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先日自身のファーストアルバム『Origin』を11月7日にリリースし、8月には新たな3Dボディをお披露目するなど、男性バーチャルタレントのなかでも印象深い活躍が続く天開司さん。
今でこそ多くなった男性バーチャルタレントですが、2018年始めの時期は全体人数は少ないながらも、まだまだ女性バーチャルタレントのほうが人数が多く、人気も大きく偏っていたところでした。
彼は「バーチャル債務者」という自らの肩書通り、自身を窮地に追い込み、そこから奮起してゲームクリアを目指すいわゆる「耐久配信」をしていくようになります。
『バイオハザード』シリーズの1から4を連日に渡ってプレイしクリアしないと配信を終えることができない「24時間バイオハザードマラソン」に始まり、「敵にダメージを与える魔術・呪術・奇跡の使用禁止」などプレイングに縛りルールを設けた「天開司のオワタ\(^o^)/式ダークソウル」などを配信。
もっとも過酷だったのはFPSゲーム『PUBG』をつかった「Vtuberはドン勝だけで生きていけるか?」という企画。文字通りドン勝(1位勝利)できなければ一切の食事ができないという苦行企画であり、スタート時から最低限の水や笛ラムネ以外を取ることなくプレイすることことになり、結果として約46時間ものあいだ食事を取ることがままならず、最後には涙を流しながら食事をとる天開さんを多くの視聴者が見守って配信を終えます。
他にも『ロックマン』シリーズに『ポケットモンスター』シリーズ、『Fall Guys: Ultimate Knockout』や『ウマ娘プリティーダービー』を数多くプレイしています。
数多くのストリーマーらと比較するとゲームスキルやセンスが素晴らしいとは言いづらいものの、3年もの間で数多くのゲームをプレイしている経験値が高く、初見の作品でもゲーム性をすぐさま理解してプレイしているのが分かります。現在使用されている2Dフェイスでは、怒りや悲しみにいくつもの差分があり、特に絶望したときの表情が非常に豊か。ピンチとなると荒っぽい口調がさらに荒っぽくなる瞬間も多々あり、多くの生配信で笑えるシーンを放送してきました。
いわゆる体を張ったバラエティ番組っぽさやオマージュとブラックユーモアに溢れた深夜番組のテンションを封じ込め、ネットカルチャーらしさ溢れるアングラな企画配信を提供し続けるようになります。女性バーチャルタレントを応援している男性のファン、彼らを含めた「男に刺さる配信」を届けていこうと試みたのが彼だったともいえます。
2019年2月末から専業VTuberとして活動をスタートし、5月10日に始動したにじさんじネットワークに参加。当時のいちから株式会社からマネタイズサポート、企業案件の紹介、いちからが所有するスタジオの提供などのサポートを受けながら活動していくことになりました。
そういったサポートを受けた彼とゲームでもっとも語るべきといえば、麻雀と野球でしょう。特に『雀魂』と『実況パワフルプロ野球』に絡んだ配信で注目を集めていくことになります。
デビュー当初から「天開司の神域麻雀」を配信するなど麻雀好きとしてプレイ配信をしていた彼ですが、『雀魂』が公式リリースされた2019年4月25日には公認プレイヤーに就任。当メディア・インサイドでもYostar全面協力のもと開催したVTuber大型トーナメントイベント「白上フブキ杯」にも実況で参加。
2020年からはレギュラー番組が開始し、公式大会「雀魂バーチャルインターハイ」に盟友である歌衣メイカとコーサカ(MonsterZ MATE)らとともに漢気塾高校麻雀部として出場、見事優勝を果たし、感極まった漢泣きは視聴者の心を捉えました。現在では「バーチャルタレント×麻雀といえば天開司」と結びつく視聴者も非常に多いところでしょう。
にじさんじとの繋がりが色濃くなったことも好転のきっかけとなりました。2019年に椎名唯華と舞元啓介のにじさんじ所属の2人に加え、歌衣メイカ、ホロライブの大空スバルが参加した企画『Vtuber甲子園』は、人気野球ゲーム『パワフルプロ野球』を使った育成×対決であり、夏に開催された「REALITY FESTIVAL Vol.3」でも生中継されました。翌年以降は舞元啓介へと企画・運営が引き継がれ、『にじさんじ甲子園』として夏のストリーミングシーンを盛り上げる一大企画になりました。
このほかにも「ポケットモンスター剣盾にじさんじ杯」「ウマ娘ルームマッチ企画」「VTuber学力テスト」など様々な企画配信を実現させていきます。大型企画をプランニングして実行できる運営力、当日イベントでは司会をこなすなど司会力、なにより多くの人を活かせるトーク力など、秘めていた才覚を遺憾なく発揮し始めていくことになります。インサイドちゃんMark2さんが『VRadio~インサイドちゃんの番組~#1』の告知したとき、「司会系Vtuber」という単語を出したところに「オレ抜きでNo.1争いするなよな」と反応するなど、当時の自信・自負心の強さが伺えます。
こういった大型企画だけでなく、舞元啓介、ジョー・力一、コーサカ、ベルモンド・バンデラス、環右金といった男性陣が集まって酒飲み雑談をしていく不定期企画「おっさんV居酒屋」や、テーマとして挙げられる漫画やトピックにまつわるVTuberが集って思う存分トークをする不定期企画「BANトーク」といったトーク企画を数多く主催または参加していくことにより、企業・個人と関わりなく非常に多くの人脈を築くことになります。
その結果、最初期には男性陣を中心にしたコラボが多かったですが、にじさんじの女性ライバーらや因幡はねる・朝ノ瑠璃といった女性バーチャルタレント陣との交流が深まり、「男性×女性」のコラボ企画が活発化していくことになりました。
先に述べたように、2018年初頭のバーチャルタレント・シーンは女性バーチャルタレントが影響力を持っていた時期、そのなかで男女同士がコラボ配信しようとすると「ご法度」なムードが先立つ時勢でもありました。そのタフな状況を耐え、男性バーチャルタレントが活動できる内容・領域を拡張していったとも言えます。2019年12月27日に彼はにじさんじネットワークを脱退することになりますが、彼が得たものは非常に大きく、翌年以降のVTuberシーンの活況のなかでも中心に居続けてることになります。
その後も個人としての配信と大小さまざまな企画・大会に参加するなか、活動初期から熱く語っていた音楽へと本格的に手をつけることになります。バーチャルシンガー花譜のライブを観たのをきっかけに、学生の頃に抱いていた音楽への情熱が復活し、2019年11月6日に初のリアルソロライブ『天開司の絢爛harevutai』を開催するなど、音楽イベントにも参加するようになっていきました。
オリジナル曲の制作を経て、2020年12月26には音楽制作会社ZAZAとタッグを組んでクラウドファンディングを実施、目標金額を大きく上回る3,437万4,200円の出資を集め、2021年11月4日に正式リリースしました。
先日犬山たまきさんが企画した配信『【#AllGuys座談会】男性個人勢の最強チーム襲来!!【犬山たまき/ガッチマンV/兎鞠まり/天開司/歌衣メイカ】』に出演した際には、リスナーからの質問に小ボケを挟みつつ、正直な話を語っていました。企業所属のバーチャルタレントが数多くいるなか、個人として/企業所属として活動してきた天開さんに加え、様々な出自をもった個人勢4人による配信は非常に見ごたえがあります。
「スラムダンク」を一番に愛するマンガ好きであり、野球はもとよりスポーツは全般が好きで、アングラかつアウトなネタも大好き。競馬やボートレースなどのギャンブル配信で費やした金額が100万円を超えるなど、一つずつ取り上げて言及していきたいほどにネタに溢れており、どこまでいっても男らしく、どこかダメ人間らしい。そんな人間味にあふれているのが天開司さんの魅力ではないでしょうか。
インターネットの片隅・アングラなシーンから旅立ち、強い意志と人間味に溢れたトークや企画配信を催しつづけ、「VTuberシーンを盛り上げていく。バーチャルなマルチタレントになっていく」というかつて語っていた理想像を追いかけてきましたが、いつの日かシーンの顔として「天開司のように」と言われる日も近いかもしれません。
※11月27日(土)22時50分 UPDATE:読者様のご指摘・ご意見を踏まえまして、編集部でも協議のうえ一部記事内容を調整いたしました。お詫び申し上げます。