あの頃とあまり変わらぬ味か、それとも現代に合わせて大きく手を加えたものか。読者の皆様は、リメイク作品に対して何を求めるでしょうか。筆者としては「原作準拠のものを遊べる環境は確保しつつ、リメイク版では原作から大きく手を加えた体験がほしい」という若干ワガママ気味な考え方で、オリジナル・リメイクのどちらも現行機種でプレイできる『ファイナルファンタジーVII リメイク』のような形態が理想と言えます。
3月24日に発売する『バイオハザード RE:4』は、原作『バイオハザード 4』が現行機種向けに移植されているため、似たポジションと言えます。リメイク作品としてみたときの本作は果たしてどのようになっているのでしょうか。
本稿では、PC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S向けについに発売を迎える『バイオハザード RE:4』のレビューをお届けします。レビューにあたってはPS5版のバージョン1.02を使用し、難易度STANDARDでプレイしています。そのため、ボタン表記はPS5準拠となります。なお、ストーリーのネタバレは極力避けていますが、一部展開に触れているためご注意ください。
◆『バイオハザード RE:4』とは?
レビューに入る前に、本作について軽くおさらいしておきましょう。本作は、2005年に発売された『バイオハザード 4』のリメイク作となります。グラフィックの刷新や新規要素、日本語吹き替えなどを加えて現代向けに作り直された作品です。
原作はシリーズの中でも人気が高いだけでなく、肩越し視点というTPSのジャンル上重要なメカニクスを広めたことでも知られており、リメイクへの期待とハードルは非常に高いものでした。
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物語は、主人公のレオン・S・ケネディがさらわれた大統領の娘、アシュリー・グラハム捜索のため、山奥の村に向かうところから始まります。一緒に連れ添った警官が用を足すため一度車を離れますが、一向に帰ってきません。レオンが様子を見に行き、近くの民家を訪ねると、様子のおかしい住民に斧で襲われます。ここは、狂気に満ちた村人たちがひしめく恐怖の村だったのです……。
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◆原作の良い部分である爽快な射撃やリソース管理はそのまま!
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ゲームプレイは、ストーリーの流れに沿ってマップを探索し、敵を倒したり謎解きを突破したりしながら目標地点に向かって進んでいきます。基本的な操作は、左スティックで移動、押し込みでダッシュ、L2で狙ってR2で射撃、□でリロードというものです。原作は現代から見ると操作がやや特殊でしたが、リメイクにあたっては一般的なTPSの操作に準拠しています。
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様々な武器が存在する本作では、場面による使い分けが重要になってきます。普段はハンドガンを持ちながら、敵が多いときにはSMGやショットガンで一気に蹴散らしたり、広いマップではライフルにスコープを付けて遠くから安全に倒したりといった戦略性を生んでいます。ヘッドショットすると敵が怯み、メレーで攻撃できるというのも健在なので、爽快さもあります。
武器は主に、マップ上に点在する商人から購入することになります。商人は武器・アイテムの購入と売却やアップグレードなどが可能です。武器はそれぞれ複数種類のモデルが用意されており、ハンドガンひとつ取っても威力が低い代わりに扱いやすく連射力の高いものと、反動が大きい代わりに威力が高いものなどが存在するので、好みに合わせて使う武器選択できます。
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筆者が特に良いと思ったのは武器の売却とアップグレードの関係です。武器は威力や装弾数、装弾速度などを道中で獲得できるお金を使って強化できるのですが、武器を売却しても強化に使用したお金のほとんどが戻ってくるので、いろんな武器を試してみたり、その分のお金を新しい武器の強化に充てたりできるのでとても便利と感じました。
サバイバルホラーシューターらしくリソース管理がゲームプレイ上の特徴の1つとなっており、弾薬や回復数の管理が求められます。敵を倒すことで失うリソース(弾薬や回復など)と、敵を倒すことで得られる報酬(ドロップアイテム)のトレードを考慮しながら戦闘をするか避けるかを考える緊張感は間違いなく存在します。
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しかし、今回はインベントリから弾薬をクラフトできるという大きな違いがあります。原作でも回復アイテムであるハーブの調合程度はできましたが、リメイクでは敵からのドロップやアイテムの入った箱から入手できるガンパウダーと素材を組み合わせて弾薬や手榴弾を作ることができるようになっています。
ガンパウダーと素材を手に入れる機会はかなり多いため、この機能は弾薬管理の旨味を若干薄れさせるという問題点もあります。常になんでも作れるというほどではないですが、筆者はクラフト機能によって弾薬に困ることがあまり起こりませんでした。
ただ、ここはプレイヤーのシューターの腕前によって左右されそうです。敵1人あたりに使う弾薬が多ければ、その分クラフトによる弾薬の作成はありがたいものになるでしょう。
◆リメイクによって追加された要素は遊びやすさを向上させ、誰でも楽しめる作品に
原作でも十分に面白かった『バイオ4』ですが、リメイクによる追加要素は本作に何をもたらしているのでしょうか。筆者は、「遊びやすさ」という点に重点を置いて磨きをかけているように感じました。
■簡単操作でパリィ可能
ゲームプレイ上最も大きな変更点は、ナイフによるパリィです。敵からのほとんどの攻撃はL1を押すことでパリィすることができ、成功すると相手をのけぞらせることができます。のけぞった相手は×ボタンで発動するメレー攻撃で周りの敵と一緒に蹴飛ばせます。パリィの判定はかなり甘く、攻撃のかなり前からL1を押していても成功できるため誰でも使いやすいです。
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これは現代的なアクションゲームらしい要素であり、数的不利に陥っても抜け出しやすい快適さや激しい攻撃を耐えて一気に押し返すという爽快感にも寄与しています。場面によっては数多くの敵が一斉に襲いかかってくるため、攻撃を弾いてひるませたあとにメレー攻撃、怯んだ敵の隙間をくぐり抜けて距離をおいて再び射撃…というようにうまく捌けたときはとても気持ち良いです。
原作では様々な箇所にQTEが存在しました。筆者は極端に苦手というほどではありませんでしたが、対応できずに死亡することには違和感を覚えており、そこが苦手という方も多かったように思います。今回はQTEがほぼ取り除かれ非常に快適です。ボス戦での回避など一部残っているところはありますが、ほぼ全面的にプレイヤーの操作精度や戦略によって攻略できるため、純粋にゲームを楽しめました。
■サブ要素進行でその後のプレイが有利になるアイテムを入手
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マップ上に存在する青い紙にインタラクトすると、サブクエスト的なミッションを受注できます。内容は「ネズミを駆除してくれ」「青いメダリオン(的)を全部破壊してくれ」といったもので、マップを進むついでにこなせるものが多いです。
これをクリアすることで入手できるスピネルは、さらに強力な武器やマップ上に隠されたお宝の位置がわかる地図などに引き換えでき、いずれも入手することで有利になるため、積極的に挑みたくなる魅力があります。もちろん、サブ要素であるため無視して先に進んでも問題ありません。
■パリィを出せるナイフにはリソース管理の側面も
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ゲームプレイの楽しさに作用している要素は、ナイフの耐久値が挙げられます。ナイフはパリィや近接攻撃を行うことで耐久値が減っていき、最終的には壊れてしまいます。ナイフにはデフォルトで所持しているナイフの他に、キッチンナイフなどたくさん入手できる代わりに耐久力の低いものがあります。デフォルトのものは商人に修理してもらえますが、後者は直せません。
ナイフが無くなるとパリィや近接攻撃ができなくなってしまうため気を配らなければなりません。背後を取っている状況など特定の場面で行える特殊キルは簡単に敵を倒せる反面、ナイフをかなり摩耗させるため使い所には気をつける必要があり、ここにもリソース管理的な面白さを生み出しています。
■進む方向、やるべきことをわかりやすく
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他に「遊びやすさ」を追求した要素として、進路やインタラクトできるものが黄色く塗られていることが挙げられます。筆者はゲームがリアルなグラフィックになることに対して、インタラクトできるものや進路がパッと見でわかりづらくなるという弊害があると考えています。しかし、本作のこの仕様はやや露骨なゲームらしさを感じてはしまうものの、進路や攻略の鍵になるものがわかりやすく、快適なゲーム進行をサポートしてくれます。
また、左スティック押し込みで行えるインベントリの自動整理にも要注目。筆者はマス目型のインベントリ整理が大好きですが、早く敵と戦いたいのにいちいち空きスペースを作らなければならないのが面倒くさい、という意見も理解できます。そこで、この自動整理があれば面倒くさい人はスキップして、好きな人はマス目インベントリを自分で整理して、隙間を埋めていくという楽しみをそのまま味わえるのです。
「遊びやすさ」の要素には、ナイフパリィの受付時間やインベントリの自動整理など、原作の熱烈なファンやハードコアなゲーマー視点ではやや物足りない部分もあるものの、誰でも遊びやすいように作られているのには感心させられました。とはいえナイフ耐久度などの存在によってゲーマーでも簡単すぎるということはなく、しっかりと考えてプレイしなければならない場面は多々あります。もしかすると、カジュアルゲーマーからハードコアゲーマーまで、まんべんなく満足させられる仕様はもう一歩先に踏み込めば実現できるのかもしれません。
◆グラフィックや日本語音声は素晴らしい出来
ゲームプレイについて様々な良い点を述べましたが、やはり一番リメイクによる変化を感じるのはグラフィックやサウンド面です。
■すでに知っているはずの『バイオ4』の世界がとても新鮮に
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グラフィックはREエンジンのおかげかかなり美しくなっており、老朽化した建物や光の当たり方、水面の表現は一級品と言えます。マップにおいても、荒廃した村の寒そうな雰囲気や室内の暗くて心細い空間は印象に残るものが多くありますし、各種オブジェクトも本作の世界の説得力を高めています。ただ、グロテスク表現の規制については気になる部分もありました。
サウンドについても、武器の射撃音や鎖などのオブジェクトに当たったときの効果音や敵が近辺にいる際のボイスは、ヘッドホンを付けていればなんとなくの位置がわかるようになっているので、雰囲気だけでなくゲームプレイにも役立ちます。敵との戦闘状態とステルス状態の緩急もつけられており、うまく緊張感を演出してくれています。
■レオン、ルイスらに日本語音声が付く
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原作には英語音声しかなかったため、リメイクで初めて日本語音声が付きましたが、クオリティは非常に高いです。クールなレオンや陽気なルイス、可愛らしいアシュリーなど、どのキャラクターもいずれもピッタリとイメージにハマっており、まったく違和感を覚えさせませんでした。
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特に素晴らしいのは、商人のボイスです。原作でも「ウェルカム」が「ヴェルガーム」に聞こえるほどのダミ声が印象的でしたが、吹替版では千葉繁さんの声によって特徴的なダミ声がそのまま日本語に落とし込まれています。武器購入時などのセリフもかなり多くなっているので、商人が好きになること間違いなしです。
こだわりを感じるポイントは、敵の雑魚キャラの音声は日本語になっていないという点です。レオン視点から見れば、敵は異言語を話す謎深き存在です。そのため、ここが原語のままというのは非常に良い判断だと思いました。
◆原作よりも説得力のある設定・ストーリーに
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最後にストーリーについてです。大筋の展開は同じですが、一部にブラッシュアップが加えられ、原作よりも説得力が高くなっています。極上のストーリーが用意されているというわけではありませんが、それぞれのキャラクターには印象的な場面がたくさん用意されています。原作でルイスが発したアシュリーに対するセクハラ的な発言も違和感なく変更されており、どのキャラも好きになるでしょう。
海賊帽を付けていたラモン・サラザールは低い身長も相まって、老人のような顔と対照的に子供のような印象でした。こちらは大幅にデザインが変更され、声優もチョーさんが担当しているため、リアルなグラフィックの上でも違和感のないデザインになっています。
◆遊びやすさを追求した本作は3月24日に発売
『バイオハザード RE:4』は、戦闘の爽快感やリソース管理の楽しさなど原作の核の部分を保ちつつ、遊びやすいような強化や改善を施しているリメイクでした。ナイフパリィおよび耐久度はその最たる例で、上述した本作の楽しい部分をさらに拡張するものになっています。オミットされた部分がないわけではありませんが、分かりづらかったり面倒くさかったりする部分も解消されているので、ますます多くのユーザーが楽しめる作品に仕上がっています。
リアルで世界に没入できる美しいグラフィックや、キャラクターのイメージぴったりの日本語吹き替えなど特に目につく進化した点も良い方向に作用しており、非常にクオリティの高いリメイク作と言えるでしょう。サバイバルホラーファンはもちろん、それ以外のゲーマーにもおすすめの作品です。
『バイオハザード RE:4』は、3月24日PC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S向けに発売予定です。
※UPDATE(2023/03/18 00:00):編集部の不手際により、問題のある画像が掲載されておりました。各位にお詫び申し上げるとともに、該当箇所を差し替えて再掲いたします。コメント欄でのご指摘もありがとうございました。