東京ゲームショウ2023、その一日目となる2023年9月21日。NetEase Gamesより突如発表された新作タイトル『Rusty Rabbit』。PC、PlayStation 5向けに開発が行われており、脚本・原案を担当するのは『PSYCHO-PASS サイコパス』『Fate/Zero』などで知られる、脚本家・小説家の虚淵玄氏(ニトロプラス)です。
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本作はメトロイドヴァニア・ローグヴァニア的要素を持つ、2.5D横スクロールアクションで、主人公は“うさぎ”。しかも“中年うさぎ”。ハードボイルドなストーリーは分かるにしても、突然のうさぎ、中年という要素は果たして一体……?
本稿では、発表会直後となる虚淵氏の非常に興味深い発言が飛び出した、メディア合同インタビューの模様をお届けします。
◆『Rusty Rabbit』ってなんぞや
まず説明されたのは、本作の大まかなストーリーです。「人類が姿を消して数千年。新たな歴史の主役となったのは“うさぎ”だった……」という強烈な世界観が炸裂する中、主人公である中年うさぎの「スタンプ」が、「ディータム」と呼ばれる情報端末を見つけるところから物語は始まります。この端末には、失踪してしまったスタンプの娘の手がかりとなる情報が含まれており、人類が遺した軌道エレベーターの遺跡を探索しつつ、娘の足跡を辿り、探索で入手したアイテムを用いて愛機のロボット「ポンコツ」を強化していく……。というのが、大枠のストーリーの流れのようです。
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ポストアポカリプスで多く見られる絶望しか残されていない世界というようなものではなく、人類が滅びたことを受け入れ、たくましく生きるキュートなうさぎたちという、「キュートなキャラとハードな世界観の融和」がコンセプトになっているとのこと。
企画体制として、開発を行うのは有限会社チャイム。キャラクターデザインに有限会社カナバングラフィックス・アートディレクターの宮崎あぐり氏(『ウサビッチ』キャラクターデザインなど)。サウンドにBusted Rose・吟氏(アニメ『ポプテピピック』への楽曲提供など)が担当するそう。
◆「虚淵氏自ら作ったゲーム」が原案
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開発段階でのプレイデモとなったため、プレイ画面をあまりお見せできないのが残念ですが、プレイフィールは「2.5D横スクロールアクション」そのものです。愛機ポンコツに乗り込み、状況に応じた武装選択で遺跡を探索し、時に戦闘を行います。プレイデモはサクサクと軽快に進んでいるように見えましたが、これは「“完全体スタンプ・もといポンコツ”なので」とのことで、実際にはダンジョンのギミックに応じた選択が重要になるようです。
プレイデモが行われる中、ここで虚淵氏から本作の発端となる出来事が語られました。約8年ほど前、オリジナルロボ作家・mighty氏(ALMIGHTY代表)の「シルバニアファミリー」を用いた作品を見つけた虚淵氏。「これすごい気に入っちゃって、携帯の壁紙に使っているうちに、ストーリー性を盛り込みたいなと思いまして。仕事の片手間に趣味でUnityでゲームを作っちゃったんですよ。それをNetEaseさんにお見せしたら「これはぜひ商品化しましょう」というお話をいただいて。これを見せて「こんなのどうですか?」という話をしていたので、コンセプト段階における企画書的なものが本作にはないんです」という衝撃の事実が。今回の虚淵氏の原案表記は、プロトタイプまで作られていたという意味でまさしく「原案」だったのです。
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「Unityに転がってるアセットだけで作ったので、触ってる方から見れば、“あぁ、あのアセットね”となるでしょうが(笑)」とジョークを交えつつ、虚淵氏お手製のプロトタイプを見せていただきました。脚本業の傍ら、コロナ禍で閉じこもりっぱなしの時期に制作に取り組んでいたそうで、「こうして綺麗に作っていただいて、このようにお見せできるのは、隔世の感もありますね」と感慨深く述べるシーンもありました。
なお、ここからオリジナル作品として大きなブラッシュアップを経た『Rusty Rabbit』はUnreal Engine 5を使用。我々が見たデモでも、登場するうさぎたちの毛並みにもこだわったリッチなグラフィックが展開していました。
◆「タバコではなくニンジンです」
虚淵氏とNetease Gamesのタッグだからこそできる、「あえてこの時代に〇〇」というゲーム作りを随所に盛り込み、ゲーム性とストーリーを連動させるという部分を念頭に制作に取り組んでいるそう。ハードボイルドさを表現するコンセプトとして、スタンプがタバコ(らしきもの)をプカリとするワンショットなどもありましたが、「スタンプはうさぎなので、製品ではニンジンになります(笑)」というお茶目なワンシーンもありました。ここからは虚淵氏へのインタビューをお届けし、本稿の締めくくりとさせていただきます。
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──「ハードボイルドを描きたい」という目標はどこから生まれたのでしょうか?
虚淵氏:僕もなんだかんだで50(歳)になりまして、若い子の感性に沿った作品というのを年々作りづらくなっている部分があったんです。いっそのこと開き直って、おっさん、じいさんの話を書いてしまおうかなと。ただ、それだけだと集客がままならないので、あえて“ガワ”は可愛く。話自体は「老いと向き合う」というような重苦しい話ではあるんですが、キャラクターをうさぎたちにすることで、より一般層にもリーチできないかなというところに落ち着いています。
──「2D(2.5D)のベルトスクロールアクション」というジャンルを選ばれた理由を教えてください。
虚淵氏:やっぱり手探りの趣味で始めたスタートだったので、限られたアセットの中で表現できること。また、単純にジャンルが好きというのもあるんですが、「真横から」ってキャラクターを表現しやすいんですよ。TPSとかだと後方視点が主になってしまって、キャラクターそのもののビジュアルを楽しみづらい。ちゃんとお客さんに「プレイヤーキャラクターを見せられる」という観点だと、こうしたベルトスクロールアクション、メトロイドヴァニア系のスタイルが良いと考えている部分もあります。
──ゲーム部分だけでなく、原型となるストーリーも作られていたのでしょうか。
虚淵氏:そうですね。先ほどのmightyさんの作品からインスピレーションを受けて、勝手にストーリーを作っていたりしたんですが、そうした部分も汲み取ってもらっています。
──ストーリーとしては話の途中で分岐があったり、マルチエンディングになったりするのでしょうか?
虚淵氏:秘密です(笑)。とは言いつつ、そこまで期待させる部分でもないと思うんで……。大まかなストーリーは一本道で、彼のジャンク屋としての側面はサブクエストで表現するという形ですね。
──やはり、虚淵さんのシナリオとなると「どうしようもなくなってしまう人々」というような……。
虚淵氏:あぁ~……(笑)。
──やはり、かわいそうなことになってしまうキャラクターというのはいるんでしょうか?
虚淵氏:モロに見える形では“そんなに”いないですね。重症レベルというか。「死んだの?」みたいなね(笑)。うさぎたちは死と隣り合わせの冒険をしていますけど、わざわざうさぎにしたくらいですから、エグい話ではないです。そもそものテーマがエグいので、娯楽として中和する部分は心血を注いでいる部分ではあります。
プロデューサー:ブロックで潰れても「ギュム」みたいな(笑)。ギャップは大事にしていますし、「〇〇ってどうなるんだろう」という魅せ方も意識していますね。
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──あくまで、レーティング的には全世界・全レーティングを目指すというような。
プロデューサー:はい。あくまで“ポップさ”は損なわない形で。出血表現もありません。
──かなり綺麗なプレイ画面を拝見しましたが、映像表現的な部分でのこだわりはありますか?
プロデューサー:ジャンルとして確立されている中で、話が虚淵さんという点はしっかりとしたクオリティの担保に繋がるのですが、「虚淵さんの脚本だから」という部分だけではなく「なんか面白そうだな、やってみたいな」と思っていただけるように。画的な部分でもアピールを追求していく、他の作品との差別化を行っていくという目標に取り組んでいます。
──ゲームシステム的な部分で、スタンプとポンコツはどのような関係となるのでしょうか?
虚淵氏:安全地帯でのインターフェースとしてスタンプを操作し、戦闘や採掘はポンコツに搭乗するという形になります。世界観的に、うさぎたちが過去の人間を探ることは宗教的な意味で禁忌なんですね。それでも掘り進める彼らは無法者なんです。やさぐれていて、酒を求めて奪い合う……みたいな。
──ポンコツという名前はどこから来たのでしょう?
虚淵氏:主人公の底意地の悪さというか。自分の愛機にわざわざポンコツなんて名前を付けるくらいですから……。そういうキャラクターなんです(笑)。
プロデューサー:翻訳も大変で(笑)。ガラクタとポンコツをどう表現するかという……。
虚淵氏:区別はどうなるというね(笑)。
──キャラクター(スタンプ)の成長によって、プレイスタイルの幅を広げていくというようなものになるのでしょうか?
プロデューサー:スタンプは中年うさぎなので「衰えたカンを取り戻す・更に強めていく」というようなキャラクター側の成長と、ポンコツにチップを挿入してカスタムすることでの強化。この2軸でプレイヤーへアプローチしていきます。
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──ありがとうございました。最後に一言ずついただけますでしょうか。
プロデューサー:「虚淵さんの趣味を趣味で終わらせてしまうのは勿体ない!業界にとっても損失だ!」ということでお願いをし、開発を進めさせていただいております。まだお出しできていない情報もありますが、キャラクター同士の絡みであったり、成長要素であったりと盛りだくさんの要素が詰まった作品ですので、今後ともご期待いただければ幸いです。
虚淵氏:まさか道楽で始めたUnityでの制作が、Unreal Engineでちゃんとした形になるとは思っておらず、NetEaseさんには感謝しかないです。プロのクリエイターの方々の手によって仕上げていただいておりますので、発売にご期待いただければと思います。よろしくお願いいたします。
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