ、今回の試遊で目を引いたのは、使用機体の選択。2019年の試遊は本編の一部だったので機体選択はありませんでしたが、今回はスコアアタックモードなので、好きな機体(パイロットと紐付け)が選択可能。
初心者向けの「春秋千石」、360度全方位にショットが撃てる「山田風太」、広範囲に攻撃できる「御室玄徳」、パワータイプの「一凛花華」が選べました。ステージと同様、機体もストーリーの進行に合わせて解放される模様です。
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2年ぶりとなるプレイに臨むと、まずは青空が目に眩しい出撃シーンで出迎え。「春秋千石」の機体と、久しぶりに対面します。使用するボタンはシンプルなので、混乱することなくプレイに没頭できる点は前回と変わりません。ちなみに今回は、PS4版での試遊となります。
本作の攻撃(メインショット)はひとつですが、○ボタンで連射、×ボタンで「ホールドショット」に変化。×ボタン押しっぱなしで出すホールドショットは、オプションのフォーメーションが変わったり固定されたりと、特殊な効果が発生。今回プレイした千石の場合は、火力を集中させることができました。
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また、ホールドショット時は移動速度が落ちるため、細かく避けたい場合にも向いています。逆に、速い弾が飛んでくる場合はホールドショットをやめて、素早い回避がお勧めです。
ちなみにメインショットは、パワーアップを取るとレベルアップし、オプションも追加。機体によってメインショットとオプションの役割は異なります
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敵を倒したりショットを当てると「マテリアル」が出るので、これを回収すると「アウトバーストゲージ」が溜まります。このゲージが20%を超えると「アウトバーストボム」(L1ボタン)や「アウトバーストショット」(R1ボタン)が使用可能。
「アウトバースト」は使うといずれもゲージを消費しますし、その能力は機体ごとに違いますが、「アウトバーストショット」着弾後の爆風が敵にダメージを与えると共に、敵の弾を打ち消すといった共通する性能を持ちます。
ちなみに「アウトバーストショット」で敵を倒したり弾を消すとコンボになり、倒した敵にボーナスがかかります。ハイスコア狙いには欠かせないテクニックと言えます。
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「アウトバーストボム」は、ゲージが20%以上の時に発射すると、自機の周囲に爆風が発生し、ゲージを使い切るまで無敵に。また、同じく20以上の時に敵や弾に接触すると自動的に「オートボム」が発動。自機を守ってくれるので、ミス(残機減少)になりません。ただし「オートボム」は、EASYまたはNORMALのみ。
そしてゲージが100%の時に「アウトバーストボム」を発射すると「EXボム」に変化し、破壊力が激増。その力強い威力で敵を殲滅します。
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ここまでの説明で分かる通り、操作そのものは直感的でシンプル。また、「オートボム」が保険として役立ってくれるので、いざという時でも安心です。
ですが、本作のSTGパートが簡単かと言えば、その答えははっきり「NO」と言えます。雑魚は多少のショットだけで倒せる爽快感がありながら、位置取りを意識しないと討ち漏らしもあり、スコア獲得を狙うにはしっかりとした立ち回りが求められます。
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また、耐久力の高い敵は火力を集中させないと、こちらも仕留めきれない場合が。かといってホールドショットばかり使うと、足の遅さゆえの討ち漏らしや、咄嗟の回避が間に合わず撃沈、といった悲劇にも襲われます。典型的なSTGあるあるですが、こうした基本がちゃんと踏襲されている証と言えるでしょう。
今回のボス戦も、2019年の試遊と同じく「莇リナ」が搭乗する「アザミナゴロシ」。千石への憎悪が形になったような苛烈な攻撃にたびたび追い込まれ、連続して残機を減らされたことも。
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ボスはゲージ制なので一度削りきればひと息つけますが、出来るだけ早く削りたくて火力を集中させすぎると、狙いすましたかのように速め弾が飛び出し、あえなく撃沈。ここでも、お約束のようなプレイで苦汁をなめさせられます。
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最終盤では、画面を埋め尽くすような弾を乱発。しかもこの弾は、画像だけでは分かりにくいと思いますが、ただ真っ直ぐ飛んでくるだけでなく、画面下辺りを頂点にして緩やかなカーブを描くものもあり、複数の軌道を見極めて回避しなければなりません。
弾の速度自体は緩やかななので、決して理不尽ではありません。が、回避に専念すれば攻撃が疎かになって有効打を与えられず、この攻撃を受ける時間が更に伸びる悪循環へと陥ります。
これは筆者の腕前が大したことないせいでもありますが、「避けられる、でも手一杯!」というギリギリを狙ってくる設計は見事の一言。高まる緊張感と、乗り越えた時の達成感のバランスが秀逸で、思わず手に汗握るプレイ体験となりました。
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今回味わえたのは、『冤罪執行遊戯ユルキル』のほんの一部。その全てを楽しめるのは、2022年春まで待たなければなりません。──しかし、本作の無料体験版を配信する予定があるので、興味を持った方はまずそちらのプレイを一考してみてはいかがでしょうか。意外な出会いが、そこに待っているかもしれません。