イルミネーション製作のアニメーション映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の公開が4月28日(北米は4月7日)に迫っています。「マリオ」といえば基本的にビデオゲームで展開されているシリーズであり、映像作品が出ることは最近では珍しいと言えます。現在まで複数の予告編が公開されており、オリジナル設定を感じさせる部分もありつつ、概ねゲーム通りの雰囲気を感じます。
しかし、遡ること30年前の1993年、「マリオ」の名を冠した1本の映画が公開されました。そのタイトルは、「スーパーマリオ 魔界帝国の女神(原題:Super Mario Bros.)」。スーパーファミコンの『スーパーマリオコレクション』が発売された年に公開された作品です。本稿では、新作映画の公開を前に本作の内容を改めて振り返ります。
クッパが普通の人間!?トンデモ設定に驚き
本作の物語は、恐竜時代に落ちた隕石の衝撃によってもう1つの次元が生まれてしまったというイントロから始まります。次に、女性が抱えている卵を強化に置き去りする場面に移ります。卵を置いた女性が暗い地下道のようなところを走っていると大柄な男性が現れ、女性が「クッパ!」と叫びます。その後逃げた女性が教会に卵を置いて去ってしまい、その卵をシスターたちが拾います。すると、卵の中から人間の女の子が生まれる……という場面でイントロが終了します。
ここでわかるように、本作でのクッパはなんと人型。演じている俳優はデニス・ホッパーです。
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場面は変わり、ついにマリオとルイージが登場します。この世界でのマリオたちは、初期ゲーム作品のように配管工の仕事を行っています。ボブ・ホスキンス演じるマリオは頭髪が薄く中年のような見た目になっているのに対し、ジョン・レグイザモ演じるルイージはゲームと違って髭がなく、20代後半くらいの見た目になっています。
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この映画でのマリオの本名はマリオ・マリオで、ルイージはルイージ・マリオ。この名前はよく「マリオの本名」として紹介されることがありますが、宮本茂氏が冗談で言っていたり、この映画が発端だったりという説があります。いずれにせよ、現在のゲーム版には残っていない設定となります。
修理の仕事に向かう途中で、ルイージは化石発掘を進めるデイジー(サマンサ・マシス)と出会い、一目惚れします。ルイージが口下手であるためうまく食事に誘えませんでしたが、マリオが助け舟を出してディナーを楽しむことになります。
ディナーの場で、デイジーが孤児であることがわかったところで、実はなんとルイージも養子で、マリオに育てられたという驚きの設定が判明。ゲームの設定とはかなり異なることがわかります。
ディナーを終えてデイジーとともに帰り道につくと、デイジーは2人の男によってどこかに連れ去られてしまいます。
デイジーを追ったマリオとルイージたちは、恐竜時代の隕石で生まれたもう1つの次元でした。その世界はサイバーパンクのような街並みで治安も悪い、クッパがトップとして独裁を敷いている場所だったのです。
決して“クソ映画”ではない!マリオファンであればあるほど楽しめるかも
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あらすじを見るだけでもかなり原作ゲームとは異なる設定が目立つ本作ですが、だからといってつまらない映画というわけではありません。ディストピアやサイバーパンクを思わせるクッパの世界は非常に新鮮ですし、クスっとくるコミカルな場面も散りばめられています。人間を退化させてしまうマシーンや映画オリジナルキャラの暗躍など衝撃的なシーンも多く、常に観る人を惹きつけてくれます。
その上、劇中で登場した要素や伏線はほとんどをしっかり回収してくれるためスッキリした気持ちで鑑賞できますし、マリオ&ルイージの絆のみならずデイジーをさらった男2人組たちのおバカな掛け合いなどキャラクターも非常に魅力的で、娯楽映画として愛せる仕上がりになっていると感じます。
また筆者は、マリオファンであればあるほど楽しめる映画であるとも思っています。クッパ世界には「Thwomp(ゲームならドッスン)」「Bullet Bill(キラー)」といった雑魚キャラの名前が入った看板がいくつか見られますし、デイジーをさらった2人組の男は「イギー」と「スパイク(ゲームならガボン)」という名前です。
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他にもトード(キノピオ)やグンバ(クリボー)、ヨッシーやビッグ・バーサ(巨大プクプク、もしくはデカプクプク)などゲームファンにはおなじみのキャラが姿を変えて登場します。そのため、「このキャラをこんな解釈するのか!」という驚きをもって楽しめるでしょう。
とはいえ、ちょっと内気なルイージと頼りになるお兄さんのマリオなどゲームに通ずる描写もあるため、完全に原作無視というわけではないものも愛せる点ではないでしょうか。
「クソ映画」というような烙印を押されることも多い本作ですが、筆者は決してそんなことはないと思っています。笑えるシーンや胸が熱くなるシーン、マリオファンならではの驚きがあるシーンなど全体的に満足度の高い作品でした。
新作映画前に予習(?)しよう!2023年の今観る方法
30年前に公開された本作ですが、2023年の今観るにはTCエンタテインメントより発売されているBlu-ray版が一番良いでしょう。一時期Netflixでも配信していたようですが、吹き替えは収録されていなかった模様です。
Blu-ray版は日本語字幕に加え、ソフト版および金曜ロードショー版(TV版)の2種類の吹き替えが収録されています。ただし、TV版は一部吹き替え音声が存在しないため、字幕と吹き替えが交互に変わるような仕様になっています。そのため1周目はソフト版で観るのがおすすめです。
さらに特典映像として2014年に制作されたドキュメンタリーやメイキング映像など特典映像もたっぷり収録されており、非常に満足できるパッケージになっています。Amazonでは3,646円(記事執筆時点)と非常に安く入手できるため、気になった方は是非購入してみてはいかがでしょうか。