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岩手県は、いわて応援ポケモン・イシツブテを活用したデジタルスタンプラリーイベント「岩手県×イシツブテ デジタルスタンプラリー2024 ~いわて三陸めぐりの旅~」を開催中です。
本イベントは、三陸地域を核とした広域周遊と交流人口の拡大を目的としたもの。沿岸地区のポケモンマンホール「ポケふた」やイシツブテと地域のコラボ商品販売店、ポケモンラッピング列車を運行している三陸鉄道など、さまざまなエリアを巡ってスタンプを集めていくことで豪華賞品を獲得できます。
『ポケットモンスター』では、地域それぞれの「推しポケモン」が、各地の魅力を国内外に発信する「ポケモンローカルActs」という活動を行っています。イシツブテは、2019年5月に岩手県と提携して「いわて応援ポケモン」として任命されました。
任命から多くのイベントに参加しており、作品自体の大きな知名度とともに“まちおこし”にも大きく貢献している、今や岩手県に欠かせない存在でもあります。本稿では、任命から5年経っているイシツブテをはじめとした『ポケモン』を通じ、今の岩手県への影響を見ていきたいと思います!
◆なぜ岩手県でイシツブテなのか?
イシツブテは『ポケットモンスター』シリーズ初期から登場するポケモンです。岩の体に腕が付いている、その見た目の通り「いわタイプ」のポケモンで、これまで多くのシリーズにも登場しています。
そんなイシツブテが岩手県の応援ポケモンとして採用された理由は「“岩”に“手”が付いている見た目が岩手を象徴している」という、とても明快なものでした。岩手県という県名の由来も「岩についた鬼の手形」という説があるため、これはもはや運命とも言える出会いだったのかもしれません。
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応援ポケモンとして岩手のイベントに登場したイシツブテは、足部分が「透過風の模様」になっていたことで大きな話題になりました。これは岩手県としてもデザインを意識して作り上げたようで、県のマスコット・そばっちも何故か透過バージョンが公開されたりしています。
任命からイシツブテの県内での活躍は目覚ましいものです。2019年から4年連続で開催されたスタンプラリー、毎年運行しているラッピング列車をはじめ、岩手を代表する夏の祭り「盛岡さんさ踊り」や音楽フェス「いしがきミュージックフェスティバル」にも登場するなど、毎年必ずと言っていいほどイベントで姿を見かけます。
また、岩手県とイシツブテの関係を語る上で欠かせないのがイメージソング「岩と手!岩手!イシツブテ!」です。音楽は二戸出身である「SaToMansion」の佐藤和夫氏が担当、イラストは盛岡市出身のオガサワラユウダイ氏が担当するなど、岩手出身メンバーが揃っています。“岩”と“手”にこだわりぬいた歌詞にも要注目です!
◆岩手の「ポケモン」を見てみよう!
ここからは任命から5年経った岩手県の「イシツブテ」および『ポケットモンスター』の姿を見ていこうと思います。まず、「ポケモンローカルActs」の大きな活動のひとつに、ポケモンマンホールこと「ポケふた」があります。
岩手県の「ポケふた」には、イシツブテをはじめ、いわタイプのポケモンたちが多く描かれています。2024年8月時点でその数は28種類あり、県内の広い地域に分布しています。こちらのデザインも岩手県出身・在住のイラストレーター・オガサワラユウダイ氏によるものです。
いずれの「ポケふた」も、その土地の名産や景勝地をイメージしたものが描かれています。例えば花巻市の「ポケふた」は、同市出身の作家・宮沢賢治の作品をイメージしているようで、イシツブテとコスモッグの背景には、まるで【銀河鉄道】のように飛んでいるレックウザの姿が見えます。
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他にも久慈市の名産品である【琥珀】と共に描かれるプテラや、農作物の生産が盛んな紫波郡には特産品の【ブドウ】とアママイコが描かれていたりしています。なお、いわて応援ポケモンのイシツブテは県内有数の観光地・宮古市の【浄土ヶ浜】をイメージしたようなイラストです。
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さらに、伊藤園との「ポケモンローカルActs」として、同社の【災害対応自販機(災害などによる停電時にも商品供給の仕組みを備えている)】にも各自治体の「推しポケモン」が描かれたラッピング自販機が存在しています。当然岩手はイシツブテを意匠としたもので、東日本大震災で大きな被害を受けた沿岸部に設置されています。
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◆北東北初のポケモン遊具設置エリア「イシツブテ公園」に行ってきました
岩手県と『ポケットモンスター』の提携、およびイシツブテの活動を語る上で欠かせないのが、2023年4月28日に久慈市にある「道の駅 いわて北三陸」内に開園した「イシツブテ公園」でしょう。今回、筆者は在住地の盛岡から車を2時間ほど走らせて実際に訪ねてみました。折しもの台風5号の影響があったものの、撮影当日は無事に大雨に降られずに済みました。
道の駅のエリア内にある公園内は多くの家族連れの人々で賑わい、子どもたちが思い思いに遊具で遊んでいるのが印象的でした。北東北初のポケモン遊具が設置された場所でもあり、イシツブテをはじめプテラやイワーク、チゴラス、イワンコといったポケモンの遊具が並んでいます。
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イシツブテが支えているようなブランコ、チゴラスとイワンコのスイング遊具、3匹のポケモンが印象的な巨大な岩山&すべり台など、どれも強烈に「ポケモン」を感じさせるものです。また、公園のベンチにはピカチュウがいたり、ロープ遊具の頂上にはモンスターボールがあったりと、細やかな部分も楽しさに満ち溢れています。
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そんな中で個人的にインパクトが強かったのが【イシツブテの広げた両手に乗れるシーソー】でした。この遊具も大人気で、子どもたちが楽しそうにイシツブテに揺られていました。当然ながら公園という場所らしく、子どもたちがみんな笑顔で、走り回って次々と色々な遊具で楽しんでいるのがとても印象的でした。
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道の駅にも多くのポケモンがラッピングされた窓や壁が用意されています。さらに、フードコード 「standonuts」ではイシツブテ・イワンコ・プテラをイメージした飲食物があったり、おみやげコーナーに専用のポケモンコーナーがあったりと、地域とポケモンが実に上手く根付いている印象です。
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◆地域×ポケモンで実際に現地を巡って思うこと
今回久慈市を中心のいくつかの沿岸エリアや筆者の近郊の「ポケふた」などを実際に見て回ってきました。撮影がお盆の時期だったということもあるのでしょうが、観光エリアは非常に人が多く、特に「道の駅いわて北三陸」は交通整理が必要なほどの賑わいでした。
撮影時に何名かの方とお話させていただいたのですが、地元・岩手県の方や隣県・青森県から来ている人々から埼玉県や愛知県など、遠方から来ている方もいました。「近くにこういうポケモンの施設がある」ということで来てみたという人、「子供がポケモン好きなのでいろいろな地域を巡っている」という人など、その理由はさまざまです。
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宮古市の「ポケふた」撮影でお話を聞かせてもらったご家族様は、普段から地元の色々なスポットを回っているとのこと。印象的だったのが「寺社なんかは子供はなかなか喜ばないけど、近くにポケモンの何かがあれば喜んでくれる」という言葉でした。ポケモンTシャツを着て楽しそうにイシツブテの「ポケふた」で記念撮影していた子供の姿は、とても説得力がありました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、岩手県や東北の各地域は今でも多くの影響が残されています(もちろん復興も確実に進んでいるのですが)。さらに、2020年頃から感染拡大した新型コロナウイルスなどもあり、観光地が受けたダメージは計り知れません。
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そんな中で地域を盛り上げようとする「ポケモンローカルActs」はとても心強い存在です。ポケモン好きな人には少なくとも「その地域に行ってみたい理由」にもなり、岩手県を見る限りでは、産業側も地場産業などを通じて地域の魅力を伝えようと観光客を迎えるための努力をしているように思えました。
岩手県のイシツブテはかなり印象的だったようで、イシツブテ公園では近くを通った老夫婦の方が「ポケモンだ」と会話をしていました。恐らく実際にゲームをプレイしていないであろう人々(すごいハードコアゲーマー老夫婦の可能性もありますが)にも『ポケットモンスター』の知名度や牽引力は凄まじく、それは好きな人であればなおさらでしょう。
岩手県において、応援ポケモン・イシツブテの存在は実に大きな話題になりました。開催されているデジタルスタンプラリーはもちろん、ふとしたタイミングでイシツブテがデザインされたイベントを見かけることも決して珍しくありません。任命から5年、すでに地域に根付いているといっても過言ではないでしょう。
今回の沿岸部への取材では、やはり子どもたちが「ポケモン」関連のものにたくさんいたこと、みんな楽しそうにしていたことで実に嬉しく思いました。「ポケモンローカルActs」は、北海道から沖縄まで多くの地域で活動しているので、みなさんもお住まいの地域で楽しんでみるのもオススメです!
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なお、地域を見て回るのが楽しくてせっかく対象エリアを回った肝心の「岩手県×イシツブテ デジタルスタンプラリー2024 ~いわて三陸めぐりの旅~」に参加するのをほとんど忘れていたのを最後に報告しておきます。宮古市で出会った家族とのお話で色々見逃していた事に気付きました。もったいないことしたなあ!
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