では、主人公たちは一生羽生蛇村の中に閉じ込められたままなのでしょうか。実は、『SIREN』には2種類のエンディングが存在します。そのどちらにも共通しているのが、「主人公である須田恭也が、異界で複数の屍人と戦う」という描写がある点。
前述の「一人の村民による全住民の大虐殺」という噂は、この須田恭也が複数の屍人と戦う姿が元になっているのではないか、という説があるのです。羽生蛇村は異界を通じて27年前の羽生蛇村とも繋がっているため、時間的・因果的な問題もありません。
つまり、『SIREN』におけるエンディングとは、「須田恭也が異界で複数の屍人と戦う」ことによって「一人の村民による全住民の大虐殺」という噂が発生し、須田恭也が村に来ることになる世界線へ到達すること。そう考えると、確かにループが成立していますね。須田恭也が屍人に殺されてしまったり、他の登場人物の行動に影響され「異界で複数の屍人と戦う」ことがなかった場合、噂も発生せず須田恭也が羽生蛇村に現れないことになります。
「ループもの」では、主人公が望んだ世界線、ハッピーエンドの世界線を目指す作品が多いもの。しかし『SIREN』においては、物語の最初に須田恭也が羽生蛇村に来村した時点で「主人公である須田恭也が、異界で複数の屍人と戦う」世界線が正しいことが確定しており、プレイヤーはその正しい世界線を目指してループを繰り返す、という構造になっているわけです。
異界で屍人と戦い続けるというエンディングは、須田恭也にとって決してハッピーエンドではありません。何か救いがあってほしい…というプレイヤーも多いはずですが、まさかその可能性が物語開始時点で絶たれているとは…。『SIREN』の発売時のキャッチコピーは「どうあがいても、絶望。」というもの。このコピーに相応しい、正に絶望的なループ構造と言えるでしょう。
残念ながら『SIREN』はPS2とPS3でのみプレイ可能。いつか最新機でリメイクされたら、ぜひプレイしてみて下さい!