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みなさんはコナミの恋愛シミュレーション『ときめきメモリアル(ときメモ)』をご存じでしょうか?2024年で30年を迎えるほど歴史が長く、同年のストロング国立演劇博物館が選定する「ビデオゲームの殿堂」にも候補として挙がるなど、恋愛シミュレーションゲームの金字塔とも言える作品です。
女性向けである派生シリーズ『ときめきメモリアル Girl's Side』は現行機ニンテンドースイッチでも新作が発売されていますが、本家は2009年リリースのPlayStation Portable(PSP)向け『ときめきメモリアル4』を最後に途絶えており、シリーズ新展開とされたスマートフォン向け関連作『ときめきアイドル』は、2019年にサービス終了済みとなっています。
しかし、シリーズ30周年には「ときメモ30周年ライブ」が開催されたほか、公式SNSアカウントより「これからも様々な新展開を予定しています」と告知。“もしかしたら現行機に移植・リメイク・新作が来てくれるかもしれない…!”そんな期待を込めてPSPで遊べるメインシリーズ3作を本記事では振り返っていきます。
なお、筆者は本シリーズには『4』から入った新参かつ、メイン作品のなかでは「3」のみ未プレイのため、今回取り上げる3作品に限った説明をしていきます。キャラクターの敬称は略称させて頂くほか、ゲーム中の展開にも触れるのでご了承ください。
伝説はここから始まった、初代『ときめきメモリアル』粗はあるが歯応え抜群
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1994年にPCエンジン向けゲームとして初登場し、様々なハードに移植され、PSPにもUMD(ディスク)版が発売された初代『ときめきメモリアル』。今回のプレイでは、初代PlayStation(PS1)に移植されたバージョンを元にしたゲームアーカイブス『ときめきメモリアル~forever with you~』を紹介していきます。
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初代『ときめきメモリアル』とは、「卒業の日、校庭のはずれにある古い大きな樹の下で女の子から告白して生まれたカップルは永遠に幸せになれる」そんな伝説を持つ私立「きらめき高校」で入学から卒業まで3年間を過ごすゲームです。
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まず、本作で注目すべきポイントはそのシステムでしょう。“恋愛ゲーム”と聞くと文章を読み進めながら選択肢でストーリーが分岐する、物語性重視の“ビジュアルノベル”が想像されがちかもしれませんが、本作はジャンルを“恋愛シミュレーション”としています。
プレイヤーは勉強や運動といったコマンドを選択してステータスを上げ、ヒロインたちとデートをして仲を深めていく、現代では様々なソーシャルゲームが採用している、育成ゲーム的な側面が強いタイトルです。
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しかし、本作を『ときめきメモリアル』たらしめているのは、説明書にも記載のない“爆弾”の存在でしょう。ゲームでは様々な女の子たちと出会っていきますが、彼女たちは“ただのヒロイン”ではありません。プレイヤーは高校生活の中で女の子と下校したり、デートに誘ったり、学校行事に一緒に参加したりと思い出を作っていくことができます。
一方、酷い扱いをしたり、長い間放置したりすると女の子が傷心し、好感度一覧の横に“爆弾”のマークが付き、爆発するまでほったらかしにすると、最終的に学園で悪い噂が広められ、他のヒロインを含めた全員の好感度が下がってしまうのです。
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そして、ここで問題となるのが“酷い扱い”と“放置”の判定。例えば下校時、女の子と出会い一緒に帰るか誘うことができますが、「じゃお先に」と1人で帰ると傷心。さらに一緒に帰ろうと誘っても断られる可能性も有りますが、それでも誘わないと傷心。校内で女の子からデートに誘われた際、“他の子とデートに行きたいから…”と言った理由で「いや、遠慮しておくよ」と誘いを断ると傷心してしまいます。
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“放置”に関しても、“顔と名前を知った程度の仲”でも一定期間デートに誘わないと傷心。なかにはデートをすっぽかすなど、傷ついても当然な行動もありますが、初代『ときメモ』というゲームにおいては、基本的に女の子たちと一度出会ったが最後、責任をもって3年間の学園生活で彼女たちの機嫌を取り続けないといけません。
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また、爆弾が爆発してしまった時は他のヒロインも何故か傷心するため、連鎖的に爆弾が付く可能性もあり、最悪の場合、プレイヤーの評判が地の底まで落ちます。後の作品ではマイルドな仕様になりますが、基本的に『ときめきメモリアル』というゲームにおいて、ヒロインたちは“攻略対象”であると同時に“お邪魔キャラ”でもあり、プレイヤーは自身のパラメーターに加え、彼女たちの気持ちも管理しなければいけないのです。
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なお、初代『ときめきメモリアル』はシリーズのシステムの基礎を築いただけでなく、記憶に残るセリフの数々も特徴的。本作メインヒロインの「藤崎詩織(詩織)」が幼馴染&デートをする間柄でも放つ「一緒に帰って、友達に噂とかされると、恥ずかしいし…。」という一緒の下校を断るセリフは有名ですが、実は主人公も負けていません。
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休日は空いているかと聞かれた際、「残念ながら、俺様は忙しいのだ。」という選択肢が用意されていたり、キザな同級生には「聞こえなかったのか?頭悪いんじゃねぇ?」と言い放ったりと、現代の倫理基準に則した恋愛ゲームでは中々見かけないであろう辛辣さは強烈です。
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そんなツッコミどころもある初代『ときメモ』ですが、ヒロインたちに目を向けると、文学少女の「如月未緒」、マッドサイエンティストな「紐緒結奈」、面倒見が良い運動部マネージャー「虹野沙希」、ミーハーで遊び好きな「朝日奈夕子」、高飛車に見えて実は…な「鏡魅羅」等など、当時からも王道だった性格の子もいれば、今や王道と言っても差し支えない設定の子もおり、一周回って新しくも感じるキャラクターが数多く登場。最先端の差別化を意識した作品群では逆に味わいにくいかもしれない、本作ならではの魅力と言えます。
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ちなみに、本記事執筆にあたり筆者は「詩織」と結ばれることを目指しプレイしたものの、伝説の樹の下で待っていたのは大人しく、全体的に控えめな女の子の「美樹原愛」。
プレイヤーからは特徴的な前髪が弄られやすい彼女ですが、キャラクターデザイン担当のこくら雅史(小倉雅史)氏からは後に「原案ではかわいくできたのですがドット絵では表現できなかったので個性的な前髪に。」と明かされており、ゲームとは少し印象の変わった描きおろしイラストが公開されています。
全てが進化!舞台も変わって心機一転『ときめきメモリアル2』
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『ときめきメモリアル2(ときメモ2)』とは、初代の発売から約5年後の1999年、満を持してPS1向けに発売されたメインシリーズ2作目のタイトルです。
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舞台は私立「ひびきの高校」に移り、プレイヤーは3年間の学園生活を通して、好きな女の子に卒業式の日に告白されることが最終目標に。コマンドを選択して学園生活を進める恋愛シミュレーション部分と、ヒロインたちの“爆弾”というシステムを受け継ぎつつ、バランス調整と追加要素が盛り込まれた続編に恥じない作品となっています。
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追加要素で特に目立つのは音声合成システム「EVS(エモーショナルボイスシステム)」でしょう。ゲーム本編ディスク、またはアペンドディスクでボイスを生成し、作中のヒロインがプレイヤーの名前を呼んでくれるようになるシステムです。
名前によっては上手く発音されなかったり、ゲーム中では1キャラ分しか読み込めなかったりと欠点もありましたが、イントネーションの調整が可能なうえ、「初音ミク」に代表される「VOCALOID(ボーカロイド)」、その最初期の発表が2003年であった事実も考慮すると、当時としては斬新な音声合成技術であったのは言うに及びません。
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シナリオにおいては、本編開始前に小学生としてヒロインたちと数日間を過ごすプロローグが追加され、感情移入がしやすくなったことに加え、ヒロイン同士の絡みが増えたり、前作では一人だった主人公の男友達ポジションのキャラクターが二人になったりと、話の展開に幅が生まれやすくなっています。
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また、初代から変更されている主な点としては、キャラクターのビジュアルがドット絵から1990年代のアニメ塗りに変わったほか、良くも悪くもゲームを難化させていた“爆弾”の発生頻度が体感1/3~4程度と抑えられており、余裕を持ってスケジュールを組みやすくなった結果、意中の女の子とのデートを楽しみやすくなりました。
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しかし“お邪魔キャラ”という観点で見ると、本作では男友達が脅威になります。前作の男友達「早乙女好雄」は女の子の情報を教えてくれるお助けキャラであり、攻略対象のヒロインと付き合うことはあるものの、主人公とそこまで仲のいいキャラは選出されないため、終始“友人”というポジションに徹底しています。
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一方、本作の男友達はうち一人が同じく女の子の情報を教えてくれるものの、主人公と並行してヒロインの誰かと結ばれようとしており、同じ女の子を好きになってしまうことも。そうなった場合、卒業間近に友人との決闘イベントが挟まるのですが、戦う相手次第では負けたらヒロインがそのまま奪われてしまいます(友人のうち一方は決闘で負けても影響は無し)。
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このライバル要素は賛否が分かれるかもしれませんが、あえてもう一点、本作の気になるポイントを挙げるとするなら、主人公の幼馴染である女の子「陽ノ下光」のヒロイン力が高すぎることでしょうか。
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彼女は前作の「藤崎詩織」と同じ幼馴染設定のメインヒロインではありますが、初代は本編のイベント中で「詩織」と主人公の幼少期が語られるのに対し、本作ではプロローグで主人公と「陽ノ下光(光)」の思い出を追体験することになるほか、本編中でも冒頭から主人公に好意を向けている描写があるうえ、好感度も上がりやすくなっています。
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筆者個人としては、ここまで来ると“彼女と結ばれないと申し訳ない”くらいまで感じてしまいますが、「光」を何より大切に思う親友「水無月琴子」と仲良くなっていくと“光との友情と、主人公への愛情の狭間で琴子が悩む”イベントが起きるなど、この前提があるからこそ生まれるドラマもあるため、一概に悪いとも言えないポイントでもあります。
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ちなみに、今回紹介する3作品の中で一番おすすめしたいオープニングソングは本作の「勇気の神様」。全体的に爽快感のあるメロディで、“青春”というイメージにピッタリです。
シリーズ生誕15周年作&今年で15周年を迎える最新作『ときめきメモリアル4』
記事執筆時点でメインシリーズ最新作となる『ときめきメモリアル4』は、シリーズ生誕15周年に生まれ、2024年には自らも15周年を迎えるタイトルです。
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シリーズ節目のタイトルだけあって本作の舞台は初代から15年後の「きらめき市」、“伝説の樹の下で卒業式の日に結ばれた恋人同士は永遠に幸せになれる”…時代の移り変わりのせいか、伝説から「女の子から告白」という部分が忘れ去られてしまった「きらめき高校」で学園生活を送ることになります。
今回紹介する中で最も新しいタイトルなのもあり、バックログや早送りを実装したUIや、2010年代以降でも見られるタッチのイラストなど現代的です。
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採用されている技術も新し目であり、立ち絵には “1枚のイラストをアニメーションさせる”「モーションポートレート」、 音声合成には“全ヒロイン”に“複数のパターン”で名前を読んで貰える「SpeeCAN」エンジンを利用した新システム(記事執筆時点で音声合成サービス終了)、一部シーンには現在も多くのエンタメ作品で使われている立体音響「バイノーラルサウンド」など、2024年の今も違和感なく遊べます。
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ゲーム難度に目を向けると今回紹介した中では一番易しく、主人公のステータス上昇量バフにはじまり、“自分から告白する機能”や“爆弾処理に役立つ能力”まで用意されている「特技」が登場。
学園生活で得た経験値を使い、スキルツリーのように下から隣接する特技をどんどん解放していくシステムとなっているほか、二週目以降も特技の解法状況が引き継がれ、いきなり後半の特技を習得できます。たとえ一周目で誰と結ばれずとも、諦めず繰り返しプレイすれば攻略しやすくなる仕様です。
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また、本作には過去作を意識した要素が多数盛り込まれており、初代の「藤崎詩織」と似つつ、親戚関係にあることが示唆されている「皐月優」がパッケージを飾るヒロインの一人だったり、『ときメモ2』の舞台「ひびきの高校」を訪れる機会があったり、時代の変遷を感じさせるメタなセリフも用意されていたりと、周年タイトルらしいファンサービスも必見です。
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ここまでが大まかな作品の概要となりますが、『ときめきメモリアル4』を語るのに欠かせないのはヒロインの一人「大倉都子(都子)」でしょう。彼女は隠しヒロインであるにもかかわらず、幼馴染という王道な設定を持ち、それでいてゲームシステムに干渉して逆に主人公を囲って来る、シリーズでも特異なキャラクターとなっています。
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まず本作における「都子」の立ち位置は、初登場時は“幼馴染”ではあるものの、“友人”という枠で扱われており、電話をかけると女の子の連絡先や、主人公の女の子からの評価を教えてくれる“お助けキャラ”です。
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初代や『ときメモ2』でも男友達が担っていた役割であり、教えてくれる評価にはシリーズ恒例である“爆弾”の有無も含まれているため、大抵の人は攻略上お世話になるでしょう。
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そんな彼女ですが電話でデートに何度も誘うと攻略対象に変化、他の女の子と同じ扱いになり、デートに誘えるようになります。順当にデートを重ねて好感度を稼ぎ、そのままゴールインしたいところですが、ここからが「都子」というヒロインの肝です。
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彼女の好感度を上げていくと、とあるイベントにて主人公が不用意な発言で彼女を酷く傷つけてしまいます。“爆弾”が爆発し主人公の評判は地の底…とはならず、「都子」は“ヤミ化(公式ラジオCD紹介文より)”してしまうのです。
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この際の「都子」は他の女の子の情報を教えてくれなくなるほか、服装や性格も一変し、暗い印象が強くなります。直接的な加害行為も無く、主人公への攻撃もせいぜい“嫌いな食べ物を食べさせる”程度のため、一般的に想像される“ヤンデレ”よりはマイルドですが、『ときめきメモリアル』のなかではクセが強めです。
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ここで諦めず彼女と交流を続けると新たにイベントが発生し、めでたく主人公と仲直り、外見も明るくなって普通のヒロインに復帰…とはいかないのが「都子」です。ヤミ化している際から引き続き他の女の子の情報を教えてくれません。
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これでは爆弾処理が困難になり、悪いうわさが広まり女の子たちから非難囂々になることが予想されますが「都子」は一向にお構いなし。「あたしは、そんな噂全然気にしないし。」と爆発による影響を一切受けないヒロインでもあります。
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結果的にこの段階まで来たら殆ど“「都子」を攻略するしかない”状況になるため、当時は気が付けば“逆に攻略されていた”と感じたプレイヤーもいるかもしれません。
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また、本作において「都子」は主人公の母親とも親交が深かったり、「女の子から告白」という正しい「きらめき高校」の伝説を知っている数少ないキャラクターのうちの一人だったりと特にヒロイン力が高め。
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コミカライズ版『ときめきメモリアル4』のヒロインに抜擢され、公式で抱き枕カバーが発売され、かつて配信されていたモバイル向けサービス「ときめきメモリアルメールドラマ」でも「藤崎詩織」や「陽ノ下光」と並んで攻略できたこともあり、メインヒロインでないにもかかわらず、公式での扱いはかなり優遇されています。
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ちなみに、本作メインヒロインの親しみやすく、健気な女の子「星川真希」ですが、彼女も彼女で公式ラジオのパーソナリティの一人として(声優の大亀あすか氏が)採用されたり、コナミのキャラクター集合イラストが掲載された50周年時の求人ページで描かれたりと、冷遇されているというわけではありません。
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これにてPSPで遊べる『ときめきメモリアル』メインシリーズ3作の紹介は終わりとなります。
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筆者個人としては、初代『ときめきメモリアル』と『ときめきメモリアル2』のリメイクが来たらとっても嬉しい。ですがそれ以上に、『メタルギア』シリーズの小島秀夫監督が携わった『ときめきメモリアル ドラマシリーズ』などゲームアーカイブス化されていない作品や、単行本化されていないコミック版『ときめきメモリアル4』など手に取りづらい作品を含め、同じコナミがリリースした『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』のように、メインシリーズを一気に復刻してくれないかと願います。
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なお、紹介した3作品を今から遊ぶ場合は、ゲームアーカイブス版『ときめきメモリアル2』>ゲームアーカイブス版『ときめきメモリアル』>UMD版『ときめきメモリアル4』の順をオススメします。
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具体的な理由として、『ときめきメモリアル4』はプレイの快適性から一番に初心者へオススメしたい作品ですが、2022年に残念ながらダウンロード版が販売終了。新規に遊ぶ場合、物理媒体であるUMD版を中古で購入してプレイする必要があるため、ハードはPSPに限られてしまいます。
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しかし、PSPはPS Storeでのコンテンツ購入ができなくなっているほか、対応している無線LANセキュリティーの暗号方式が限られており、新しいルーターなどではWi-Fiにすら繋げられない状況も起こりうるデバイスです。
そのため、単体ではゲームアーカイブス版『ときめきメモリアル1&2』の購入ができず、PlayStation Vita(PS Vita)やPlayStation3(PS3)を持っていなければ、実質的に『ときめきメモリアル4』のためだけにデバイスを用意することになってしまいます。
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ただし、他にも『METAL GEAR AC!D』シリーズや『どこでもいっしょ』など、ダウンロード販売されていない魅力的なソフトがあるため、そういったタイトルも遊ぶ予定があるならオススメです。
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一方、PS VitaやPS3は執筆時点でもPS Storeでゲームアーカイブス版タイトルを購入・プレイできます。PS Vitaに関してはPSP向けダウンロード版ゲームも遊べるので、ハードの利便性なども含めて考えると『ときめきメモリアル2』と『ときめきメモリアル』が候補として『ときめきメモリアル4』を上回ります。
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比較的難度の低い『ときめきメモリアル2』でゲームシステムに慣れてから、初代『ときめきメモリアル』を遊ぶといいでしょう。『ときメモ』の世界をより楽しみたいのであれば、『ときめきの放課後 ねっ★クイズしよ』や『ときめきメモリアル 対戦ぱずるだま』といった一部外伝作品のゲームアーカイブス版も配信されています。
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今回取り上げた3作について紹介したい所はまだまだ多く、筆者個人としても名残惜しく思いますが、本記事をきっかけに少しでも『ときメモ』シリーズに興味を持っていただければ幸いです。
※UPDATE(2024/8/18 13:56):記事画像のキャプションにある誤字を修正しました。SNSでのご指摘ありがとうございました。