8月8日、SNKから2D対戦型格闘ゲーム『餓狼伝説』シリーズ最新作の開発決定が発表されました。『餓狼MARK OF THE WOLVES』(1999年)以来となる待望のシリーズ最新作のティザービジュアルおよび、発表トレイラーも公開。「ロック・ハワード」をセンターに、「ビリー・カーン」や「カイン・R・ハインライン」らしきシルエットが登場しています。
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しかし、『餓狼伝説』シリーズと聞いて思い浮かぶ主人公の姿は「テリー・ボガード」という方が多いのではないでしょうか?センターに陣取っている「ロック・ハワード」とは何者なのか、本稿では20年の歳月を埋めるために紹介します。
◆『餓狼伝説』はテリー・ボガードVSギース・ハワードから始まった
『餓狼伝説』は、1991年にSNK(旧社)から発売された、90年代の格闘ゲームブームを牽引してきた“SNK対戦格闘ゲームの原点”とも言うべきシリーズ。
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アメリカ東海岸に存在するとされる架空都市・サウスタウンを舞台に、サウスタウンの支配者ギース・ハワードに義父を殺されたテリーとアンディのボガード兄弟が、それぞれに厳しい格闘技の修行を積んで、復讐のためにサウスタウンに帰って来た所から物語の幕が上がります。
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『餓狼伝説』シリーズは、『餓狼伝説2』(1992年12月)、そして『餓狼伝説3』(1995年3月)にてストーリーに一区切りがつき、以後は『REAL BOUT餓狼伝説』(1995年12月)を皮切りに、歴代キャラが多く登場するオールスターバトル要素が強いRBシリーズが続きました。
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ギース・ハワードはシリーズのラスボスの中でも一際人気が高く、RBシリーズでも何度となくラスボスとして登場したり、プレイしたりすることができました。
また、1994年に発売されて現代まで続く人気シリーズにして、“SNK対戦格闘ゲームの集大成”とも呼べる『ザ・キング・オブ・ファイターズ』は、元々はギースが主催する最強武闘会「キング・オブ・ファイターズ」から派生したものでした。
『餓狼伝説』シリーズで最も多くラスボスを務め、後の『ザ・キング・オブ・ファイターズ』誕生の伏線も張ったといえるギース・ハワード。
ロック・ハワードはそんなギース・ハワードの忘れ形見です。
◆ギースの実子で宿敵のテリーに育てられた「ロック・ハワード」が新主人公
『餓狼伝説3』(1995年3月)以降、ストーリーとしては進展がなかったのに、およそ10年後という急展開。しかも、テリーのトレードマークだった赤い帽子、袖が破れた赤い革ジャンが捨て去られ、帽子無しのまさかの袖あり茶色ダウンジャケットを着た姿・・・老けている!
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そして、予告無しの主人公交代かと思えば、ギースの息子!?そんな情報量が多過ぎた新シリーズ『餓狼MARK OF THE WOLVES』(1999年11月)が世に出たわけです。
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10年ぶりに開催される「キングオブファイターズ」で、母親の真実を知るためにテリー・ボガードに鍛えられたロック・ハワードが参戦するという幕開けでした。
テリー・ボガードがどちらかと言えば熱血系に対し、ロック・ハワードはクールで1999年という時代のトレンドに則ったタイプの主人公。ただ、プレイヤーのハートを掴んだのが、烈風拳やレイジングストームなどギースの必殺技を受け継ぎながらも、ライジングタックルやシャインナックルといったテリーの技の要素も持ち合わせていることです。「ああ、本当にテリーに育てられたんだな」と筆者も感慨深い気持ちでした。
◆『餓狼MARK OF THE WOLVES』はあくまでも序章
前述した通り、『餓狼伝説3』以降は続編が出ても新キャラクターがほとんどいなく、若干マンネリ化していたと思います。しかし、『餓狼MARK OF THE WOLVES』では、それまで硬派なテイストだったキャラクターデザインをアニメ調へと変更。ストーリーに合わせて世代交代が行われ、テコンドー使いキム・カッファンの長男のキム・ドンファンや次男のキム・ジェイフンが登場するなどキャラクターも一新。継続出演しているのが旧主人公テリーのみでした。
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そして、『餓狼伝説』シリーズの女性キャラといえば、セクシーなくの一・不知火舞やスポーティーなブルー・マリーなどが定番でしたが、双葉ほたるという清純派タイプという今までになかったタイプが登場し、アニメ調デザインの持ち味を十分に活かしています。
また、バトルシステムも大幅なテコ入れが実施。『餓狼伝説』の特徴だった2Dのフィールドに奥行きを持たせる「ライン」が撤廃され、キャラクターの必殺技は基本的なコマンド、超必殺技が真空コマンドで構成されたことで格ゲー初心者にとってハードルが下がりました。
一方で、T.O.P.、JDF(ジャストディフェンス)、ブレーキング、ガードキャンセル・避け攻撃・フェイント動作など、玄人にとっても戦略の幅が広く、駆け引きを楽しめるのが魅力。キャラクターのパワーバランスも良くて、まさに新たな息吹を感じさせる名作でした。
◆新作への期待と不安
しかし、ご存知の方も多いでしょうが、SNK(旧社)は経営破綻し、2001年に知的財産権が「株式会社プレイモア(※)」へ移動した結果、続編開発が止まってしまいました。
※2003年に「SNKプレイモア」へ社名変更、2016年に旧社と同じ「SNK」(新社)に再度の社名変更。
だからこそ、ファンにとっても20年以上の年月が経った今になってどうして続編制作が決定したのか、当時のスタッフはどれだけ参加するのか、果たして名作を超えられるのか、ともすれば20年前ということで世界観や時代設定が現代と合わないのではという危惧があるかと思います。どのような体制でどのような内容のゲームになるのか、今後の動向に注目です。
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