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古今東西ゲームは数あれど、四半世紀に渡って語り継がれるタイトルは間違いなく名作と言って差し支えないものでしょう。当時のタカラ社(現タカラトミー)から1998年に発売されたプレイステーション向けタイトル『新世代ロボット戦記 ブレイブサーガ(以下、ブレサガ)』も、そのひとつです。
本作は人気ロボットアニメ、「勇者シリーズ」を題材にしたシミュレーションRPGです。シリーズ作品の垣根を超えたクロスオーバー展開のストーリーが楽しめるとあって、多くの「勇者シリーズ」ファンを魅了しました。その大きな反響から本作は後にシリーズ化もされており、PSソフト『ブレイブサーガ2』や、GBCソフト『ブレイブサーガ 新章 アスタリア』などの続編も発売されています。
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そんな『ブレサガ』が今年の12月17日、いよいよ発売25周年を迎えます。そこで今回は懐かしい『ブレサガ』の足跡と、2023年現在の「勇者シリーズ」を改めて見ていきたいと思います。
◆勇者シリーズとは?
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本作に参戦する「勇者シリーズ」とは、株式会社バンダイナムコフィルムワークス(旧株式会社サンライズ)が手掛ける一連のロボットアニメの総称です。
初代の「勇者エクスカイザー」から始まり、「太陽の勇者ファイバード」「伝説の勇者ダ・ガーン」「勇者特急マイトガイン」「勇者警察ジェイデッカー」「黄金勇者ゴルドラン」「勇者指令ダグオン」「勇者王ガオガイガー」の全8作品がテレビ放映されました。
もちろんシリーズと一口に言っても各作品に多種多様なストーリーが描かれていますが、基本的には心をもったメカや、主人公を取り巻く人物達との交流で紡がれる「友情や絆」の物語が共通する大きなテーマとして据えられていました。
そこに当時の世相や社会問題を題材にした脚本や演出。さらには現代のAI論争にもつながるような先進的な問題定義や深いSF考証などが盛り込まれ、少年少女のみならず幅広い層に人気を博しました。
基本的に各作品は全50話前後。1年間の放送で完結するTVアニメなので、リアルタイムに視聴していた時期によっては、世代も分かれているのではないでしょうか。筆者は、「勇者特急マイトガイン」や「勇者警察ジェイデッカー」あたりがちょうどリアルタイム世代でした。
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その勇者たちが世代を超えて一同に介するという夢のクロスオーバーが実現したのが、今回25周年を迎えた『ブレサガ』だったのです。本作には、「勇者エクスカイザー」から「勇者指令ダグオン」までの7作品が集結していました。
ここで「あれ?ガオガイガーは?」と思った方は、なかなかにご明察。本作の開発当時、「勇者王ガオガイガー」はまだ企画段階であり、残念ながら参戦は叶わなかったのです。
そのかわり、往年のサンライズロボットアニメファンにはたまらない「装甲騎兵ボトムズ」「太陽の牙ダグラム」「機甲界ガリアン」のといったゲスト作品が参戦し、物語に華を添えていました。
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また、各作品の橋渡し役としてゲーム独自のキャラクターも新たに登場。ゲームオリジナルの勇者「勇者聖戦バーンガーン」は、オープニング映像や合体バンク映像等がサンライズのスタッフによって新たに作られるなど、かなり気合の入った作り込みとなっており、当時のファンからも絶大な人気を誇っています。
◆原作再現とオリジナルストーリー
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『ブレサガ』はゲームパートとドラマパートに大きく別れています。
ゲーム部分はいわゆるシミュレーションRPGと呼ばれるもので、敵味方のターン毎に自軍のユニットを動かして敵を倒し、マップをクリアしていくというオーソドックスな形式。一方のドラマパートはキャラクターの会話ベースでストーリーが進行していくアドベンチャーゲーム形式で、選択肢に依る会話の分岐なども盛り込まれています。
1ステージの構成はAパート、アイキャッチ、BパートといったTVアニメ1話分ような演出がなされており、プレイヤーは主人公である芹沢瞬兵(せりざわ・しゅんぺい)の視点で物語を追体験していくことになります。
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基本的なストーリーの主たるものは、勇者シリーズ各作品の人気回を中心とした原作再現イベント。参戦作品の中には、1話からまるまる再現しているパターンや、原作終了後を描くものなどもあり、バラエティに富んだ展開が楽しめました。
余談ですが、サブイベントの中にはコアなネタも用意されており、アニメ放映当時発売されていたドラマCDに収録されたネタを再現するものをはじめ、かなりマニアックな内容となっていました。個人的には、バトルボンバーの漫才ネタがクロスオーバーで収録されていたことがかなり嬉しかったですね。
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閑話休題。このような原作を再現するストーリーに加え、オリジナル作品である「勇者聖戦バーンガーン」の物語が軸となって進行していくことで、他作品同士をつなぐクロスオーバーが実現していました。ゲーム進行によって展開する、原作とは違うIFの物語や、作品の垣根を超えたロボット同士のコラボイベントなど、勇者シリーズファンが夢見たあれやこれやが詰まった作品となっていたのです。
◆続編の製作とシリーズ人気の陰り
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こうした『ブレサガ』の影響もあって勇者シリーズファンの盛り上がりは最高潮を迎えたのですが、TV放送としての勇者シリーズは1997年の「勇者王ガオガイガー」で終了。
そのガオガイガーが晴れて参戦を果たした続編『ブレイブサーガ2』や、新章となる『アスタリア』なども展開されていきましたが、本筋となるアニメ作品はOVA「勇者王ガオガイガーFINAL」を最後に制作はされておらず、徐々に人気は下火になっていきます。
その後もPS2ソフト『新世紀勇者大戦』の発売やファン向けのグッズ・関連ゲームタイトルが展開されるたび一時的に話題に火がつくものの、時代を経るごとに徐々にメディアへの露出は少なくなっていきました。
一ファンである筆者としても「やがてはアニメマニアにより語り継がれる、名作シリーズのひとつ程度に埋もれるのではないか」とさえ考えていました。
そうして月日が流れたころ。勇者シリーズを取り巻く雰囲気が変わり始めたのは2010年代中頃でしょうか。シリーズ各作品のBlu-ray BOXやアニバーサリー記念CD、関連商品などのグッズが相次いでリリースされ始め、微かに活気が戻ってきたのです。
そしてゲームシーンでとりわけ決定的だったのは2017年に発売された『スーパーロボット大戦V』への「勇者特急マイトガイン」参戦でした。
それまで『スパロボ』シリーズでは「ガオガイガー」こそ人気を得ていたものの、他の勇者シリーズ作品は全く注目されることがありませんでした。ロボットアニメ同士による夢のクロスオーバーの場とはいえ限界があるのか……とファンの間では半ば諦めムードすら立ち込めていたようですが、そんな杞憂は今やどこ吹く風。『スパロボV』に続いての『スパロボX』への連続参戦のほか、スマホ向け『スパロボ X-Ω』や、『スパロボT』では「ガオガイガー」との同時参戦までもが実現していました。
『ブレイブサーガ』シリーズ以外で勇者シリーズの本格クロスオーバーが見れるなんて何年ぶりのことだったでしょう。続くコンシューマー向け最新作の『スパロボ 30』では「勇者警察ジェイデッカー」が参戦するなど、今や『スパロボ』新規作品が発表される毎に勇者シリーズの話題が事欠かないような盛り上がりを見せています。こうした今につながる流れも、元をたどれば『ブレサガ』に勇気づけられたファン達が希望の炎を絶やさなかったことに起因するのではないでしょうか。
◆勇者シリーズの現在
そんな勇者シリーズは、2020年代に入ってからも大型イベント「超勇者展」の開催や、関連商品の相次ぐ発売が続き、展開はますますヒートアップ。放送当時の食玩の復刻や、新たな変形合体トイの発売が相次ぎ、プラモデルでは各社からメインロボ以外にもサブの勇者ロボや敵ロボが立体化されるなど、目が回るようなペースでグッズがリリースされました。
そして今年の夏、極めつけとなる展開が始まりファンを震撼させました。「勇者宇宙ソーグレーダー」の登場です。
ソーグレーダーはシリーズ生誕30周年記念作品にして、公式的にシリーズの正統後継作品として位置づけられている新たな勇者。本作を機に迎え入れられた実力派やこれまでの勇者シリーズ作品に携わった歴代スタッフなど豪華制作陣が集められており、現在WEBコミックが連載中です。
ソーグレーダー発表当時、特に話題になったのはそのキービジュアルでした。ここには、過去作に登場した1作目の「エクスカイザー」から8作目「ガオガイガー」の各勇者ロボに加え、企画段階で実際には制作されることのなかった幻の9作目「フォトグライザー」、さらに『ブレイブサーガ』のゲームオリジナル勇者だった「バーンガーン」の姿もあったのです。
物語の動向次第では新たなクロスオーバーも期待できるのでは、とファンの間では今まさに大きく盛り上がっている真っ最中。今後のストーリー展開に目が離せません。……そう、勇者シリーズは今後まだまだ展開していきます。現在進行形で、勇者たちの物語は続いていくのです。
◆ハヤバーンから応援コメントが到着!
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今回インサイドでは『ブレサガ』の開発に携わった早坂憲洋氏にインタビューを実施。ゲーム開発当時の思い出や現在の勇者シリーズの展開について、「ハヤバーン」からのコメントをお届けします!
――早坂様のゲーム開発時のご役職と、現在の活動についてお伺いできますか。
早坂氏:開発時の『ブレサガ』スタッフロールでは「ゲームプロデューサー」と『勇者聖戦バーンガーン』の「企画・原案」でした。現在は日本コロムビア株式会社に在籍しています。個人としては「開発(応援)勇者ハヤバーン」として、SNSや勇者シリーズのイベント等で勇者シリーズを応援をしています!
――開発中の印象深い出来事があれば教えてください。
早坂氏:いろいろあるのですが、ブレサガは戦闘シーンだけでなく、シナリオ中でもキャラの音声を、一人ずつではなく、そのシーンの声優さんが全員スタジオに入って「合わせて」収録していたので、収録スタジオに歴代勇者シリーズのキャストが集結する「声優博覧会」みたいになっていたのが、忘れられません。TVシリーズで音響監督をされていた千葉耕市さんの元に、全勇者キャストが同窓会をしに集結!(笑)みたいな収録でした。
――ゲーム発売後、当時のファンからの反響はいかがでしたか?
早坂氏:発売当時よりもゲームの発表時から反響はものすごかったです。なにせ、勇者シリーズのTV放送が終了した翌月に「アニメ誌で初出」でしたので……。「ゲームオリジナル勇者」=「勇者シリーズ新作!?」という形で発表したので、ゲームファンだけではなく「PSなんて持ってないわ!」というアニメファンからも反響は大きかったです。でも、その結果ゲームオリジナルの9代目勇者「勇者聖戦バーンガーン」を生み出し、ゲームという「自分でストーリーを進めていく」というTVアニメにはない「能動的」なメディアでの展開だったからこそ、25年たった今でも、皆さんに愛していただけているのかな?と思っています。
――現在の「勇者シリーズ」展開について、お話頂けることがあれば教えてください。
早坂氏:勇者シリーズ30周年を経て、新たな展開がたくさん起こっています。様々なメーカーさんから勇者シリーズの商品が企画・発売されたり、今年はWEBコミックで完全新作の「勇者宇宙ソーグレーダー」も始まりました。25年前には想像できなかったことが起こってます!まだまだ、楽しめますよ!勇者シリーズは!
――最後に本作や「勇者シリーズ」を愛するファンに向けて、コメントをお願いします。
早坂氏:タカラにいた時から、オイラはずっと思っているんですが「勇者シリーズは次世代の子どもに伝えるべきロボットアニメ」です!25年前のPSソフト『ブレイブサーガ』を好きで言い続けてくれる方はもちろん、「勇者エクスカイザー」からずっと「勇者シリーズ」を愛してくださっている方も!時代がやっと「勇者シリーズ」の良さに気が付き始めました!(遅いわ!)これからもずっと、みんなで勇者シリーズを盛り上げていきましょう!!
――ありがとうございました!
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