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AppleがEU圏でアプリのサイドローディングを許可するも大手アプリは反発―Xboxサラ・ボンド氏「間違った方向に進んでいる」

新条件では大手アプリに手数料が発生することに。「DMAの理念をおざなりに、法の網をくぐろうとしているにすぎない」と批判的なコメントが噴出しています。

ゲーム ビジネス

2024年1月26日(米国時間)、AppleはEU圏のDMA(Digital Markets Act/デジタル市場法)への対応として、iOS、Safari、App Storeの仕様変更を発表しました。しかし、大手アプリ企業からは不満が噴出しています。

DMAはEU市場において一部の大手IT企業が支配的な地位を確立してしまうことを防ぐために制定された法で、欧州委員会はゲートキーパー(支配的になりうる企業)としてGoogleの持ち株会社であるAlphabet、Amazon、Apple、ByteDance、Meta、マイクロソフトの名を挙げていました。今回のAppleの発表はDMAを順守するためのものです。

App Storeは2024年3月配信予定のiOS 17.4から、EU圏内においてサイドローディング(iOS端末における、App Store以外のストアでのiOSアプリダウンロード機能)に対応し、開発者がサイドローディングを行えるようにするための新たなAPIやツールを配布します。

また、ユーザーはApp Store以外のアプリストアを常に使用するデフォルトのストアとして設定することができるようになります。

Appleは、サイドローディングの実装は「Appleユーザーとその端末にセキュリティ面での脅威をもたらしうる」との懸念をかねてから表明しており、ユーザー保護の観点から「App Store以外のストアの配信アプリもAppleによる自動チェックと人力による審査を通過しNotarization(公証)を受ける必要がある」こと、「ユーザーがアプリをダウンロードする際に、開発者の情報、アプリのスクリーンショットなど、必要な情報がひと目で分かるようにする」こと、「アプリがユーザーの端末にインストールされた後にマルウェアが含まれていることが発覚した場合は、該当のiOSアプリを起動不能にする」ことなどを挙げています。

サイドローディングを選ぶと100万回以上の初回インストールごとに追加支払いが発生

今回の発表により、アプリ開発者はEU圏内におけるAppleの端末でアプリを配信する際、以下3つの中からいずれか一つの選択肢を選ぶ必要があります。

1.今まで通りにApp Storeのみで配信を続ける

2.App Storeのみで配信を続けるが、ユーザーに対しApp Store以外の新たな決済方法をオプションとして提示する

3.App Store以外のストアで、App Storeに依らない決済方法を用いたアプリを配信する

そして、上記「2」か「3」を選択する場合に適用される新要件として、新たな手数料「Core Technology Fee」が発生します。

Core Technology Feeは「App Store、および代替アプリ(他のストア)で配布されるiOSアプリは年間100万回以上の初回インストールごとに0.50ユーロの支払いが発生する」もので、Appleはこの手数料に関して「Appleによる安全なモバイルプラットフォームの維持と、それを世界中のユーザーと共有するために発生するツールや技術などのコストが反映されたもの」であるとしています。

Spotify、Epic Games、マイクロソフトなどから批判が噴出

Appleのアナウンスに対し、大手企業や業界のリーダーたちから批判的な声が挙がっています。Spotifyは公式サイトにて「Appleはこれまでにも横柄なふるまいをしてきたが、今回の施策における傲慢さは新たなレベルに達している」と痛烈に批判

これまでAppleが要求し続けてきた高額な手数料がDMAの理念によって否定されたことで、法律順守を装って新たな税金を生み出したに過ぎない、と続けました。

特に、アプリの有料/無料を問わず課せられるCore Technology Feeについて「ユーザーがアプリをダウンロードし、一度も使わず削除し忘れるようなことがあっても開発者はこの税を支払わなければならない。その費用はどこから出すのか」と指摘。さらに、Appleは常にルールを変更するため、0.50ユーロという額がいつ引き上げられるとも分からないとしました。

また、EU圏におけるAppleのインストールベースは1億人規模であることから、数多のユーザーをすでに抱えるSpotifyは顧客獲得コストが10倍というレベルにまで急増してしまうかもしれないと危惧しています。

ゲーム業界からは、Epic Gamesの創設者兼CEOであるTim Sweeney(ティム・スウィーニー)氏とマイクロソフトのXbox担当社長であるSarah Bond(サラ・ボンド)氏も、自身のXアカウントで否定的な声明を発しました。

Sweeney氏は「Appleは、DMAで違法とされた既存のApp Store規約と、新たな税を課すだけの反競争的なスキームのどちらかを受け入れるよう強制しているにすぎない」とコメント。今回のAppleによる“ホラーショー”は、精査すればまだまだゴミのようなものが出てくるだろう、と語っています。

ボンド氏は「Appleが新たに立ち上げた方針は間違った方向へ進む第一歩だ。彼らが今回の変更計画へのフィードバックに耳を傾け、すべての人にとってより望ましい未来に向けて努力してくれることを願う」とコメントしました。

《蚩尤》
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