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千葉県松戸市のご当地VTuber・戸定梨香さんの出演する動画が、全国フェミニスト議員連盟の抗議によって削除された騒動。現在ネット上では戸定さんを応援する署名運動が盛り上がっており、10月28日には都内で関係者による会見も行われました。一体この騒動は何が争点になっているのでしょうか。
戸定さんは今年7月、松戸警察や松戸東警察と協力した啓発運動の一環として、交通安全PRの動画に出演。騒動のきっかけとなったのは、この動画に寄せられたフェミ議連による抗議でした。抗議内容は、「女児を性的な対象として描いており、女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長」しているというもの。戸定さんの服装に露出が多いとして、「女児を性的な対象として描くキャラクターを採用することは、性犯罪誘発の懸念すら感じさせるもの」といった主張を繰り広げていました。
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フェミ議連による抗議の後、該当のPRは中止されることに。しかしそれを問題視する人々の間では、戸定さんを擁護する声が上がり始めました。9月10日には「change.org」にて、「全国フェミニスト議員連盟宛抗議と公開質問状」と題した署名運動がスタート。現在7万人以上の賛同が集まっています。
そんな中、10月28日に戸定さんが所属する『VASE』の運営会社「Art Stone Entertainment」代表の板倉節子氏と、大田区議会議員の荻野稔氏が都内で会見を行いました。会見の中で、板倉氏はVTuberについて「本人がなりたいキャラクター」を再現したものと定義。「戸定梨香がなりたい姿をVTuberとして表現しただけですので、私たちが『性的なもの』として作った覚えはありません」と語り、“性的なもの”というレッテルを否定しました。
VTuberに“なる”ことの権利をめぐって
フェミ議連のスタンスをまとめると、「戸定梨香」のデザインは女児を性的対象物として描いたもので、公共機関によるPRにはふさわしくないという趣旨でした。戸定さんは会見の中で、そうした指摘を“決めつけ”として批判しています。
さらに板倉氏の発言が示しているのは、VTuberという存在の特殊性です。アニメや漫画などのキャラクターは誰かが制作したものであり、その時点で完結した存在。それに対してVTuberは誰かが“なる”ことを前提とした存在であり、いわば自己表現の一種だと考えられます。フランスの女性哲学者・ボーヴォワールの言葉にならえば、「人はVTuberに生まれるのではなく、VTuberに“なる”」と言うべきでしょうか。
以上のように、今回の騒動では「性的対象」の議論とは別に、「自己表現としてのVTuber」をめぐる議論が同時進行しているように見えます。VTuberが自己表現だとすれば、その自由を奪うことの是非があらためて問われるでしょう。
ふたたび広がり始めた活躍の場
戸定さんは現在も精力的にVTuberとして活動しており、SNS上では「松戸市のPR活動、私は応援していきたいです」「ご当地vtuber、負けずに頑張ってほしい」「再起用あるといいな!」といった応援の声が相次いでいます。
その一方、戸定さんの活動を支援する動きも盛り上がっている模様。今後はクラウドファンディングによって資金を募り、松戸市内のバスでラッピング広告を行う案があるほか、松戸市の電気自動車ショップが店頭で戸定さんの動画を放映する案も話題を呼んでいました。
さらに千葉県警交通課は、メディアの取材に対して戸定さんを再起用する可能性を示唆しています。フェミ議連はこうした動きに対して、どのように応答するのでしょうか。今後の進展にも注目が集まります。