人生にゲームをプラスするメディア

コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】

モバイルゲームを中心に手掛けたSHIFT UPは、いかにして本作を手掛けたのか?

ゲーム PS5
コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】
  • コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】
  • コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】
  • コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】
  • コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】
  • コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】
  • コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】
  • コンソール向けゲームが少ない韓国市場からの挑戦―『Stellar Blade』キム・ヒョンテ氏にこだわりから開発時の苦労までいろいろ訊いた【インタビュー】

4月26日の発売が迫る『Stellar Blade』。これまで『デスティニーチャイルド』『勝利の女神:NIKKE』といったモバイル向け作品を手掛けてきたSHIFT UPが初めて開発するコンソール向けアクションゲームであり、国内外のファンから注目を集めています。

この度Game*Sparkでは、ディレクターでありSHIFT UPのCEOでもあるキム・ヒョンテ氏に合同インタビューを実施。初めてのコンソール向けゲームを作るにあたっての苦労や、こだわりのさまざまな描写についてお訊きしました。

SHIFT UP CEO 兼『Stellar Blade』ディレクター キム・ヒョンテ

コンソール向けゲームがまだまだ少ない韓国市場からの挑戦

――本作の企画はどのようにして立ち上がったのでしょうか。

キム・ヒョンテ(以下、キム)皆様ご存知かもしれませんが、韓国のゲーム業界ではあまりコンソール向けゲームが作られていません。どちらかというとモバイル市場向けのゲームが多いのですが、このような状況が続くと日本や世界のユーザーの方々に会えるチャンスを逃してしまうのではないかと感じていました。また、モバイルはハードウェア的な限界があるとも考えています。

AAA級のハイクオリティなゲームを作らないと、今後時代が変わっていく中で取り残されてしまうのではないかという危機感があり、挑戦することにしたのです。もちろんモバイル市場自体はとても素晴らしく、大切にしているのですが、その1本の道だけを歩むのは会社としてリスクがあるのではないかと考えた次第です。

――ということは、企画のはじめからコンソール向けだったという認識で良いのでしょうか。

キムそうですね。最近はPCにコントローラーを繋いで遊ぶことも多いので、「コントローラーで操作するゲーム」というところは最初から決まっていました。

――確かにおっしゃられる通り、韓国のゲームはモバイル向け作品やMMORPGが根強い印象です。しかしこの数年で、コンソールやPC向けの作品が根強くなってきていて、小、中規模なものからAAAに引けを取らないものまで存在感を見せていると思います。これについて、どう感じていますか。

キム韓国のゲーム市場では、MMORPGは飽和状態になっていて、非常に伸び悩んでいます。その突破口として例えば日本市場に目を向けたり、コンソール向けにゲームを作ったりといった動きが出ていて、私としてはポジティブな変化だと感じています。

我々はそういった時代がより早く到来すると予想しており、その準備を進めた結果『Stellar Blade』を皆様にお届けできることがとても嬉しいです。

――キム・ヒョンテさんから見て、日本ゲーム市場と韓国ゲーム市場の違いや親和性はどこにあるとお考えですか。

キム難しい質問ですね(笑)。韓国市場の面白いところは、欧米市場とアジア市場のそれぞれの特徴にプラスして、MMORPGが売れているという韓国ならではの要素も持っています。

月間アクティブユーザーベースで見ると、欧米や日本を含むアジアのゲームが殆どを占めていて、そこに最近は中国のゲームの勢いが増してきているという背景があります。ただ、売上ベースで見ると重課金ユーザーに訴求する『リネージュ』ライクなMMORPGが上位を占めていますね。

日本市場は多様なジャンルが出てきている一方で、海外ゲームが参入しやすい構造ではありません。ユーザーの皆様に届くまでのハードルが非常に高いと感じます。

しかし、そのハードルを一度越えてしまえば、日本ユーザーの方々はずっと変わらない愛を注いでくださいます。そういったユーザーの心に届き、受け入れてもらうことが非常に重要な市場なのではないかと考えています。

――本作が『Project EVE』として初発表された際は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がパブリッシュすることは明かされていなかったと記憶しています。SIEとパートナーを組んだきっかけは何だったのでしょうか。

キム実は私はずっと前からPlayStationのファンで、「PS用のゲームを作りたい」ということがゲームクリエイターとしてひとつの目標でした。そんな中、ある日吉田修平さん(SIE インディーズイニシアチブ代表)が弊社にお越しになり、ゲームをプレイしていただいたのがこの関係のきっかけのひとつです。

吉田さんは熱心にゲームをプレイしてくださいましたし、良いフィードバックもたくさんいただきました。そのご縁でいろいろお話が進み、より多くの方に手に取ってもらうにはSIEがベストパートナーであると思うようになったのです。

――2019年の発表から発売まで、結構時間がかかっていると思うのですが、苦労された点などがあればお聞かせください。

キムクオリティの高いグラフィックのキャラを作るのはもちろん、そのキャラたちと会話をして物語が流れ、その状況に自然につながるようにするカットシーンやドラマの表現部分が我々にとってはチャレンジでした。そもそも、コンソールでアクションゲームを作るのは今回が初めてでしたから。

フェイシャルモーションや、リップシンクを合わせることにもこだわっており、英語・日本語・韓国語の3言語においては各国ごとに馴染むように調整しています。今後、長期的に音声をサポートしている言語すべてにリップシンクを対応させる予定です。

――そもそも、『Stellar Blade』というタイトルはどういった意味が込められているのでしょうか。

キム「Stellar」はラテン語で“星”という意味です。「Blade」は、文字通り“剣”ですね。主人公・イヴは宇宙で生まれ、訓練を重ねて地球奪還のために降り立ちました。つまり、「星から降りてきた剣」という意味を込めています。

コンボで圧倒するゲームにはしたくなかった

――本作はアクションゲームですが、もともとこのジャンルでの開発を決めていたのでしょうか。それとも、別ジャンルを検討する中でアクションゲームに決まっていったのでしょうか。

キム私がいちばん好きで、いちばん詳しいジャンルはアクションアドベンチャーです。ゲームは進化するにつれジャンルの境界線が曖昧になっていくものだと思っています。

1つのワールドの中で探検して、戦って、アイテムを獲得して、キャラ同士がコミュニケーションをして……といった内容をすべて盛り込むことができる最適な場はアクションアドベンチャーであると考えた結果、このジャンルに決まりました。

――アクションアドベンチャーを作るにあたって、特にアクション部分で気を使ったことはありますか。

キム最近のアクションゲームはハックアンドスラッシュやソウルライクが人気ですが、これらのジャンルの良いところを融合したいと考えました。たとえば、敵に一方的に攻撃を浴びせて、自分が繰り出したコンボを見て満足するよりも、敵の動きをしっかり読んで、バトルの流れを見極める力を要求するような作品にしたかったのです。

ただ、中盤から後半にかけては敵の攻撃を遮断して、自分からガンガン攻めるスタイルのバトルも楽しめるようになるでしょう。アクション好きの人だけに刺さるゲームではなく、ジャンルの縛りが少ないどなたでも楽しく遊べる作品にしたいと考えました。

――体験版をプレイさせていただいたのですが、本作におけるパリィやジャスト回避は発動までに少しだけ隙があるように感じました。ボタンを押した瞬間にパリィ判定になるゲームも少なくないと思うのですが、このような調整にした理由はありますか。

キム本作ではボタンを押してから、スキル発動のモーションが見えるまで、0.05秒くらいのタイムラグがあり、これ以上は縮められません。いきなりパリィのモーションが繰り出されるのは本作のスタイルに合わないと思ってこのような調整をしました。

ただ実は、内部的にはボタンを押した瞬間に発動はされており、モーションが後からついてくるような形になっています。それに加えて機器や環境によって差があるかもしれません。もしこれが問題になるのであれば、よりよく改善していくこともできると考えています。

――戦闘中から移動時、カットシーンにいたるまで、DualSenseのハプティックフィードバックによる演出がかなり強く効いていました。このあたりのこだわりがあれば教えて下さい。

キムDualSenseはとにかくスゴいですね。ゲームを開発しながら、そのスゴさに感動するところがたくさんありました。なので、ハプティックフィードバックはゲームの多くの部分に取り入れるために工夫を重ねました。

例えば、音楽との合わせ方が重要になってくるのですが、サウンドチームやエフェクトチームと協力しつつ、SIEの皆様にサポートしていただきながら頑張りました。

ほかにも、ゲーム中盤あたりから遠距離武器を使うとアダプティブトリガーが活きてくる場面があったり、内蔵スピーカーやタッチパッドを活用する場面があったりしているので、ぜひDualSenseで楽しんでいただきたいです。

モンスターのデザインはキャラクター以上にこだわった

――プレイ中、イヴの長いポニーテールに目が行きます。長くした理由は何なのでしょうか?また、設定で短めを選べるようにした理由は何ですか?

キム長いポニーテールにした理由は、キャラに追随する美しい曲線を描きたかったからです。しかし、イヴの衣装を隠してしまうこともあったため、短めを選択できるようにしました。開発スタッフからは不安の声が上がっていたのですが、いざ体験版をリリースしてみたら喜んでくれる人がいたようでよかったです!

――キム・ヒョンテさんはどちらが好みなのでしょうか?

キムうーん……両方ですね(笑)。

――イヴをはじめとしたキャラクターのセクシーさ・かっこよさも魅力的ですが、それに負けないくらい敵キャラクターのグロテスクなデザインにもフェティッシュを感じました。こちらについてのこだわりがあれば教えてください。

キムその部分に気づいていただきありがとうございます。モンスターは、実はキャラクター以上にこだわった点です。主人公がいちばん密接しながら戦う相手でもあり、ゲーム画面においてモンスターが占める割合は大きいので、デザインやイメージ、設定については非常にこだわりました。

造形するときも、一般的なモデリングではなく粘土模型のようなものを3Dスキャンする形で制作しているので、自然な質感のあるモンスターに仕上がっています。じっくり観察いただくと、いろいろな魅力を発見できるでしょう。

そして、もちろん多彩な技やフィードバックもあるのでバトルもとても楽しいものですし、なぜこのような見た目になったのかという点も、プレイするとわかるように作りました。

――イヴたちが乗っている宇宙船などのデザインが個性的だと感じたのですが、全体的なデザインのコンセプトはあるのでしょうか。

キムイヴたち自身の衣装や、宇宙船・ドロップポッドは、地球の文化からかけ離れたような感覚を覚えさせるようなデザインにしました。宇宙船の場合はクラシックなバロック様式をモチーフにしていて、クラシックで古典的なデザインを意図しています。宇宙コロニーと滅亡した地球は長い間断絶した中で、別々に発展していたことを表現するためです。

ワールドのデザインは、新しいものや奇抜なものを取り入れるよりも、80年代から90年代の映画やアニメで描写されていたポストアポカリプスなデザインを現代の技術で再解釈したほうが魅力的になるのではないかと考えました。当時を知っている人は懐かしい思い出が蘇ってくるでしょうし、若い方は斬新なものとして感じられるのではないかと思います。

――ボーカルが入っているBGMが非常に心地よかったです。サウンドクリエイターの方にはどのような要望を出したのでしょうか。

キム音楽部分はとても難しく、悩まされたところのひとつです。ビジュアルに対して音楽はコンセプトを決めるのが難しい部分でした。韓国はあまりSFのゲームが作られていないので、BGMの方向性を決めるときは非常に悩みました。

私が出したオーダーは、ミディアムテンポの曲をたくさんいれてほしいというもので、加えてレベルの高いセッションやボーカルを盛り込んだ高級感のあるものにしてほしいとお願いしました。

――ボーカル曲の言語は英語なのか、韓国語なのか、それとも無言語なのか、どのようになっていますか。

キムボーカル曲は韓国語や英語が中心ですが、ラテン語などその他地域の言語を取り入れたものや、国の垣根を越えた架空の言語を使った曲もあります。ゲーム全体を通して、100曲以上のBGMが収録されているので、ぜひゲームプレイ中にも耳を傾けてみてください。

――体験版について、ユーザーの反響はいかがでしたか。

キムまだすべての反応はチェックできてませんが、幸いなことに面白いという声が多く、特にバトルについて高く評価していただき感謝しています。若干修正が必要な部分の指摘も、関心を持ってチェックしました。

そして、皆様ご存知かと思いますが、イヴの見た目についても関心が集まっていることも知っています。イヴの見た目に関しては、もう完全に私の好みによるものです。それについてのポジティブな反応も、ネガティブな反応もすべての原因は私にあります(笑)。

ゲームはエンターテインメントであり、ユーザーの好みで選択するものだと思っているので、もし好きだと感じていただけたなら、ぜひプレイしてもらいたいですね。

――本作を楽しくプレイするためのコツやアドバイスがあったら教えてください。

キムゲーム序盤では、ジャストパリィやジャスト回避に慣れることが重要です。ジャストパリィをうまくこなすと、ただ攻撃を防ぐことにとどまらず、そこから繋がる攻撃やスキルがあるので、ぜひ試してみてください。

中盤に差し掛かると、主人公の能力を底上げしてくれるギアやエグゾスパインという装備を入手でき、ハイスピードなハックアンドスラッシュタイプのようなバトルスタイルなど、自分好みにアレンジできるようになります。加えて、スキルツリーを見ればスキルの活用方法も確認できます。

アクションが苦手な人は、難易度設定で「ストーリーモード」を選んでいただくと、ボタンを押すタイミングを教えてくれる「アクションアシスト」機能が有効になり、遊びやすくなるでしょう。初心者の方が楽しめる工夫もしっかり準備しているので、ぜひ皆様に手にとっていただきたいです。

――本作が気になっているユーザーに向けて、コメントをお願いします。

キム日本のコンソールユーザーの皆様にお会いするのは、『マグナカルタ』シリーズ以来およそ20年ぶりで、感無量な気持ちです。本作は戦闘好きな方も、冒険好きな方も、ゲームに慣れている人も、そうでない人も皆が楽しく遊べるゲームになっています。

あくまでエンターテインメントとして楽しんでいただくために作っているので、気軽に手にとっていただければ嬉しいです。また、たくさんの方に本作が届いて、この作品をきっかけに日本の皆様とたくさん交流ができたらいいなと思っています。

開発においては、SIEの皆様に助けていただきながら発売を迎えることができ、自信を持ってお届けできるような作品に仕上がりました。改めまして、関係者の皆さまにお礼申し上げます。

――ありがとうございました。


『Stellar Blade』は、PS5向けで4月26日にいよいよ発売です。


【PS5】Stellar Blade(ステラ―ブレイド)
¥7,363
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《みお》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

ゲーム アクセスランキング

  1. 発売前の「不安視」を見事にはねのけた“2024年新作ゲーム”4選! GWに遊びたいアクションRPGやSRPGに要注目

    発売前の「不安視」を見事にはねのけた“2024年新作ゲーム”4選! GWに遊びたいアクションRPGやSRPGに要注目

  2. 30年以上前に発売された「スーパーマリオコレクション」は、なぜ子供たちにとって“怪物”だったのか―今では考えられない当時ならではの事情

    30年以上前に発売された「スーパーマリオコレクション」は、なぜ子供たちにとって“怪物”だったのか―今では考えられない当時ならではの事情

  3. 『ポケカ』新弾「ナイトワンダラー」で環境激変!「モモワロウex」やロストデッキに鬼強い「キュレム」、ACE SPECのスタジアムなど新カード続々

    『ポケカ』新弾「ナイトワンダラー」で環境激変!「モモワロウex」やロストデッキに鬼強い「キュレム」、ACE SPECのスタジアムなど新カード続々

  4. 最大80%OFF!このGWに『ダークソウル』や『イース』をセール価格で遊ぼう─メトロイドヴァニアやRPGも【eショップ・PS Storeのお勧めセール】

  5. 「ストリートファイターリーグ」や「CRカップ」で活躍の“かずのこ”選手が、5年間所属したBurning Coreと契約終了へ

  6. 『FF7 リバース』や『グラブル リリンク』もセール中! 去年~今年発売のタイトルもお買い得な、ゲオ店舗のGWセールを現地調査

  7. ゲオがGWセールの注目ソフトを予告!『パワプロ2022』2,178円などお得度満点─オンラインストアではPS4『逆転裁判456』が新品で2,999円

  8. 祝20周年!今こそ『英雄伝説 軌跡』シリーズをはじめないか?遊びやすい『零の軌跡』から、骨太RPGの世界を体験しよう

  9. 『スマブラSP』非公式大会「篝火#12」が5月5日・6日に開催…あcola、MkLeo、Sparg0など国内外のスタープレイヤーが集結

  10. オープンワールドゲームの“マップ外”に行くとどうなる?巨大生物に食われたり、世界が壊れたり…全10作品の対応を紹介

アクセスランキングをもっと見る