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『アマガミ』は“裏表のある”素敵な名作だ!15周年目前にして、今なお愛される恋愛ゲームの魅力を振り返る

『アマガミ』は15年経った今でも思い返したくなる名作です。はい、復唱っ!

ゲーム 特集

皆さんが冬と聞いて思い出すゲームは何でしょうか。

冬を題材にした作品は数ありますが、人肌恋しいと言われる時期からか恋愛シミュレーションゲームの舞台になりやすい季節でもあります。

今回はそんな冬を舞台にした作品の中から、来年3月で15周年を迎える『アマガミ』をピックアップ。「雪降る夜に、届けたい想いがあります」のキャッチコピーで発売された、冬にピッタリな名作の思い出を振り返ります。

◆甘くもあり、苦くもある名作『アマガミ』

『アマガミ』は2009年3月19日にエンターブレインより発売されたPS2向け恋愛シミュレーションゲームです。輝日東(きびと)高校2年生の主人公が学校生活での出会いやイベントを経験しながら、1か月後に迫ったクリスマスを女の子と過ごせるよう奮闘する、青春恋愛ストーリーが描かれます。

後にPSPとPS Vitaに移植された本作は、漫画やラジオなどのメディアミックスも盛んで、2010年からはTVアニメ『アマガミSS』『アマガミSS+ plus』が放送されました。このアニメ版で本作を知ったという方も多いのではないでしょうか。

移植版の『エビコレ+ アマガミ』には麻雀ミニゲームやギャラリー機能も搭載

筆者はと言えば男子校でグレーな青春を送っていた時代に本作と出会い、勉強もそっちのけで最高のクリスマスを過ごすため全力を注いだのも良い思い出。名作に出会えた感動と自分の現状に涙したもので、いつか自分がラーメンを食べていたら唐揚げを投入してくれる先輩が現れる時を待ち焦がれながら日々を過ごしています。

そんな“懐かしの恋愛シミュレーションゲーム群”に位置づけられる『アマガミ』ですが、他の作品ではなかなか味わえない魅力が詰まった作品として今でも非常に根強い人気を誇っているのです。その理由を3つのポイントで紹介いたしましょう!

■1.「会話」で深まる関係性が攻略する楽しさに

ヒロインとの仲を深めていく“ギャルゲー”では、シナリオやキャラクター性が大きなポイントです。しかし本作や、同じくエンターブレイン(旧アスキー)から発売された『トゥルーラブストーリー』『キミキス』では、「攻略法を考える」シミュレーションゲームの要素も魅力のひとつ。

本作では1日が4つの時間帯で設定されており、時間ごとに行動をマップ上から選択していく方式が特徴です。特に六角形の「ヘクスマップ」が埋まるようにイベントが進行していく仕組みは一見複雑そうに見えるかもしれませんが、流れを理解すれば非常に分かりやすいデザインになっています。

「このイベントを進めるとここに影響があるぞ」というのも可視化

ですが、『アマガミ』のヒロイン達は単にイベントを読み進めただけで攻略できるほど甘くはありません。彼女たちと仲を深めるために必要となるのが、要所要所で発生する「会話モード」です。文字通り空き時間にヒロインとおしゃべりをするわけですが、9つのテーマから相手が興味のありそうな話題を選んで楽しく盛り上がり、相手をハイテンションへと導かねばなりません。

話題が空振りしてしまったり、相手からイマイチな反応が返ってきたりするとヒロインのテンションが下がってしまいますが、上手くハイテンションな状態を維持し「アタック」を成功させれば、「一緒に下校」といった楽しいイベントに発展します。何気ない会話がきっかけで意外な一面が見えたり関係が深まったりと、話題を選ぶ苦労があってこそヒロインの魅力が光るシステムになっています。

ちなみに「エッチ」な話題を振ることも可能ではありますが、当然ながら「世間話」や「勉強」に比べて相手が反応してくれる可能性は高くありません。しかし、それが分かっていても試したくなるのが人間の性というもの。プレイヤーの煩悩を乗せて爆音とともに飛んでいくエッチロケットは成功しても失敗しても面白く、これに引っ張られて時間を浪費したプレイヤーは数知れません。

エッチな話題でしか見られないリアクションが見たいのです

■2.等身大なようで個性的なヒロインをディープに描写するマルチエンディング

もちろん恋愛シミュレーションの華である、ヒロインの魅力も忘れてはいけません。

彼女たちは全員同じ高校に通う生徒であり、「憧れの先輩」から「ちょっと生意気な後輩」まで、さまざまな立場で主人公との関係性を築きます。全員黒髪か茶髪と「等身大」なキャラクターデザインが特徴的ですが、内面も含めるとそれぞれの個性が見事に描き分けられており、ひとりはツボにハマるヒロインがいるはず! そう感じさせるほどの幅広さを誇ります。

仲が深まっていくことでみせる意外な一面や、ヒロインの変化する内面などの描写も絶妙で、外見ではイメージがし難いかも知れませんが、実はかなり「曲者揃い」なヒロインたちと言っても過言ではありません。

未プレイの方にもぜひゲームを楽しんでいただきたいので詳細は控えますが、「綾辻さんは裏表のない素敵な人です」や「ラブリー先輩」などの名フレーズを生み出していることからも察していただけるのではないでしょうか。

パッケージにも描かれている「裏表のない素敵なヒロイン」である絢辻詞さん

そしてゲームでそんなヒロインの魅力を思う存分楽しめる仕組みが、複数の結末へと分岐する「マルチエンディング」システムです。ヒロインと恋仲になる「スキ」ルートだけでも「BEST」や「GOOD」など幾つかの分岐が存在します。また、恋仲にならずともちょっと“良い感じ”な「ナカヨシ」ルートや、選択によってヒロインと「ソエン(疎遠)」になることもあれば、誠実さを欠く振る舞いで関係性が悪化してしまうことも……。

実は、本作は前述の行動マップや会話イベントを上手く管理すれば、複数のキャラクターとのフラグを維持したままの進行も可能で、最終的に心を決めるギリギリまで八方美人を貫くスタイルも楽しめます。

もちろん“BEST”な結末は、数日胸焼けするくらいめちゃくちゃハッピーなのでご安心いただきたいのですが、上手くいかない関係性の描写も『アマガミ』の醍醐味。ギャルゲーにおける「甘々なエンディングを楽しんだ後に、周回プレイで他のヒロインを攻略する後ろめたい気持ち」が本作ではより刺激されます。

好奇心で「仲が悪くなったらどんな反応するんだろう?」とバッドエンディングを覗いてみると大きなダメージを受けることになりますが、さまざまな角度からヒロインの内面が描写されているのも、コアな人気に繋がっている要因ではないでしょうか。

■3.プレイヤーの妄想を超えてくる主人公が生み出すマニアックさ

そして魅力あふれる『アマガミ』の世界で、プレイヤーの分身として高めてくれる主人公の存在も忘れてはいけません。

ゲーム開始直後、クリスマスの苦い思い出から自宅の押入に引きこもるシーンが続き、思わず「こいつ大丈夫か?」と心配になってしまいますが、本編が始まれば積極果敢にヒロインへとアタックを試みる頼もしい存在に。妹想いの性格や誠実なコミュニケーションも好感が持てます。

特筆すべきは、彼が非常にマニアックかつ情熱的な下心の持ち主である点。作中のいわゆる“サービスシーン”では、プレイヤーの想像を超える言動で思いもよらない展開を生み出してくれることも。

どういう経緯でこうなったのかはご自分の目で確かめていただきたい

その雄姿にリスペクトを込めてデフォルトネームの「橘 純一」から「橘さん」との愛称でファンの間から親しまれています。

◆令和にも供給が続く『アマガミ』の15周年をお祝いしよう!

ここまで紹介した以外にも主人公妹の美也ちゃんが可愛いとかサブキャラが良い味を出しているとか、いろいろと語りたい要素はあるのですが、とにかくこの「攻略の大変さ」や「バッドエンドの可能性」というワンポイントが、王道に描かれるヒロインの魅力やマニアックなサービスシーンの喜びを増幅させてくれているのではないかと、筆者は分析しています。

そんな『アマガミ』は恋愛シミュレーションゲームにおける名作として10年以上君臨し続けており、2019年にはキャラクターデザインの高山箕犀先生の個展と『アマガミ』10周年記念を兼ね、作中に登場する学園祭の名前を冠した展覧会「創設祭」が開催。コンテンツに注がれるファンの情熱は、未だ衰えていません。

クリスマスにはアニメ版の一挙放送も!

そんなファンの熱意が届いたのか、2022年5月には突如としてエンディング後の物語を描いた「ASMRボイスドラマ」シリーズが発売。同年12月にもアニメ版の聖地である千葉県銚子市にて、長らく公式ラジオ番組のパーソナリティーを務めていた声優の新谷良子さんと阿澄佳奈さんによるトークショーが開催されるなど、発売から15年を迎えようとしている作品とは思えぬほど公式からの“供給”がありました。ファンとして、本当にありがたい限りです。

これだけ作品の魅力と人気について紹介したのですから、ぜひとも未プレイの方にも遊んでいただきたい!……ところなのですが、現行ハードへの移植は行われておらず、プレイにはPS2やPSP、PS Vitaが必要と、遊ぶハードルが高くなってしまっているのが現状です。

現在は入手困難なファンディスク「アマガミ ちょっとおまけ劇場」など、本作をまとめて遊べる復刻版とかあったらすごく良いと思うんですけど……2024年はちょうど15周年でタイミングもすごく良いと思うんですけど……。

雑誌付録としてリリースされたファンディスク。DL版が現在も販売中

なんて移植への希望も述べつつも、懐かしのハードを引っ張り出してきて遊んでも十分に楽しめる、令和に通じる名作であることは間違いありません。以前から気になっていたという方から、この記事を読んで興味を持ったという方まで、ぜひこの冬は『アマガミ』をプレイして、来年の15周年を一緒にお祝いできれば幸いでございます。

《ハル飯田》

よく遊び、よく喋る関西人 ハル飯田

1993年、大阪府生まれ。一旦は地元で公務員になったものの、ゲームが好きすぎて気付いたらフリーライターに。他メディアではeスポーツ選手や競技シーンの魅力を発信することに注力したり大会でキャスターを務めたりもするのだが、インサイド&ゲムスパではもっぱら好きなゲームについて語ることで安らかな気持ちになっている。

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