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外山圭一郎が語る“自分なりの原点回帰”…待望の新作ホラーACT『野狗子: Slitterhead』開発者インタビュー!

ビジネスの関係でも、飲み友達の延長でもない物作り

ゲーム PS5
外山圭一郎が語る“その時にないもの”を作り続ける姿勢…『野狗子: Slitterhead』開発者インタビュー
  • 外山圭一郎が語る“その時にないもの”を作り続ける姿勢…『野狗子: Slitterhead』開発者インタビュー
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2024年6月22日、Bokeh Game Studioにて『野狗子: Slitterhead』のメディア向け先行試遊会が開かれました。本記事では、試遊会を通して実施された開発者インタビューをお届けします。『SILENT HILL』『SIREN』『GRAVITY DAZE』といった数々のシリーズを生み出した外山圭一郎氏を含む開発メンバーによるトークライブと、その後のインタビューをセットでチェックしてください!

外山圭一郎氏の新作ホラーACT『野狗子: Slitterhead』先行試遊レポート。人から人に乗り移り、凝固した血で敵を貫け
左からハート洋平氏(PRマネージャー)、山岡晃氏(コンポーザー)、外山圭一郎氏(Bokeh Game Studio CEO/クリエイター)、吉川達哉氏(キャラクターデザイナー)。以下からは敬称略でお届けします。

第1部: トークライブ

ハート: 外山さんは「Summer Game Fest 2024」に出向かれたとのことで、現地で『野狗子』への反響を目の当たりにされたかと思いますが、いかがでしたか?

外山: 「このゲームは何か違うな」という受け取り方をされた方が多かったですね。飛び込みで遊ばせてほしいという現地メディアの申し込みもいくつかありました。昨今のゲームは開発費が高騰して保守的になりがちなところがありますから、僕らのゲームが「得体の知れない感じがある」と言われて嬉しかったですね。

ハート: 山岡さんと吉川さんは、『野狗子』に対する反響は見られましたか?

山岡: 僕はまだ公開されている映像しか観ていませんが、独自性を感じますよね。

吉川: XやYouTubeのコメント欄をチェックしましたが、外山作品を熱望してる人が沢山いることが分かり、嬉しかったですね。

ハート: 『野狗子』開発に至るまでの経緯を聞かせてください。

外山: 山岡さんとはデビュー時の『SILENT HILL』でご一緒して、よく「また一緒にゲームを作りたいね」とは話してたんですよ。吉川さんには『GRAVITY DAZE 2』のDLCキャラクターのデザインをお願いしたんです。『野狗子』は街の中に紛れながらも、ヒーローと分かるデザインが必要だったので、オファーして良かったです。

山岡: 外山さんはある意味では恩人でもあり、他に交わらない姿がカッコイイと思ってます。そんなに人生って長くないから、絶対にまたやりたかったんですよね(笑)。

吉川: 僕は作品の雰囲気を聞いたときに「クリーチャーならできる」と思ったけど、実際はキャラクターも頼まれてプレッシャーを感じたところもありました。とはいえ普段から付き合いもあるし、精神的には仕事しやすかったです。

ハート: 『野狗子: Slitterhead』で表現したかったことについて聞かせてください。

外山: やはりキャラクターの部分ですかね。吉川さんのデザインは普通に立っていても存在感があるので。

吉川: キャラクターが多くて「街の人間でありながらヒーロー」というオーダーは難しかったですよ。でも僕もこの仕事は長いので、これまでの経験が活きましたね。色々なキャラを並べてみると、コレクションしてるみたいで楽しかったです。

山岡: 僕のほうはちょっと深い話になるんですけども、ゲーム音楽作りを30年から40年ほどやって気づいたこととして「ゲーム音楽はゲーム中に音が聴こえる」ということであり、仕事中や車の中で音楽を聴くのとは訳が違うってことです。今作でも「どういう音だったら、このゲームが面白くなるか?」をひたすら考えました。本当は「今回はロックです」とか「オーケストラです」などと説明できればいいんですが、結局そうはならないんですよね。

ハート: 開発者として、それぞれ刺激を受け合うことはありましたか?

外山: 吉川さんは絶対「OK」って言わないんですよ(笑)。いつでも、もっと上があると思っていらっしゃるのでしょうね。プロのこだわりを痛感しました。それで、山岡さんはずっとゲームを見てくれてるんです。こっちが提案せずとも山岡さんのほうから「こうでしょ?」って言ってくれる。

山岡: でも最初のトレイラーのときはお願いされて、6曲か7曲ほど作って渡したんです。

外山: そうだった。それで僕が「ホラーゲームだし、無難な曲がいいのかな」と聞いてみたら、山岡さんが「でもこっちのほうがいいと思います」って(笑)。

ハート: 出来レースみたいですね(笑)。

外山: でもあれが『野狗子』の根幹なんですよね。

山岡: 物作りにおいては予定調和を壊したいんですよ。今この時代にBokeh Game Studioがやる意味がないといけないって、僕なりに考えてたんです。

外山: 山岡さんは単に曲を作っただけでなく、ゲーム内の音をすべて調整してもらってます。セリフひとつ取ってもね。

山岡: 単なるビジネスでも、呑み友達とのなあなあの中で作るわけでもない物作りがしたくて……本作は創造することの面白さが出ていると思ってます。

ハート: 吉川さんは刺激を受け合うことについて、どうでしょうか?

吉川: スケジュール感とか、取捨選択とか、そういったことが外山さんとマッチしましてね。仕事量としてはかなり大変だったんですが、精神的には伸び伸びやれました。

ハート: 今後、また3人で一緒に作ることは有り得ますか?

外山: 「誰かとやる」ありきではダメで、何かを作るとなったときに最適解なら声をかけたいですね。というのも、この3人は「前と同じことしよう」ではノッてこないですから。

山岡: ゲーム作りは大勢でやるものですから、次回があるならまだ話したことのないスタッフとも密に話し合いたいと思ってます。

外山: 山岡さんはフィーリングで作ってると思われがちだけど、実はゲームがどう受け取られるかをとても気にしている人なんですよ。

山岡: やはり、ゲームって音楽がどうとかじゃなくて、ゲームが面白いかどうかが大事ですからね。

吉川: 僕としても、次もやりたいですね。外山さんはモチベーションの上がる環境を作ってくれる人なので、仕事がしやすいんですよ。

ハート: 余程、嫌なところで仕事をされてたんですね……(笑)。

吉川: まあ、長くやってるといろいろと(笑)。やはり、良い環境は筆が進みますから。

ハート: 最後に、本作を遊ぶプレイヤーにメッセージをお願いします。

山岡: いちユーザーとして、こんなゲームは今までになかったなと思ってます。より多くの人に体験して欲しいですね。

吉川: 本作はドラマチックでもあり、映画チックでもあり……とにかく手に取ってみてください。もしかしたら、また映画になるかもしれませんよ?

外山: 長年ゲームのディレクターをやってますが、本当に感謝しかないですね。自分を振り返ると、その時にないものにこだわってきたな、と思います。僕のそういう気分に賛同してくれるスタッフやお客さまは、本当にありがたい存在ですね。今後もこのスタンスで作り続けることが目標です。そのためにはまず『野狗子』に力を注ぎます!

第2部:インタビュー

ーーアクション面の制作で、特に意識したことはありますか?

外山: 外山圭一郎の作品を知らない、昨今のアクションゲームファンが気軽に入っていけるような切り口を考えました。パリィのシステムとか、その手のセオリーを入れようと意識しましたね。

ーー街や世界を作る上で意識した映像作品はありますか?

外山: ウォン・カーウァイ監督の映画は、僕が若い頃に衝撃を受けたこともあって、意識しています。典型的な表現にならないように、そこに生きている人がいると伝わってくる表現を目指しました。

ーー『野狗子: Slitterhead』というタイトルにはどんな意味が込められているのでしょうか。

外山: “野狗子”というのは古典にある怪奇譚です(※「聊斎志異」の1巻に掲載)。古典の中の怪物と同じことを現代の人間が行う……という意味合いですね。“Slitterhead”は、欧米向けに造語が必要だったので、絶妙に意味不明でヘンな単語を考えていました。その中に、自分なりの原点回帰として、頭の文字を「S.H」にしたかったんですよ。それで“The Slits”っていうバンドがいたなあとか、「イレイザーヘッドってかっこいいよね」とか、そんな話をしていたら決まりました。

吉川: 口触りの良い言葉だと思いますよ。

ーーゲーム内モードはひとつのみですか?

外山: はい。ストーリーモードに当たる本編しかありませんが、道中で倒さなくてもいいボスを倒すと衣装が貰えるとか、そういう寄り道は作ってあります。

ーー“特にここはユニークだ!” と太鼓判を推したいところはありますか?

外山: 命が大事という価値観が揺らぐところですね。大きな敵に立ち向かう時、プレイヤーはよりマシな犠牲を選択していくことになります。そんな感覚を味わってください。

ーー構想を含め、開発期間はどれくらいですか?

外山: 2018年に、ぼんやりと「こういうことをしたいな~」と考えてはいました。2020年に独立したので、実制作期間は4年ですね。

ーーそんな開発期間中に起きた印象深いエピソードや、苦労した点を教えてください。

吉川: メインビジュアルを2つ作ったんですが、1枚ずつ制作期間をズラして作る予定が、間違えて被ってしまったことですね。とんでもなく大変でした。

山岡: フルリモート体制で、人と会わずともゲームが出来ていくことに驚きましたね。

外山: 苦労しかない……(笑)。まあ、バランスですかね。今いるスタッフでキチッと物を作る責任と言いますか。ウチは人数が絞られているからこそ尖っていきたい! という思いがあるので、それを今後も共有していきたいと考えています。


以上、『野狗子: Slitterhead』の開発者インタビューでした。業界の重鎮たちの言葉は重みが違います……! 本作は、PC(Steam/Epic Games Store)/PS5/PS4/Xbox Series X|Sを対象に2024年11月8日より発売予定です。


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