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ある特定の世代に、多大な影響を与えた電話サービス「テレホーダイ」。そんな同サービスが、2024年1月をもって終了します。むしろ、まだ残っていたのかと驚く方のほうが多いかもしれませんね。
つまり、2023年はテレホーダイの“ラストイヤー”と言えるでしょう。そこで今回は、インターネットとの距離がグッと身近になったテレホーダイの役割や、夢中になった「テレホタイム」について綴っていきます。当時を懐かしむ方はもちろん、「こんな時代があったんだ!」という驚く若い世代の方も、ぜひお付き合いください。
■テレホーダイとは
インターネットが始まったばかりの時代は、モデムを介して、プロバイダーの用意した電話番号(アクセスポイント)へ電話をかけるような形でネットに繋いでいました。そのような仕組みであったため、接続時間に比例して通話料はグングン上昇。現代のように24時間常時繋ぎっぱなしにすると、莫大な通話料が掛かってしまいます。
そこに颯爽と登場したのが、テレホーダイと呼ばれる定額制のサービスでした。その内容は、毎日夜23時から翌朝8時までの間、指定したアクセスポイントへの通話料が定額になるというもの。分かりやすくいうと、その時間帯であれば定額でネットが繋ぎ放題になるという、当時としては革命的なものです。
当然、テレホーダイが広がりを見せると、夜23時からインターネット全体の通信量が急増します。ユーザーにとってそれは夢の時間の幕開けであり、いつしかテレホタイムとも呼ばれました。あまりに楽しみすぎて、テレホタイム開始時点にアクセスが集中し、ネットに繋がらないこともしばしば。少量の料金が掛かるのは仕方ないと割り切って、23時直前から繋ぐ(通称、「フライング」)猛者もいました。
■ネットゲームに革新を与えた、テレホタイム
テレホーダイがない頃、ネットゲームは限られた人しか遊んでいませんでした。前述の通り、遊んだ時間だけ、通話料が発生してしまうからです。しかしテレホーダイが広がると、状況は一変。ユーザーはテレホタイムになると、「待ってました!」とばかりにネットに繋ぎ、大きな活況を見せました。
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その時代にパソコン以外で活躍したのが、セガが手掛けるゲーム機「ドリームキャスト」です。家庭用ゲーム機として、初めてネットワーク機能を標準搭載したドリームキャストは、テレホーダイとの相性も抜群。リアルタイムでコミュニケーションが図れる『あつまれぐるぐる温泉』や、家庭用オンラインゲームの先駆けである『ファンタシースターオンライン』といった名作が生まれたのも、ドリームキャストがあったからこそです。
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こういったオンラインタイトルでは、チャットが人気でした。チャットとは、メンバーがテキストのみでリアルタイムに会話を行うサービスの総称。現代で例えるなら、“スタンプ機能のないLINE”が近しいかもしれませんね。
チャットをスムーズに楽しむためには、素早く文字を打つ技術が必要です。ゲーム機のコントローラーは不向きであり、ストレスなくチャットするにはキーボードが必須でした。筆者は枕元にキーボードを置いて、会話を楽しんだものです。こういったチャットで、タイピングが早くなったというのは、自分だけではないでしょう。
当時はかけがえのない友達にも出会え、文通を楽しんでいたことを思い出します。残念ながら、現代まで繋がってはいないのですが…。これもまた、時代を感じさせますね。
■テレホタイムの“あるある”問題
現代であれば、無線でインターネットに接続する手法が一般的です。しかし当時は、家庭の固定電話に繋がっている電話線を、ネットに繋げるパソコンやゲーム機のモデムに直接繋ぐ必要がありました。それは非常に不便であり、筆者も固定電話のある部屋から、異様に長い電話線を引っ張ってプレイしていたものです。
また、友達とネットゲームで落ち合ったあとも、肝心のゲームをせずに、チャットでダラダラとコミュニケーションしていた時間のほうが多かった気もします。コミュニケーション手段が限られていたこの時代には、“繋がる”ということが楽しくて仕方なかったのでしょう。テレホタイムが終わる朝8時まで、“完走”することもしばしばでした。逆に寝落ちして8時を過ぎてしまうと、起きた時に電話代が大変なことになってる、なんてパターンもあったかもしれませんね。
「ゲーム廃人」という言葉に昼夜逆転生活のイメージがあるのも、テレホーダイの影響があるのではと思います。
■2024年1月にサービス終了を迎える、テレホーダイ
ネットユーザーに革命を起こしたテレホーダイ。しかし、その後は定額で24時間接続が可能になった「ADSL」の登場により、急速に衰退していきました。もう、テレホタイムに縛られることはありません。常時接続という言葉自体、それが当たり前過ぎて、死語になっているかもしれません。
「Wi-Fi」も普及し、ヒョロ長い電話線を引っ張りながら自宅をウロウロすることもなくなりました。
そんな中、テレホーダイが終了すると発表されたのは2022年1月のこと。かつてユーザーだった人々は、それがまだ続いていたことに驚きつつ、「一つの歴史が終わった」と感じたことでしょう。
■制限があるからこそ、輝いていた
現代は様々な技術の進化によって、いつでもオンラインゲームが遊べるようになりました。インターネットを取り巻く環境は大きく変化しましたが、しかしそれでも、昔の方が不便で不幸せだったとは筆者は思いません。限られた中で試行錯誤をしながら、楽しさを見出していく。そんな時代を経験したからこそ、今の当たり前が特別に思える。こんな幸せもあっていいのではないかと思うのです。
以上、テレホタイムの真っ只中を過ごしてきた、いい年齢をしたオヤジの独り言をお送りしました。テレホ生活によって、確実に10年は寿命がすり減ったのではないかと思いつつ、今日も生きています。今回の記事で「あったあった、そんなこと!」と思って頂けるのであれば、勝手に友達だと思ってしまう筆者でありました。
今後、光を超える革命的な通信手段が、そう短い期間で普及する可能性は低いでしょう。そう考えると、高度経済成長期を経験していない自分でも、「通信」という分野では成長期を全力で駆け抜けられたので、ラッキー!…だったのかもしれません。
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