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「こんや、12じ、だれかがしぬ」
そんな謎めいた予告状から始まる、雪山のペンションでの惨劇を描く『かまいたちの夜』。今回紹介する真理は、本作におけるヒロインです。主人公の透とは「友達以上・恋人未満」なガールフレンドで、物語は2人がスキーを楽しんでいる一幕から始まります。
若い方はピンと来ないかもしれませんが、本作が発売された1994年当時は、スキーは大変トレンディ(死語)なデートスポットでした。1987年公開の映画「私をスキーに連れてって」に端を発すると言われるスキーブームの影響がまだ続いていた…といえそうです。
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閑話休題。真理は作中でルックスもスタイルもよい女性だと描写されています。本作は以前にこのコーナーで紹介した『弟切草』に続くサウンドノベルシリーズで、ボイスがないのはもちろん、キャラクターもシルエットで表現されるのみですので、プレイヤーの1人1人が「親しい仲ではあるが、ちょっと高嶺の花でもある女性」を思い描いたことでしょう。
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本作の真理と『弟切草』の奈美の違いを挙げるなら、分かりやすいのは気の強さと腕っぷしでしょうか。本作はプレイヤーが殺人事件の真相を見抜けば、犠牲者を出すことのないハッピーエンドに持ち込めますが、透が真実に到達するルートを選ぶと追い詰められた真犯人に腕の骨を折られる大ケガを追ってしまいます。
しかし、肝心なところで適度に選択肢を間違えると、透の推理を引き継ぐかのように真理が真実に到達。今度は彼女が腕の骨を…ということはなく、真理は見事な一本背負いで真犯人をKOします。守られたい……。
真理を最大限に印象付けた伝説的なバッドエンド
そんな真理を最大限に印象付けたのが、大半のプレイヤーが初回プレイで到達してしまうであろう本作屈指のバッドエンド「彼女にストックで…」です。
大雪で電話線すら切れてしまい(※携帯電話の一般普及はほとんどしていない時代でした)、外界から隔絶されたペンションで始まった連続殺人を止められずにいると、透たちは見えない犯人の影におびえ、次第に疑心暗鬼になっていきます。
そんな極限状態で錯乱したOLの可奈子に襲われた透は、自らを守るため逆に彼女の命を奪ってしまいます。そして透もまた、それを目撃していた真理に「人殺し!」と責められ、スキーのストックで喉を刺されて絶命する……という衝撃的な結末でした。これで深夜のペンションに残るのは、真理と真犯人のみ。彼女の運命も推して知るべし、というところでしょう。
姿の見えぬ犯人を追うミステリーから惨劇のホラーへと自然にスライドしていく構成に多くのプレイヤーが打ちのめされ、そして彼女と幸せな結末を迎えるために再プレイに臨みました。真犯人を指摘する際はその人物の名前を入力しなければならないため、当てずっぽうではなかなかうまくいきません。考えに考えて真相にたどりつき、やっとのことで掴めた真理との幸せな未来に感極まった人も多いのではないでしょうか。
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最後に余談ですが、前述したように本作はキャラクターたちがどのようなルックスで、どのような声をしているのかを想像で補うのが魅力として機能しているゲームでした。
しかしながら、筆者はゲームにハマりすぎて同年(1994年)に発売されたCDドラマも購入したので、真理のセリフはそこで彼女を演じた声優・冬馬由美さんの声で脳内再生されるようになりました。
冬馬由美さんは、ゲームでは『ヴァルキリープロファイル』のレナス・ヴァルキュリア、『ロードス島戦記』のディードリット、『タクティクスオウガ(セガサターン版)』のカチュア役などで有名な方ですね。
みなさんの中では、真理はどのような声をしているでしょうか?
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
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