
荒廃した地上から抜け出すために、主人公は空を見上げ、建物を伝って上空へと向かっていく。
歩き、走り、飛んで、登って、ただただ上へとあがり続けていくのみーー
2023年6月現在、ストリーマーやVTuberなどゲーム配信者のシーンで『Only Up!』というゲームが注目を集めています。
あがりつづけろーーインディーゲーム『Only Up!』とは?
『Only Up!』はSCKR Gamesというインディーゲーム会社から、2023年5月25日にリリースされたゲーム作品です。
内容は単純明快、建物やオブジェクトを伝ってただ上を目指すだけ。ひとたび落ちればやり直し、ミスしないようにプレイするための集中力や忍耐力が問われ続ける、そういったゲームになっています。
この特徴は、2017年に発売された『Getting Over It with Bennett Foddy』(通称:壺おじ)を思い出しますが、壺おじが2Dアクションゲームであったのに対し、本作は3Dアクションゲームというのが大きな違いです。
こういったインディーゲームとしては3D背景などは凝っており、今にも崩れそうな家屋、超々高層ビル、電車、線路、ヘリコプター、パソコン、キャッシュケース、空飛ぶ巨大ドラゴン、そしてブラックホールまで、さまざまなオブジェクトに登り、走り抜けることができます。
登り続けていくと、プレイヤーのなかには「あれ?これって…」とすぐに気づくような、〇〇風なフィールドにたどり着くことも。思わずツッコミたくなるようなオブジェクトが点在しているので、まるでシュールなギャグのようにも思えますし、現代アート的ななにかを感じる瞬間もあります。
この数カ月で『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』『ストリートファイター6』『BLUE PROTOCOL』『Diablo IV』といった注目作品がリリースされており、どのタイトルもかなりのヒットを飛ばしています。
当然ストリーマーやVTuberたちもこぞって、人気作品を生配信でプレイしていますが、そんなビッグタイトルの間に挟まるように、『Only Up!』を配信する人が徐々に増加している状態なのです。

少しずつひろがっていく『Only Up!』の波
『Only Up!』の発売当初は海外投稿者によるRTA動画がしずかに広まっているのみでしたが、6月2日にストリーマーのわいわいさんが生配信で取り上げると、6月6日にゲーム実況者のポッキーさんもゲーム動画としてとりあげ、注目のキッカケを生むことになります。
6月9日には、ホロライブでも屈指の人気をもつ兎田ぺこらさんが配信でプレイしました。ぺこらさんは6時間以上に渡って悪戦苦闘しつづけましたがクリアにならず、翌日以降から毎日のようにトライすることに。
結果的に約6時間強の配信を4日連続でこなすこととなり、4日目の6月11日の配信でついにクリアに至りました。
自身の背中を見せる大胆かつ見慣れないサムネイルとゲームタイトル、"壺おじ"を思い出させるような鬼畜すぎるゲーム難易度、なにより「新たな耐久系ゲームの発見」という意味で配信は大盛り上がり。無事クリアとなった最後の配信では、なんと7万人近い同時視聴者数を記録しました。
おなじく11日には、にじさんじ・本間ひまわりさんも配信でプレイ。元々にじさんじゲーマーズとしてデビューをした彼女でも本作はかなり難しかったようで、この日中にはクリアすることはできず、翌日以降3日ほどかけてようやくクリアするほどです。
兎田ぺこらさん、本間ひまわりさんと両事務所を代表するタレントがライブ配信で本作をとりあげて盛り上がったこの日以降、両事務所に所属するメンバーだけではなく、VTuberやゲーム実況者のなかで『Only Up!』配信が増えていきました。
ゲーム実況・配信の新たな定番ゲームとなるか?
配信者やファンのあいだではすでに「3D壺おじ」として知られ始めており、いわゆる耐久配信を試みるVTuberも当然生まれています。
その多くがソロでの挑戦で、ギミックの面白さに驚いたり、風景の綺麗さに癒されるような瞬間はあれど、理不尽なギミックにだまされてイライラさせられることのほうがよっぽど多いのです。
そんななか、6月17日の深夜1時からはにじさんじの椎名唯華さん、夜見れなさん、魔使マオ、レオス・ヴィンセントの4人で『Only Up!』のコラボ配信をしました。
4人同時でゲームをスタートしてからのクリア耐久というだけでなく、「食事抜き」「喫煙禁止」という縛りでプレイしました。
始まってすぐは煽り合いながらワイワイとプレイしていましたが、1時間、また1時間と時間が過ぎ、ちょっとした慢心やミスから落下すると声にならない悔しさを滲ませるようになっていきます。
「誰かがクリアすれば終わり」というルールで配信をしていたので、先頭を登っていた人が一気に落下すると、それに合わせてテンションが下がってしまう一幕も。
とはいえ、「ここまで引っ張ってきてもらったから頑張らないと!」と奮起し、8時間30分を超えたところでようやく1人がクリアすると、他のメンバーも続々とクリアしていきます。
9時間半を超えたところで無事全員がゴールし、朝8時半ごろに配信は終了。これで『Only Up!』をプレイすることはないはず…とおもいきや、翌日には『Only Up!』を再度プレイする椎名さんの姿が。
いったいどんな結末を迎えたかは、ぜひ配信をご覧ください。
一瞬の隙やためらい許されない難しそうなゲームですが、最速かつ丁寧なプレイングでクリアを目指すのも良し、ミスにミスを重ねる沼プレイでリスナーの笑いと応援をもらうのも良しと、まさにゲーム実況配信や耐久配信向けな内容なのは言うまでもないでしょう。
もしかすれば数年後には、ゲーム配信における定番作品になっているかもしれません。