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2023年1月15日から舞台「ウマ娘 プリティーダービー」~Sprinters' Story~が品川プリンスホテル ステラボールにて公演スタートしました。
舞台「ウマ娘 プリティーダービー」~Sprinters' Story~ではスプリンター (短距離) 路線で活躍した競走馬をモデルとしたウマ娘たちが登場し、ダイタクヘリオス (演:山根綺さん)、ヤマニンゼファー (演:今泉りおなさん)、ダイイチルビー (演:礒部花凜さん) 、ケイエスミラクル (演:佐藤日向さん)が出走します。
インサイドでは1月13日に公演されたメディア向けのゲネプロ(最終リハーサル)に参加、物語のはじまりから最後まで観劇させてもらいました。
◆ゲーム・映像などで伺えた関係性・想いがハッキリと表現
物語のはじまりはダイイチルビーの視点から始まります。
「華麗なる一族」の1人として家名に相応しき結果を出そうとするダイイチルビーが、とあるレースに出走して快勝を果たしたところ、そのレースをみていたダイタクヘリオスがダイイチルビーに強い関心を抱くところから物語は始まります。
ダイタクヘリオス、ヤマニンゼファー、ケイエスミラクル、ダイイチルビー4人はそれぞれ友人関係ではありますが、各々の関係値はまるでバラバラです。ケイエスミラクルとダイイチルビーは同室ということもあり親しげに会話をし、それぞれの過去や気持ちを打ち明ける間柄ですが、ダイタクヘリオスとダイイチルビーの2人は対照的で、ダイタクヘリウスの超ウェーイ!な言葉や声掛けに、「ウルトラソルティ」なルビーさんという対照的な言動で思わず笑ってしまいそうになります。
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これまでゲームなどでなんとなく知られていた部分ですが、舞台公演では言葉遣いや目線、表情や動きでしっかりと伝わる部分です。
この舞台に出演する4人のうち、ヤマニンゼファーはゲーム『ウマ娘』で育成できますが、他3人はまだ育成キャラクターとして登場しておらず、各々が抱えている野心・決意・プライドがいかようなものか、まだまだ分からない部分があるかと思います。
実際この舞台では、レースにかける想いや「走ること」そのものの捉え方が4人それぞれ、別々であることがハッキリと伝わってきます。
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特に「みんなとレースを楽しみたい!」というダイタクヘリオスと、「一族のために、栄光をもたらすために」と考えているダイイチルビー、こちらもゲームを通して何となく伝わってはいましたが、この演目のなかでその違いが明確に示されるシーンもあります。
ですが4人それぞれの考え方が違えば違うほど、理解し合い、寄り添い合っていく姿にドラマが宿り、本舞台のラストはかなり見ごたえのあるドラマに仕上がっています。
舞台そのものについて記してみましょう。まず言えるのは、舞台と観客席が非常に近いという点です。観客席は600人ほどの指定座席の客席で、最前席ならばほんの数メートル先で出演者たちが演技していますし、一番後ろの席でも「かなり近い」と感じられる距離で観覧することができます。
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ステージと観客席が近いということもあり、音楽、セリフ、音の圧力がとても強く、演者1人1人の表情がしっかりと見て取れます。
筆者はライブハウスやアリーナでの音楽ライブはたくさん見ていて、舞台やミュージカルをほとんど見たことがありません。強いて言えば2000人~3000人が収容できるホール会場の前方エリアのみを使って演劇を見ている……といえばより正確かもしれませんが、また違った別の魅力・迫力が感じられるはずです。
◆ステージとの距離が近いが故に音・演技ともにド迫力!
この舞台でウマ娘たちは様々なレースを走ります。地方のレースを転々としつつ、天候も違えば、左回り・右回り、後ろに映し出されるレース場もよくよくみると違いがあるのがわかるはず。
これまでのウマ娘同様、これらのレースは「とある時期に実際にあったレースに準拠」した内容になっており、8頭立てのレースならば8人のウマ娘が、16頭立てのレースであれば16人のウマ娘が舞台に登場し、実際にあったレース展開に合わせて舞台上で表現しています。
以前キャスト4人へインタビューをした際に山根さんや佐藤さんはこのように話していました。
山根「レース途中に抜く/抜かれるところで、私たちはタップを踏みながら走るんです。」
佐藤「タップダンスの「タカタッタカタッ」という音が17人で合わさるとすごい迫力で、本当に競馬場にいるみたいだと思えるはず」
ダンスフォーメーションを馬群や集団に見立てつつ表現されるレース模様は、タップダンスのステップを踏むような、またはレースを走っているかのような、非常にユニークな表現だったと感じました。
G1・G2レースが終わればトレーナーさんにとってはお馴染みの「ウイニングライブ」もあり、観覧するトレーナーさんらはペンライトを振って応援する瞬間もあります(色を合わせるためのレクチャーパートもありました)
この舞台で初披露となる楽曲、「この曲をこのタイミングで歌うのか!」という意外性、それらをバッチリと伝えてくる迫力やパフォーマンスは、4人のウマ娘を巡りドラマをより盛り上げてくれます。競馬場とはもちろん趣は異なりますが、迫力満点の舞台パフォーマンスと心動かされるドラマを本公演で見つけることができるでしょう。
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この他にも目を凝らせば、様々なギミックに気付けるのも本公演ならでは。背景で映し出される部屋・控室・練習グラウンドなどはゲームで使用されたものとほぼ同じですが、この舞台で初めて見る背景や表現もあります。
特に現在の日本競馬ならびに『ウマ娘』ゲーム内では「G1レース」とされているあのレースが、当時に合わせてG2レース・旧レース名・距離として紹介された辺りは、この舞台でしか見れない特別感がありますよね。
こういったプレミアム感も含めて、これまでゲームやアニメなどを通じて「ウマ娘」を知っているトレーナーの方、「あまり舞台やミュージカルには縁がないんだよな」と感じている方にも、ぜひ見てほしい舞台公演に仕上がっています。
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本日1月29日がいよいよ千秋楽となる本公演。アクシデントはあったものの、無事に最後まで駆け抜けられるよう祈っております。