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「ホロ鯖ハードコアマイクラ」とはホロライブ専用サーバーでおこなう『マインクラフト』企画のこと。
通常はゲーム内で撃破されても生き返れますが、「ハードコア」と呼ばれるモードは生き返ることができない高難易度となっており、緊張感漂うゲーム性がプレイヤーに人気です。
問題の事件が発生したのは3日目となる5月15日(水)のこと。主催者・兎田ぺこらさんの目の前で参加者の大空スバルさんと桃鈴ねねさんが爆殺されてしまい、その容疑がぺこらさんにかかるというハリウッド映画さながらの幕開けでした。
絶対に死ねないゲームモード内での衝撃的な事件。しかし真実を解き明かそうとする法廷内のドラマとは別に、配信者たちはこのシナリオのない法廷劇をどう着地させるかで悩んでいたようです。
本稿ではそんな、配信者ならではの見えない綱引きと、驚くべきアドリブ力に焦点を当てて内幕を考察したいと思います。
◆まさかの緊急事態に誰もが騒然
5月15日(水)23時22分。
企画内で実施されていた「センスのある家選手権」のミッションにおいて、湊あくあさん、大空スバルさん、獅白ぼたんさん、桃鈴ねねさんが建設した家を審査中、その家が突然爆発。家の中で作業をしていたスバルさんとねねさんが爆発に巻き込まれるという事件が発生しました。
この事態にログインしていた様々なホロライブタレントが反応。そのリスナーを巻き込み、「え!? スバルさんとねねさんがゲームオーバーになった!?」「何が起こったの!?」と騒然としました。
容疑者はバーチャル空間で配信業を営む兎田ぺこら氏(111)。コンテスト審査中の犯行だったと関係筋が明かします。
直前まで地下特設会場にて「チンチロ大会」を実施していたぺこらさんは当然、容疑を全面否認し、あくあさん・スバルさん・ぼたんさん・ねねさんの共犯説を主張。これにより、事件当日に完成したばかりの裁判所にて決着をつけることとなりました。
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もともと裁判所はゲームオーバー者の救済措置として建設したものでした。
ハードコア設定のゲームといっても、企画の主題は「タレント同士の交流促進」です。ホロライブではこれまでも何度か「箱ゲー(箱庭ゲーム)」が流行しており、「ログインするといつも誰かが何か作業をしている」という状況の中、突発的なコラボが行われたり、それをきっかけに新たな交流が生まれたりして、横の繋がりを作る大きな助けとなっていました。
しかしここ2年ほどはタレントたちも忙しくなり、なかなか同じゲームをする機会がありません。そこでぺこらさんは、また皆でワイワイできる企画をしたいと思い、『マイクラ』を舞台にした緩めのハードコアをすることにしました。
企画の第1の目的は「グループ内の交流を促進する」こと。ハードコアの緊張感もおもしろさのひとつではありますが、そちらに偏りすぎてすぐ脱落しては本末転倒となってしまいます。そのためぺこらさんは何らかの救済措置を作るつもりでいました。
ところがその詳しいルールができないまま初日に桃鈴ねねさんが最初の犠牲者に。温情でねねさんを復活させる一方で、安易に復活できないルールを決めることになります。それが今回、活用されることになった「みんなで復活の可否を決める裁判制度」でした。
しかし手探りで企画を進めていることもあり、完成したばかりの裁判制度もどのように進めたら一番盛り上がるかわかりません。まさにすべてが「お試し企画」。そのような状況もあり、ぺこらさんとしてはシミュレーションをしたかったようです。
「チンチロ大会」に参加した、あくあさん、スバルさん、ぼたんさん、ねねさんは、ぺこらさんから「誰かゲームオーバーにしたら、その人数に応じて借金を減らす」と悪魔の囁きをされていましたが、それは完成したばかりの裁判所でお試しの裁判を行いたかったため。その4名ならきっと、安心して盛り上げ役を任せられると信頼したからだったのではないでしょうか。
しかしまさかそれが思わぬ大事件へと発展し、その中心にぺこらさん自身が巻き込まれることになるとは……。しかも事件の容疑者!!
ぺこらさん、お疲れ様なのらね。
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◆誰がオチをつける!?白熱の舌戦
スバルさんとねねさんを復活させるか否か? ログインしていたタレントたちを傍聴人兼陪審員として集めた裁判では、ぺこらさんが被告人ということで急遽、AZKiさんが裁判長、尾丸ポルカさんがぺこらさんの弁護人に指名されました。
焦点はやはり動機と方法。まっ先におこなわれた事実確認は状況を把握していないタレントとそのリスナーのためにも大事な作業です。
死因については、被害者であるスバルさんとねねさんを一時的に復活させることで事情を聴きます。この裁判劇にノリノリのねねさんは、半笑いを隠しながらの涙の証言で被害者ムーブを満喫。「ホロ鯖ハードコアマイクラ」の初日からムードメーカーとして盛り上げてくれましたが、ここがハイライトとばかりにひとつでも多くの笑いを誘おうと奮闘します。まさに「笑ってはいけない復活法廷」です。
また証人のひとりとして手を挙げた風真いろはさんは『マイクラ』が得意ということもあり、感圧板を使ったトリックを見事に言い当てます。まさかの名探偵登場で法廷も大盛り上がりです。
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しかし事実確認が取れ、また傍聴人のガヤを含めてある程度盛り上がったところで法廷内のタレントたちは考え始めます。「これ、どこに着地するんだろう?」と。
あくあさんたちが事件を仕組んだことは明白。動機は「チンチロ大会」で多額の借金を抱えたことです。
しかし事実のままスバルさんとねねさんを有罪にして消滅させたほうが面白いのか、それともぺこらさんを有罪にしたほうが面白いのか、当事者を含め思惑は様々。
新情報が飛び出すたびに「ええ!?」とザワつき、そこからクライマックスに持っていこうと身構えるものの、「まだここが着地点ではない」と妥協しない部分もあってなかなか展開がバチッとハマりません。そこは筋書きのないアドリブ劇ならではの難しさです。
そのあたりの空気の読みあいは、陪審員たちも裁判が終わった後に「こっちに転がるのがいいかと思って発言してみたけど……」と悩ましい心境を吐露していました。その一方で助け舟を出すあたり、ホロライブタレントのチームワークの良さと暖かさが垣間見えた一幕でもありました。
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流れが変わったのは陪審員のひとりとして参加した沙花叉クロヱさんのひと言です。彼女も外野でワイワイとガヤを飛ばして盛り上げていたのですが、舌戦が白熱する中、論点が曖昧になりかけたところで軌道修正し、これが復活をかけた裁判であることを思い出させてくれました。
おかげでスバルさんとねねさんの処遇へと流れがスライドし、「あくあさん・スバルさん・ぼたんさん・ねねさんによる施設建設の労働奉仕の刑」で結審することになりました。
復活に際しては、当初のルールで設定されていた「賛成した者がダイヤブロックを7つ納品する」があまりにもハードルが高かったことから、ぺこらさんが各3つ分、合計6つを提供することでバランス調整を。自分にも非があったことを認めるという、あくまで「法廷劇」のアドリブシナリオに沿った形で提案したところからも頭の回転の速さを見せてくれました。
ちなみに「ダイヤブロック7つ」の条件は、5月6日まで『ドラゴンボール Z KAKAROT』をプレイし、すっかりハマッていたぺこらさんならではのアイデアです。
仲間の助けを借りて復活する……という美しい展開をイメージしたものでしたが、事件が「チンチロ大会」の文脈で発生したこともあり、誰もが借金に怯えていたため機能不全に陥ったようです。
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なにはともあれ、突然割り振られた裁判長役と弁護士役をまっとうしたAZKiさんとポルカさん。2人の対応力もさることながら、アドリブ劇を壊すことなくバランス調整も同時にしてくれたぺこらさん、陪審員として盛り上げてくれたタレントたち、そして何よりここまでの大仕掛けを計画してリスナーに「神回」と称賛されるほどのイベントを起こしてくれたあくあさん・スバルさん・ぼたんさん・ねねさんのエンタメ魂。
そのアドリブ力には驚かされましたし、対応力の柔軟さはさすが人気配信者といったところ。
なお盛り上がったとは言え、突然の出来事に他のタレントを巻き込んでしまったこと、時間を使わせてしまったことについて、湊あくあさん・大空スバルさん・獅白ぼたんさん・桃鈴ねねさんの首謀者4名は陪審員のみなさんに謝罪するとともに感謝の言葉を伝えていました。
容疑者にされたぺこらさんも終始楽しそうにしていましたし、復活裁判制度も実際にやってみたことで得られたものが多かったと思います。改めてホロライブプロダクション内のタレントの仲の良さを実感するとともに、何があっても心配することなく観ていられる安心感を実感した配信でもありました。
企画自体は1週間と長いものですし、途中参加者を含めさまざまなタレントたちが楽しんでいますから、それぞれの視点でまったく異なる物語を体験してはいかがでしょうか?
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