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2023年にエンジェルラウンド~シードラウンドで540万米ドルを調達し、同年11月から欧米、中国、韓国などの一部のクライアントを対象にデジタルプラットフォーム向けソリューションの早期アクセスを開始したテック系スタートアップの「k-ID(ケーアイディー)」。
オンラインゲームの制作には、さまざまなハードルが付きものです。たとえば、子供や青少年をトラブルから守るためにアカウントの作成や認証・ログインなど、ゲームをプレイするまでにさまざまなプロセスが課されますが、「子供」「青少年」と定義される年齢は国や地域によって異なるため、グローバルに展開するゲームは各国の法律や規則を入念に調べ、準拠しなければなりません。
k-IDは、そうしたプロセスを簡略化するためのオンラインゲーム管理プラットフォーム。プレイヤーの年齢に適したゲーム体験(≒機能制限)をシームレスに設定できるAPIや、世界各国のゲームに関する法律を日々自動更新する膨大なデータベースが含まれたソリューションとなっています。
「k-ID」利用イメージ
k-IDを搭載したゲームを初めて起動すると、k-IDによる年齢確認画面が表示され、プレイヤーは自身の年齢を入力する。
(画像提供:k-ID) 入力した年齢がその地域において「未成年」とみなされると、保護者はQRコードかワンタイムパスワード、またはメールアドレスを利用して許諾画面へアクセスする。
(画像提供:k-ID) 保護者は地域の法令で定められている方法で自身を認証する。なお、k-IDのアカウントが作成されると、その後利用するすべてのゲームに認証が適用される。
(画像提供:k-ID) ペアレンタルコントロールの設定画面では、テキストチャットや広告表示、課金額の制限といったコントロールができる。
(画像提供:k-ID) 保護者が認証を行っている間も、プレイヤーはゲーム内容の一部をプレイし続けることができる。
なおk-IDは、アメリカ/カナダにおけるゲームのレーティング審査を行うエンターテインメントソフトウェアレイティング委員会(ESRB)や「EU一般データ保護規則(GDPR)」の審査機関当局にも認定されています。これにより、k-IDを導入した段階で各対象地域における法令を遵守しているとみなされる(セーフハーバー)のも大きな強みだといいます。
今回、k-ID共同創設者 兼 CEOであるKieran Donovan氏と、CTO(Chief Technology Officer)を務めるAakash Mandhar氏に話をうかがいました。
ゲームをグローバル展開する世界中のデベロッパーが同じ悩みを抱えている
――まずはお二人のキャリアを含め、自己紹介をお願いします。
Kieran Donovan私はLatham & Watkinsで弁護士を務めていました。世界各国のテック企業やゲーム企業のみなさんにオンラインサービスにおけるプライバシーやデータ処理、グローバルなコンプライアンスに関する適切なアドバイスをしてきた実績があり、特にオンラインゲームに関する相談を得意としています。
Aakash Mandhar私はk-IDに所属する以前はヒューレット・パッカード(HP)、Yahoo、マイクロソフト、エレクトロニック・アーツなどで、バーチャルプラットフォームやゲーム内通貨システムなどの構築に携わってきました。マイクロソフトでは、Xboxのチームに所属していました。元々ゲームが好きなので、『Halo』シリーズに携われたのはうれしかったですね。
――ゲーム業界向けのコンプライアンスフレームワークを提供する「k-ID」を設立した経緯を教えてください。
Donovan弁護士として活動していて、ゲームをグローバルに展開しようとする世界中のゲーム企業の方たちが同じ悩みを抱えていることに気が付きました。
特にオンラインゲームでは、小さな子供や青少年が適切にゲームを遊べるよう、国や地域ごとに法令が設けられ、ゲーム内の機能に制限がかかります。国や地域によって法令の対象となる年齢や制限内容は細かく異なりますから、ゲーム企業は各国の法律や規制を徹底的に調べ、それらに準拠したゲームを提供しなければなりません。
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また保護者たちは、幼い我が子がゲームをしながら同年代の友人とオンラインチャットをするのは微笑ましく見守れても、見知らぬ大人とも同じようには関わってほしくないとも思っています。
こうした課題を解決するため、法令対応やペアレンタルコントロール機能の搭載にかかるコストや手間を軽減できるメソッドを私たちなら提供できる、と考えたのが創設のきっかけです。
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――仮に子供が何らかのオンラインゲームを遊んでいてプレイ時間や課金額が限度に達した場合、プレイや課金の続行をできなくさせることもできますか?
Donovank-IDには、デベロッパーやプレイヤーの保護者などから要望があれば、そうした制限を課すシステムも容易に構築できるAPIやツールが含まれています。
Mandharプレイヤーの年代に合わせて、最適かつ安全なゲーム体験を提供する仕組みがk-IDなのです。
各国の法律や規制を網羅した最新データベースが利用可能
――各国のオンラインゲーム、eコマース、その他デジタルサービスなどの運営企業は、コンプライアンスや青少年の安全性の面でどのようなところに取り組まなければならないのか教えてください。
Donovan大きく分けると2つあります。1つ目は、子供たちが法律や規則に準じたログインや保護者の許諾を済ませ、安全にゲームやサービスをプレイ/利用できているかという安全性の担保・確認です。国や地域によっては、しっかり取り組めていないと罰金を課せられることもあります。
2つ目は、今お話しした安全性を確保するための法律・規則の確認・把握です。サービスイン時にその時点でのルールに準拠していなければならないのはもちろん、サービスを継続するうちにその法律や規則が変更・追加されるようなことがあれば、柔軟に対応しなければなりません。
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k-IDのソリューションには各国の法律や年齢区分、規則などが適宜自動アップデートされる膨大なデータベースが含まれており、リーガルチェックとアップデートの両面で活用できます。
私たちが取り扱っているデータ量はとても膨大なものですが、私は弁護士としてこうした課題やデータと10年以上向き合ってきましたし、チームにもさまざまな分野での専門家がいるからこそ作れたものだと思っています。
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――そのデータベースでコンサルティングを行う形でも大きな利益を見込めると思います。そのようにせず、ソリューションとして提供する理由を教えてください。