■シリーズファンは進化に驚き、新規ユーザーも触れやすかった『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』

本シリーズは、『リンクのボウガントレーニング』などの特殊な作品を除けば、基本的にアクション要素の大きい作品ばかり。ですが、1作目の『ゼルダの伝説』は見下ろし型、そして2作目の『リンクの冒険』はフィールド移動が見下ろし型で、戦闘を横スクロールのアクションで表現したものでした。
そして3作目に当たる本作は、前作ではなく1作目のスタイルを踏襲し、そこから正当進化を果たします。基本的な方向性は受け継ぐ一方で、グラフィックはもちろん様々な要素がパワーアップし、シリーズファンだけでなく新規ユーザーも獲得。その名を更に広める立役者ぶりを見せてくれます。

1作目のスクロールは画面単位でしたが、本作は通常のスクロールと画面切り替えを併用しており、これによって“広い世界を冒険している”という感覚が強まりました。
また、斜め移動も可能で、動きは全体的にスムーズ。ゲームを進めるとダッシュ移動もできるようになり、快適性の面でも進化を遂げています。

冒頭のギミックでも分かる通り、アイテムを駆使した探索は本作でも健在。むしろ、新たなアイテムを手に入れることで世界が広がっていく展開は更に洗練され、冒険の醍醐味を力強く演出します。
例えば、「パワーグラブ」を手に入れれば岩を持ち上げることができ、塞がれていた道の先に進めますし、「ゾーラの水かき」で自由自在に泳ぎ、これまで溺れていたところも渡れるようになります。

このほかにも、戦闘でも役立つ「爆弾」や「フックショット」などは、新展開にも繋がる重要なアイテム。魔法が使える「ファイアロッド」や「アイスロッド」、詰めるものを選べる「空きビン」など、多彩なアイテムがリンクの冒険を支えます。
表と裏の世界を行き来する壮大な冒険は、進化しつつも暖かみのあるグラフィックや、今も耳に残る素晴らしいBGMなどに彩られ、多くのファンを生む名作となりました。

そうした功績は、もちろんゲーム自体が優れているという大前提がありますが、遊びやすい環境もまた要因のひとつでした。
シリーズの前2作品は「ファミコン」というハードだけでなく、拡張機器の「ディスクシステム」もなければ遊べません。1作目は、ファミコンのカートリッジソフトとしてもリリースされましたが、それはかなり後の話。前2作も大ヒット作ですが、遊ぶまでのハードルがやや高い点は否めません。

ですが、この『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』を遊ぶ上で必要な機器は、スーパーファミコンだけ。人気ハードのため、スーパーファミコンの入手時期は人によって差はありましたが、新しい『ゼルダの伝説』はシリーズ未経験者でも手が届きやすく、そして驚きと面白さに満ちた内容でプレイヤーを魅了。そのままシリーズ全体のファンになった方も数多くいました。

本作からちょうど7年後の、1998年11月21日に発売された『ゼルダの伝説 時のオカリナ』で、本シリーズに3Dアクションが加わりますが、全てがそちらに偏るわけではなく、見下ろし型の2Dアクションも継続。2Dと3Dの両面で支えるアクションシリーズとして、今も多くの方々に愛されています。
本シリーズにおける2Dアクションの歴史は、1作目が最初の1歩を刻みました。そして、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』が受け継ぎ、正統進化を果たしたことで、確固たる基盤を築き上げたと言えるでしょう。

シリーズの方向性に影響を与え、新規ユーザーの獲得も果たした『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』。その偉大な名作を、この記念日に振り返ってみるのも一興でしょう。また、プレイ意欲が湧いた方は、ぜひ直接プレイしてみてください。
本作は、「スーパーファミコン Nintendo Switch Online」で手軽に楽しめますし、Wii UやNewニンテンドー3DSを持っていれば、バーチャルコンソール版でも遊べます。また、「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」にも収録。今でも様々なアクセス手段があるのは、多くの方に愛された証左に違いありません。
※記事公開時、発売日に関する表記に大きな間違いがありました。『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』が発売されたのは、スーパーファミコン発売から1年後の1991年11月21日です。訂正してお詫び申し上げます。