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4月14日よりPC/PS4/Switch向けに発売される『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』(Vol.1、2の二部作)。ゲームボーイアドバンスを象徴する名シリーズが、現代らしい進化を遂げて帰ってきます!
スピーディーなアクションゲームだったロックマンをアクションPRGにしたのが『ロックマンエグゼ』……という説明だけでは、このシリーズの功績を伝え切ることはできません。常時オンライン接続が当たり前になった今現在の生活を予言し、さらにGBAの画面に向き合う子供たちに「仮想現実」の概念を与えてくれた時代の記念碑。それが『ロックマンエグゼ』と言えます。
それは今話題のチャットボットにもつながります。
近未来を予言していた!
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エグゼシリーズ第1作『バトルネットワーク ロックマンエグゼ』の発売日は、2001年3月21日。この時の日本は、デフレの沼に呑み込まれていました。
コンピューターに必要不可欠の半導体の製造を一手に担っていた時代は既に過ぎ去り、日本の成長を下支えしていた巨大金融機関も次々に破綻します。今までのようなやり方では日本の産業は凋落する一方の時代がやって来ました。しかし、そんな状況を自力で改善しようという大人は決して多くなかったと当時少年だった筆者は記憶しています。
「社会人たるもの」「社会人として」「お前たちはあと数年で社会人になるのだから」ということをティーンエイジャーに対してぶつけていた当時30代以上の「社会人」の多くは、実は自分自身が何をしていいのか分かっていなかったのかもしれません。変わらないと未来はない。けれど、自力で変わるのは怖い。だから、自分が責任を持って選択するべき「変革」を人任せにしてしまう。閉塞感が日本人を圧し潰していた時代です。
この当時のPCのOSはWindows2000がようやく登場したばかりで、主流はWindows98でした。インターネットに接続し、チャットサービスを使って世界のどこかにいる人と交流するという概念がようやく根付き始めた頃でもあります。
そのような時代において、ロックマンエグゼの世界観は極めて斬新でした。
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このゲームの時代設定は西暦200X年。人々は「PET」と呼ばれる「いろいろなことができる携帯電話」を常に持っています。PETを使えば様々な人と連絡を取ることができ、日常に必要な情報をチェックすることができ、さらには買い物もすることができます。PETはたった数年で、人類の生活を劇的に変化させてしまいました。
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ところが、それにつけ込む犯罪者たちも続々現れます。常時ネットに接続された環境はウイルスに脆弱で、「WWW」というネット犯罪集団も暗躍している状況です。
デンサンシティの秋原町に住む少年光熱斗は、PETの中に存在する疑似人格型プログラム「ネットナビ」のロックマンと共に、人々の暮らしを脅かすネット犯罪と戦います――。
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シナリオのあらすじを文字にしてみると、2023年との共通点が非常に多いことが分かります。これ、本当に2001年に発売されたゲームなのか!?
「IoT」の概念がある!
エグゼの世界観は基本的に二面構成で、「現実世界」と「電脳世界」に分かれています。
しかし、電脳世界でのトラブルはそのまま現実世界に多大な影響をもたらします。つまり電脳世界は決して「幻想」ではなく、ある意味では「もうひとつの現実世界」です。キャッシュレス決済のプラットフォームに不具合が出たら、買い物が一切できなくなるのと同じように。
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携帯電話だけでなく、家の中の家電をネットに接続して一括管理するという光景もエグゼの中で繰り広げられています。当時は「IoT」という言葉はまだありませんが、その概念は既にあったということです。
そんな環境ですから、熱斗の通う小学校でウイルス対策の授業が行われているのは至って自然の流れ。それに関する知識を身に着けなければPETを使いこなすことができず、現代人に相応しい最低限の生活すら遅れない……というわけです。
ロックマンエグゼとChatGPT
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ネット空間にはバグやウイルスが付きもので、それを熱斗の良き友であるAIアシスタント(ロックマン)が解決する。ところが、ロックマンに任せっきりというわけでもなく、展開の節々で重要な決定を下すのは熱斗自身……。
今話題のChatGPTとの付き合い方も、これと同じだと考えるのは筆者だけでしょうか。
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「頭のいい大学生と同等」と言われているChatGPT。手紙や企画書、今日の料理のレシピ、ちょっとしたプログラミング、大学に提出する論文、果ては人生相談まで、チャットボットは何でもやってくれるようになりました。しかし、もしかしたらとんでもない欠陥が潜んでいるのでは……?
時代がゲームに追いついた今だからこそ、エグゼシリーズは再びプレイしておきたいタイトルでもあります。
オンライン対戦機能が実装!
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『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』は、上述の通り2部構成。Vol.1の収録タイトルは、
『ロックマンエグゼ』
『ロックマンエグゼ2』
『ロックマンエグゼ3』
『ロックマンエグゼ3 Black』
の計4本。そして、Vol.2の収録タイトルは以下の6本。
『ロックマンエグゼ4 トーナメントレッドサン』
『ロックマンエグゼ4 トーナメントブルームーン』
『ロックマンエグゼ5 チームオブブルース』
『ロックマンエグゼ5 チームオブカーネル』
『ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ』
『ロックマンエグゼ6 電脳獣ファルザー』
さらに、令和の今に相応しく他のプレイヤーとのオンライン対戦機能も備わっています。
また、GBA時代の名残であるドット絵の「カクカク」を軽減させるフィルター機能も搭載。これは逆に言えば、フィルター機能をOFFにすることでGBAの雰囲気を味わうことができます。
20年後の未来の光景を教えてくれたロックマンと、もう一度冒険に出かけよう!