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2023年9月19日、世界的に人気の対戦格闘ゲーム『Mortal Kombat(モータルコンバット)』シリーズの最新作となる『Mortal Kombat 1』が発売されました。過激な表現で注目を集める本シリーズですが、実は格闘ゲームとは思えないほどの壮大なストーリーも魅力なのです。
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とは言え日本ではもう何十年も発売されていないので、未だに“グロいだけの洋ゲー”と認識されてしまうこともあります。本記事ではそうしたイメージを払拭すべく、最新作『Mortal Kombat 1』の魅力をお伝えしたいと思います。なお、バイオレンスな表現は当たり前のように進化しているので本記事では脇に置いておきます。
!注意! 本記事ではシリーズ過去作品のネタバレが含まれています。
未プレイの方はご注意下さい。
『Mortal Komba 1』をプレイする前に覚えておきたい基礎知識
Realm(領域)
『Mortal Kombat』シリーズの世界は私たちの住む地球「Earthrealm」をはじめ、日本語では魔界とも呼ばれる「Outworld」、いわゆる地獄や冥界の「Netherrealm」など、いくつかのRealmによって構成されており、基本的には「Outworld」による「Earthrealm」への侵略を食い止める物語が展開します。
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リュウ・カン
シリーズの主人公的キャラクター。シリーズの途中で死んだり、ゾンビ化したり、闇落ちしたりと不遇なキャラクターでしたが、『Mortal Kombat 11』で炎の神、さらには時の番人となり世界全体を操る能力を手に入れました。
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ライデン
Earthrealmの守護者である雷の神。『Mortal Kombat 11』でリュウ・カンと融合し、神としての役割はリュウ・カンに託しました。今作では普通の人間になり、歳も若返っています。
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サブ・ゼロ
シリーズ2大看板のひとりで、氷の力を操る忍者。サブ・ゼロは初代のビ・ハン(兄)と二代目のクァイ・リャン(弟)が存在しますが、今作のサブ・ゼロは初代のビ・ハン。
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スコーピオン
シリーズ2大看板のひとりで、炎の力を操る忍者。過去作では初代サブ・ゼロに殺害され、復讐のために蘇ったハンゾウ・ハサシが正体でしたが、今作ではサブ・ゼロであるビ・ハンの弟、クァイ・リャンがスコーピオンを務めています。
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シャン・ツン
大体こいつが悪い。いかにも怪しげな妖術師で、第一作目のボスとして登場して以降、ほとんどの作品で暗躍しているストーリーのキーマンです。
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アワーグラス(時の砂時計)
神よりも上の存在であるタイタンが世界を操るための道具。前作『Mortal Kombat 11』のボス、クロニカは善と悪のバランスを保つことに取り憑かれ、何度も世界をリセットしていました。
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『Mortal Kombat』シリーズの詳細については過去の特集記事をチェック!
映画のようなストーリーモード
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『Mortal Kombat 1』はリブート作品として、色々と設定がリセットされています。「雷の神ライデンは普通の人間の若者に」「敵対していたサブ・ゼロとスコーピオンは兄弟に」といった感じで、出自や関係性が過去作とは異なっています。しかしながら、2011年発売の『Mortal Kombat(Mortal Kombat 9)』と同様に“世界がリセットされた”ということ自体がストーリーに組み込まれているため、実質的に『Mortal Kombat 12』と言える内容です。実際、ゲームデータのファイル名にも「MK12」が使われています。
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今作のストーリーを簡潔に述べると「前作でボスのクロニカを倒して時の番人となったリュウ・カンが世界をリセットし、悪人を無力化してようやく築き上げた平和が何者かの介入によって崩れていく」といったもの。前作の経緯はストーリーモード中にある程度カバーされますが、それでもやはり『Mortal Kombat 1』の物語を楽しむには前作をプレイしていた方が良いですね。今作では長らく出番のなかった3D時代(『Mortal Kombat 4』~『Mortal Kombat: Armageddon』)のキャラクターも登場するので、前作よりさらに過去の作品も知っておくと十二分に楽しめます。
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ストーリーモードのプレイは2011年版『Mortal Kombat』で導入されて以降シリーズの標準となっている、チャプターごとに1人ずつキャラクターを掘り下げていく方式を採用。キャラクター同士のやり取りを描くカットシーンの合間にプレイヤーが操作するバトルシーンが挟まれます。クオリティの高いグラフィックやキャラクターの造形、笑いあり涙ありの感情を揺さぶる展開などにより、長編映画を観ているような気分になれます。今回の出来事の真実が明らかとなる後半はまるでアメコミのようで、筆者としては非常に興奮しました。ただ、人によっては「この手の展開はもういいよ!」と感じてしまう方もいるかも知れません。
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戦い方の幅が広がる新システム「カメオファイター」
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筆者は専門的な格闘ゲームプレイヤーではないので格闘ゲームとしての良し悪しは本記事では深く触れませんが、コマンド表をろくに見ないレバガチャスタイルでもそこそこ技が出せて楽しめます。今作では空中コンボも可能なので、もちろんコマンドをしっかり確認した方が良いでしょう。また、新システム「カメオファイター(KAMEO FIGHTERS)」の登場により戦い方の幅がグンと広がりました。
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カメオファイターは対戦中に呼び出せるアシストキャラで、飛び込んで来てただ攻撃を加えるだけでなく、相手をスタンさせたり、アーマーを作り出したりとカメオファイターによって様々な効果をもたらします。彼らの攻撃はコンボにも組み込めるので、変態的なコンボも生み出されるのではないでしょうか。なお、カメオファイターはその他にもゲーム的にいくつかの利点があります。
“弱め”のキャラクターを出せる
カメオファイターの技は少なく、メインキャラクターと比べて作り込みも少なくて済むため、メインキャラクターにするには若干弱いキャラクターを登場させるのにうってつけです(今作ではストライカーがその枠かも)。ゲストキャラの幅が広がる
『Mortal Kombat』ではフェイタリティやブルタリティといった対戦相手の体を破壊するシステムが特徴ですが、カメオファイターはそうした攻撃を受けません。つまりは無惨に殺されることがないので、イメージ的にそうした姿を見せられないゲストキャラクターを参戦させることができます。規格外のキャラクターが出せる
前段とも若干被りますが、カメオファイターは他キャラクターに投げられたり掴まれたりすることがないためモーションの制限が少なく、今作の四本脚モタローのような“人型”でない規格外のキャラクターの参戦が可能です。
今後のDLCでどれだけカメオファイターが追加されるか分かりませんが、追加キャラクターDLCセット「Kombat Pack」のストアページには5人の追加カメオファイター(トレマー、マバド、ジョニー・ケイジ、フェラ、カメレオン)の名前が記載されています。
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コツコツ遊べるインベージョンモード
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今作で新たに登場したモード「インベージョン」は前作の「クリプト(色々なエリアを回りアイテムをアンロックするモード)」と「タワー・オブ・タイム(条件付きのバトルに挑むチャレンジ的なモード)」を組み合わせたようなモードで、すごろく風のマップを冒険し、様々な条件のバトルに挑戦します。シーズン制を採用しており、約6週間間隔のシーズンごとに異なるテーマのストーリーやマップ、スキンなどが用意されます。シーズン1は「The Spectre」と題した、スコーピオン(ハンゾウ・ハサシ)を中心とした内容となっています。
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本モードではキャラクターには属性がついていたり、レベルアップでステータスが強化されたり、バトル内外で使用できるアイテムが存在したりと、RPGのような側面も持ち合わせています。バトルの条件に合わせて必然的に色々なキャラクターを使うことになるので、普段使わないキャラクターの魅力に気づくかもしれません。ストーリーモードを終えたら是非このモードをプレイしましょう。
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「インベージョン」モードは1人でちまちま遊ぶには良いモードですが、対人戦メインの方にはスキンやギアを集める以外のメリットが薄いかもしれません。
ギアとスキン集めが楽しいカスタマイズ要素
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本作ではキャラクターごとにギア、パレット(スキン+カラーバリエーション)、挑発を設定してカスタマイズすることができます(カメオファイターはパレットのみ)。カスタマイズアイテムの入手方法はいくつかありますが、一部を除きストーリーモードやレベルアップなどプレイを通じて入手可能です。
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これらのギアやスキンを組み合わせて眺めるだけでもワクワクしちゃいます。しかし前作では各キャラ3箇所カスタマイズできたギアが、今作では1箇所のみとなっているのが残念ですね。また、現時点でスキンが各キャラ2~3種類、カメオファイターに至っては1~2種類と少ないのもマイナスポイント。今後のアップデートでの増量が望まれます。
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ついでに若干分かりづらい「ゲーム内通貨」や「レベル」のバリエーションについても簡単にご紹介します。
レベル
プロフィールレベル
『Mortal Kombat 1』をプレイして経験値を獲得できるプレイヤーのレベル。レベルアップでカメオファイターやアナウンサーボイス、ステージバリアントなどをアンロックできる。インベージョンレベル
「インベージョン」モードをプレイして経験値を獲得できる同モード専用のレベル。レベルアップごとにキャラクターステータスを向上させるポイントを入手できる。マスタリーレベル
各キャラクターを使用することで経験値を獲得できる、キャラクターごとに用意されたレベル。レベルアップするとそのキャラクターに関連した様々なアイテムをアンロックできる。
ゲーム内通貨
コイン
最も多く手に入るゲーム内通貨。アイテムをランダムで獲得できるガチャ的な神社で使用できます(1回1000コイン)。シーズナルクレジット
ゲーム内ショップでシーズン限定のアイテムの購入に使用できる通貨(シーズン限定アイテムはインベージョンモードのプレイを通しても入手できます)。クラウン
タリスマンやレリック、消費アイテムなど、インベージョンモード用のアイテム購入に使える通貨。ドラゴンクリスタル
プレミアムアイテムを購入するための課金通貨(500ドラゴンクリスタル=4.99ドル)。マスタリーレベルのレベルアップなどで限定的に獲得することもできます。一部のプレミアムアイテムは前述した神社からもドロップするので、お金をかけたくない人は神社参りをすると良いでしょう。出来の良いスキンはやはり課金専用?
FINISH HIM!
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『Mortal Kombat 1』はナンバリングをリセットしてリブート感を出したり、ピースメイカーやオム二マン、ホームランダーといった人気キャラクターをゲスト(DLCで配信予定)に迎えて新規の取り込みを図りつつ、昔からプレイしているファンも喜ぶ要素を散りばめており、モータリアンの筆者も嬉しい限り。完全新規キャラを出さず、ファンお気に入りの旧作キャラを復活させたのも良かったですね。
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フレンドシップが無かったり、キャラスキンが少なかったりと小さな不満はちらほらあるものの、前作『Mortal Kombat 11』のように今後のアップデートやDLCで解消されていくのではないでしょうか。そしてあくまでも個人的な予想+願望ですが、いずれ拡張ストーリーや『Mortal Kombat: Armageddon』以来の「Kreate a Fighter(キャラクリエイト)」が追加される気がします。
『Mortal Kombat 1』はWindows(Steam, Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ向けに海外で発売中。日本では販売されていないのでハードルは高いですが、各々で入手方法を調べて是非プレイしていただきたい作品です。
SPARKLITY
『Mortal Kombat』シリーズは本当に面白いので是非遊んで欲しいスパ! でも日本語がない上に日本では簡単に購入できないのが残念スパ……
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