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7月11日に、ニンテンドースイッチ版が発売されたバンダイナムコエンターテインメントの『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』。今回は、スイッチ版発売に関連して『エースコンバット』シリーズお馴染みのオリジナル機「ADF-01」をコトブキヤが立体化した、2023年8月発売の1/144「ADF-01」のレビューをお届けします。
「ADF-01」は『エースコンバット2』にて初登場したオリジナル機体。前進翼とキャノピーの無い機首という構成から1997年当時としては他に類を見ないデザインで、『エースコンバット2』本編においてネームド機「Z.O.E」を倒し続けると最終ミッションで敵機として登場しました。
その後、『エースコンバット5』にて再登場した際には、ファルケンという名前が加わり機首のデザインが曲線から直線へと変わるだけでなく、コクピット部も機体後部へ下がり、敵機を一撃で撃破出来る特殊兵装TLS(戦術レーザーシステム)が初めて搭載されました。
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以降は『エースコンバットZERO』だけでなく、『エースコンバットX』を筆頭とした携帯機シリーズにも登場。『エースコンバット インフィニティ』では、初のHD化がされると共に『エースコンバット5』仕様だけでなく『エースコンバット2』仕様も実装されています。『エースコンバット7』ではシーズンパスに収録されている他、単品DLCとしても購入できます。
なお、2006年の『エースコンバットZERO』発売当時にバンダイから1/100のEXモデルとして「ADF-01」が初めて立体化されていました。今回コトブキヤからリリースされたキットは、バンダイ版の1/100から1/144へとスケールが縮小されているものの2度目の立体化となります。
ADF-01の組み立て―比較的新しめのキットだが一部パーツにタイトさも
組み立てに入る前にランナーを見てみましょう。今回のキットは一部塗装済みパーツが入っている通常版で、あらかじめ切り出されたパーツとフライングベースを含めて全10枚入っています。現時点での最新キットというだけあって、パーツのエッジは程よく目立っており、チープさを感じさせません。同梱されているデカールは、ウォードッグ隊やラーズグリーズ隊を再現するものだけでなく、『エースコンバット7』主人公トリガーの特徴的な三本線や三本爪などが入っており、表現したい機体をある程度選べます。
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ここからは組立です。組み立て前に離型剤を落とすため、中性洗剤で全てのランナーを洗います。組み立て順は機首→胴体下部→胴体上部→上下と機首の合体→TLS展開状態→細かなパーツとフライングベースです。
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パーツの構成自体はシンプルで、エアインテークや推力偏向パドルなどを機体上部/下部パーツに組み込み、機体上部と下部パーツを組み合わせて大まかな形を作ります。機首のカナードは差し込み式でなく機首と一体成形となっており脱着や可動ができません。機首と胴体の着脱時には機首に力を強くかけなければならないため、カナードを折らないように取り扱う必要があります。
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組み立て自体は難しいものではありませんが、パーツ同士の接続のタイトさが気になりました。パーツを貼り合わせようとしても、パーツにかかるピンへの圧力が強いのか完全に張り合わせることが難しく、機首と胴体の接続にしても圧力がかかる部分をヤスリやデザインナイフで削り取る必要があるほどです(一部パーツはピンがねじ切れてしまった)。
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パーツ同士の合いという問題はありつつもキット自体は小さいため、TLSやFAEBなどの細かなパーツの切り出しや、合いの調整を含めて2~3時間ほどで完成したように思えます。
1/144スケールとして再び蘇った「ADF-01」
ここで全体を見てみましょう。1/144「ADF-01」は、2018年から展開されたコトブキヤの『エースコンバット』系プラモデル第7弾としての積み重ねを感じられる洗練されてきた造形で、端々のエッジの尖り具合をみても価格相応に感じます。通常版の塗装部分は機首カナード裏と主翼を中心とした機体下部です。
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可動部分は推力偏向パドルとエアブレーキで、TLS発射形態や主脚を出した着陸状態、そして標準ミサイル発射状態へはパーツを一部差し替えることで再現します。今回のキットにもフライングベースが付属しているため、キット内で旋回や着陸などのポージングが可能です。
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特殊兵装は、TLSと4AAM、そしてFAEBが付属。FAEBは2個のみなため、少しばかり寂しさがありますが、他のパイロンと干渉しないため4AAMを残り2つの穴に追加できます。しかしながら、主翼下にそのまま差し込む形で再現するため無搭載だと接続穴が少し目立ちがちです。TLSはパーツ差し替えで再現しており、機首を取り外したらコックピット下のパーツをTLS展開状態パーツと交換し、再び組み立てることで切り替えます。
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「ADF-01」は素組の状態でも、これまでシリーズを展開してきたことから蓄積を感じられるキットでした。通常版でも一部塗装されていて塗装が難しいと感じるユーザーにもお勧めできます。
「ADF-01」の塗装を考える―パーツ同士の合いを如何に調整するか
ここからは、塗装に入ります。通常の「ADF-01」のカラーは赤ですが、『エースコンバット7』や『エースコンバット5』でのモデルも参考にしてみたところ、赤部分はつや消しや光沢でなくメタリック寄りな表現がいくつか見られました。メタリックなレッドとなると、ガイアの「プライマリーメタリックレッド」やクレオスのC75 「メタリックレッド」が浮かびますが、色的に赤部分が強く、微妙にピンク寄りなADF-01のカラーに近くありません。
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もう少しメタリックな赤を探してみたところ、グレーサフかホワイトサフを下地にしたGX203「メタルレッド」が近い色であると思えたためこれを上半分に、下半分はガイアの「ニュートラルグレーV」を選びました。
塗装はまず内部からです。クレオスの「サ―フェイサー1500ブラック」を下地に、エアインテーク白部分はC316「ホワイトFS17875」を、内部のフィンはタミヤのLP-20「ライトガンメタル」を選択。エンジンは焼き付いた色を考慮してタミヤのLP-62「チタンゴールド」を、噴射口を含めた推力偏向パドルをクレオスのC61「焼鉄色」を選択しました。
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エアインテークは胴体上半分と分担しながら構成しているため個別パーツだけでなく忘れずに塗装します。機体内部を塗装したら再び上下に張り合わせますが、この接続もタイトで合わせ目が極力でないように接着剤を使い固定します。プラモデル向け接着剤は基本的にプラを少し溶かして同化させるため、タイトなパーツのピンやエッジに塗ることで微妙な合いの悪さを解消し、合わせ目消しの1段階目を行いながらそのまま固定する一石三鳥的な使い方も出来るのです。
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上下を再び合わせてウェポンベイ部分を取り付けたらパテを盛り合わせ目消しをします。パーツ同士がタイトなため、どうしても大きな段差や隙間が表れやすくそれらの違和感を極力下げるための措置です。パテが乾くまでの間に機首部分も接着し合わせ目にパテを盛ります。
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加えて、ウェポンベイと主脚蓋裏、FAEB本体、そして主脚部分はC316「ホワイトFS17875」を、4AAMとFAEBのパイロンは「ニュートラルグレーV」で塗っています。
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胴体部分のパテがある程度乾いたら削り、曲面を均したらウェポンベイや脚部収納部分を塗装します。ゲーム内のテクスチャだと、ケーブルが密集している場所なためか、かなり暗く黒めに表現されていますが、実験機を含めほとんどの航空機が白い隔壁で塗られていることを考慮し、黒サフを下地にC316で塗装しました。
これら内部の塗装を終えたらウェポンベイや主脚部に蓋をして、エアインテークやエンジンにマスキングを行い胴体部分の塗装に入ります。
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塗装は「サ―フェイサー1500グレー」を下地として塗装。胴体下半分を塗る「ニュートラルグレーV」は、極めて黒に近いグレーなので、灰サフの明るさを考慮にいれながらグラデーションを少し施しつつ塗ります。
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下半分が塗り終わったら、塗装面保護用のマスキングを少し施して残りの上半分も塗ります。全てを塗り終えたら筆を使い細かな部位塗装を行います。4AAMと標準ミサイルの胴体はN57「エアクラフトグレー」を切らせてしまっていたため、代用としてタミヤのXF-23「ライトブルー」を使用。脚部のタイヤはタミヤのXF-85「ラバーブラック」で塗っています。
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TLSの色指定は厳密でなかったものの、『エースコンバット7』でTLSをよく観察してみると、一部部位にゴールドを想起させる部分があったため、該当部分をタミヤのX-31「チタンゴールド」で塗ることで表現。
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「ADF-01」のセンサー部分は個別パーツやデカールはありませんが、タミヤのエナメル塗料X-23「クリヤーブルー」を塗ることで再現し、最後に各部へデカールを貼り付けたら完成です。
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完全塗装のADF-01―これまでの蓄積が光るゴージャスな造型
完全塗装を終えた「ADF-01」の全体を見てみましょう。機体上部をGXメタルレッドで塗装したため、ゲームオリジナルの雰囲気をそのままにメタリックな表現が出来たように思えます。
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通常ミサイルと4AAMは、一般的な空対空ミサイルの塗装と少し異なる色を塗りましたが、色の違いを感じず結果的にはそこまで違和感のない色に仕上げられたかと思います。
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1/144「ADFX-01」のようにTLSユニットに発光ユニットを無改造で仕込むことは出来ませんが、TLS発射形態も塗装を行うことでよりゴージャスになったように思えます。
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ここで第1弾の1/144「XFA-27」と並べてみました。『エースコンバット インフィニティ』をベースとして2018年に発売された1/144「XFA-27」は、発売から6年の視点からみると、機体の特徴をよく捉えられているものの、エアインテークの内フィンやエンジン内部などを含め細かなディテールを再現しきれておらず、今回の1/144「ADF-01」と並べるとクオリティの差が相対的に強く目立ってしまいます。
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加えて、以前制作した「ADFX-10F」も並べてみました。「ADF-01」は「XFA-27」より一回り大きいという印象を与えますが、その隣の「ADFX-10F」はそれを上回る二階建ての巨人機としての印象を強く与えています。機体規模は大きくなったものの、ゲーム内において描写されるTLSユニットは相対的に小さくなっているため、ゲーム本編における技術の進歩を感じてしまいます。
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これまでの蓄積を感じる1/144「ADF-01」
1/144「ADF-01」は、小さいながらもダイナミックな造形を感じられる開発技術の蓄積を感じる素晴らしいキットだった一方で、パーツの接続ピンがねじ切れてしまうほどのパーツ同士の接続がタイトであることが明確な欠点として目立ってしまっています。これまでのキットでは少々無視できるぐらいのタイトさがあったぐらいでしたが、今回、パーツごとに合いの調整が必要なほどのタイトさに悩まされるとは思いませんでした。
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それでも、これまでのコトブキヤプラモデルと同じく、苦労を積み重ねて完成させた時のリターンは大きく満足感を得られます。一部塗装済みの通常版を素組み+部分塗装のみで完成されてしまっても良好なキットであると思えました。
なお2006年に発売されていたバンダイ製の1/100「ADF-01」は、再販もなく入手できる機会もなかったため、細かな違いが表れている部分を検証することが残念ながらできませんでした。
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2024年8月現在コトブキヤから『エースコンバット』関連のさらなる新作プラモデルは発表されていませんが、「ADF-01」は一つの到達点と思えますし、素組や塗装をしてもその造形の良さに酔いしれられる6,380円(税込)の価格相応の素晴らしいキットであることは確かでしょう。
Game*Spark レビュー 1/144「ADF-01」コトブキヤ 2023年8月リリース
これまでの蓄積が活きた高クオリティな造型
-
GOOD
- 4AAMだけでなくFAEBも付属しゲーム本編の「ADF-01」を再現できる
- 1/144スケールながらも迫力を感じられる端々の造形
- トリガー機やウォードッグ隊だけでない多様な機体を表現できる付属デカール
BAD
- 接続ピンを引きちぎってしまうほどタイトなパーツ同士の合い
¥5,970
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)