■「2画面を活かした手書きマッピング」の名作が、現行機で復活!
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DSと3DSで共通する最も大きな特徴といえば、やはり2画面によるゲーム表現でしょう。しかも下画面はタッチパネルなので、ペンによる直接的な操作も可能です。その機能を活かした代表例といえば、『世界樹の迷宮』シリーズを外すことはできません。
RPG作品の多くが遊びやすくフォローも手厚くしていく中、一瞬の隙だけで全滅もあり得る高難易度な作りと、ダンジョンマップを手書きで埋めていく一手間を敢えて用意した『世界樹の迷宮』シリーズは、潜在的なユーザー層の掘り起こしに成功。その名を高く轟かせました。
DSから始まった本シリーズは、4作目の『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』で3DSに進出。グラフィックの向上や演出のパワーアップなどを遂げつつも、“手応え満点のバトルと手書きマップ”という軸は堅持したまま、ファンからの信頼に応え続けました。
その人気は長く続き、ナンバリングだけでも6作品(『世界樹の迷宮X(クロス)』含む)を重ね、1作目と2作目がそれぞれ3DS向けにリメイクされ、さらにはスピンオフ作品もリリースされるほどでした。
しかし、2018年8月に発売された『世界樹の迷宮X(クロス)』を最後に、メインシリーズの展開は沈黙。復活を希望するユーザーが多い一方で、手書きマッピングを含む2画面構成が現行機向けには難しいのではといった声もあり、期待と諦めの双方がファンの間に漂っていました。
ですが、シリーズの初期の3作品をセットにした『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』が発表され、今年の6月1日にスイッチとSteamに向けて発売を開始(DL版は、各タイトルの個別購入も可能)。現役で遊んだファンから新規ユーザーまで幅広く、本シリーズの魅力をこの令和に楽しんでいます。
気がかりだった“手書きマップ”もしっかり継承されており、あえて一手間を楽しむプレイスタイルはリマスター版でも健在。しかも1・2作目はリメイク版もありますが、3作目のリメイクはなく、オリジナル版のみでした。このリマスターで『III』が遊びやすくなった点も、見逃せない大きなポイントです。
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今回リマスターされた3作品はいずれも、元はDSのタイトル。そこだけ見ると、本記事の趣旨からは外れているかもしれません。しかし今回取り上げた最も大きな理由は、“2画面構成だから生まれた手書きマッピングの要素を、1画面のゲーム機に落とし込めた”という前例が出来たためです。
『世界樹の迷宮』シリーズを現行のゲーム機に登場させる最大級の難点とも言える「画面構成」を、見事に乗り切った『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』。この成功のおかげで、『IV』『V』『X(クロス)』のリマスター化や、完全新作の希望も見えてきたと言えるでしょう。
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『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』発売前に行った配信番組では、「新たな世界樹の迷宮を作るには、まだ時間がかかりそう」との前提こそあったものの、「今回のリマスターを遊んでいただいた声は、世界樹の迷宮の新作にも活かしたいと考えております」といった嬉しいコメントも開発陣から飛び出しました。
今後に向けた展開自体はまだ未定ですが、『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』をきっかけに、新たな動きが訪れる可能性は十分あります。DSと3DSで培われた名シリーズの完全復活を期待させる『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』を遊びつつ、朗報を待ちましょう。
3DS向けのオンラインサービスが順次終了していき、ゲームハードとしての締めくくりを感じさせる今日この頃。ですが、手元の3DSが動く限り、その楽しさが失われることはありません。新作がなくとも既存のタイトルは豊富に揃っていますし、まだまだ多くの3DSソフトが中古市場に流通しています。
そして、今回紹介したタイトルに限らず、これまでいくつもの3DSソフトがスイッチなどの新舞台で引き続き活躍しています。また、『ゲームセンターCX 3丁目の有野』のリマスター版、『ファンタジーライフ』や『イナズマイレブン』のシリーズ最新作など、今後も心沸き立つタイトルの新展開から目が離せません。
遊ぶ人がいる限り、3DSはいつまでも現役です。そして、この名ハードから生まれた作品もまた、新たな輝きを放とうとしています。3DSとそのソフトたちを愛する人々に、幸あれ!