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橋野桂氏をはじめとする、『ペルソナ3』『ペルソナ4』『ペルソナ5』クリエイター陣が携わる完全新作ファンタジーRPG『メタファー:リファンタジオ』。『真・女神転生(以下、メガテン)』や『ペルソナ』を手掛けてきた“アトラスの集大成”とも謳われている作品です。
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本記事では約30時間に渡り、難易度「Normal」での先行プレイで得られた本作のインプレッションを“ストーリー”、“戦闘”、“自由行動”の大きく3つのポイントに分けてご紹介します。
なお記事本文にて、公式サイトや公式ニュースの範囲でストーリーに言及するほか、掲載されている画像には1枚(ストーリー要素無し)を除き、“最初の自由行動期間が終了するまで(プレイ時間で約8時間)”の段階で撮影したものとなっています。ネタバレを極力避けたい方は閲覧にご注意ください。
「幻想劇」でありつつも理解しやすい、“目録”や“あらすじ”も完備のストーリー
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様々な種族が住まう「ユークロニア連合王国」を舞台に、目的のため王位争奪戦に参加した主人公の少年が世界を巡る旅が描かれる本作。魔法や怪物の存在が周知の事実として扱われているほか、「マジックパンク」的な技術も登場するフィクション感が強めの作風となっています。
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『ペルソナ』のような現実世界をベースにした作品に対し、本作は生活様式すら異なる「中世ファンタジー」かつ、政治的な駆け引きや、差別や格差といった社会派なテーマも取り扱っていますが、“かなり理解しやすく、幅広い層がストーリーを楽しめる工夫”が盛り込まれているように感じました。
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例えば本作は主人公の「エルダ族」など、登場する種族がオリジナルとなっており、カタカナや漢字の造語による独自の設定もそれなりに含まれています。人によっては公式サイトの説明文だけで情報量に圧倒されてしまうかもしれませんが、実際にプレイしてみると、最序盤を除き1シーン毎の新出単語は控えめな印象。
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最低限知っておかなければいけない情報はシナリオ中で説明されるほか、「見聞録(ジャーナル)」という形で舞台設定を記したTips集も実装されており、マップはもちろん、会話中に中断して読むことができるため、単語の意味などを忘れてしまっても話に置いて行かれにくくなっています。
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また、ストーリーは筆者が約30時間プレイしても“まだ終わりが見えない”と感じる程にボリューミーですが、シナリオの各所で自然な流れで“これまでの話”を振り返る場面もあれば、メニューからは各章を要約した「あらすじ」も閲覧できるので、“前回のプレイから時間が空いてしまった”なんて場合でも、プレイに復帰しやすい配慮が随所に見受けられました。
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ちなみに、本作オリジナル・ストーリーコンセプトを橋野氏が、リードシナリオプランナーは『ペルソナ3』『ペルソナ4』『ペルソナ5』のシナリオに携わった田中裕一郎氏が担当しています。『ペルソナ』シリーズのような「現代劇」と本作の「幻想劇」は毛色が違いますが、シナリオのトーンとしては体感『ペルソナ5』が近く、シリアスとコメディはおおよそ8:2のバランス。
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扱っているテーマゆえに平均的に重く、張り詰めた空気になりがちですが、合間に挟まるキャラクター同士の交流やギャグが清涼剤となって、飽きにくく、メリハリのある展開が用意されています。所々にアトラスらしい捻りもあり、「中世ファンタジー」に抵抗が無ければオススメできるストーリーです。
歯応えはあるが理不尽ではない、戦闘前から勝負が始まる「ファスト&スクワッド」
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本作はジャンルを「RPG」としており、主軸となるコマンドバトル(スクワッド)では『メガテン』寄りのプレスターンバトルが展開。そこに戦略性のあるパーティ編成、フィールド上のアクション要素、リトライ等の便利な機能が合わさった結果、歯ごたえのある戦闘と快適さが両立されています。
バトルシステムは『メガテン』寄りの「プレスターンバトル」に
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まず、本作のコマンドバトルは敵・味方、お互いのターン中に配られた「プレスアイコン」を消費して行動し、アイコンが無くなったら相手のターンに移行…という流れを繰り返す戦闘システムです。
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戦闘では、敵の弱点を突いたり、クリティカル攻撃をしたりすると、アイコンの消費数が半減されて行動可能数が増える一方、敵に不利な攻撃を行ったり、攻撃を回避されたりすると、アイコンを2倍消費、または全消費させられる、“攻撃の相性がダメージ以上の意味合いを持つ” バトルが楽しめます。
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弱点と耐性に付加価値を付けたシステムは様々な形でアトラス作品に実装されており、本作のものは『メガテン』シリーズに近い仕様でありつつも、後述する「アーキタイプ」と「ジンテーゼ」による編成の戦略性で差別化が図られている印象です。
パーティ全体を考慮した編成が重要な「アーキタイプ」と「ジンテーゼ」
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「アーキタイプ」とは、一般的なRPG作品の「ジョブ」に該当するシステムであり、魔法や物理に特化したものもあれば、搦め手が得意なものなど様々な系統が存在。主人公含めたパーティメンバーはこのアーキタイプを身につけ、使い分けて戦うことになります。
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また、アーキタイプには耐性と弱点が存在するほか、それぞれ決まったスキルを覚え、一度覚えたスキルは他のアーキタイプに継承し、付け替えられるため、強みを伸ばす回復・補助スキルや、弱点を補完するパッシブスキルなど、様々な組み合わせを模索可能です。
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ここで “パーティメンバー全員に強いアーキタイプを付け、強いスキルを継承させるのが最適解になってしまうのではないか?”、 “スキル編成が自由過ぎるとパーティの個性が無くなるのではないか”という点が気になる方もいるかもしれません。
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筆者がプレイした範囲では、アーキタイプ1体に強いスキルが集中しないよう、習得スキル内容が調整されており、継承できるスキル数も少ないため、全体的に“1体当たりの役割をハッキリさせ、あえて器用万能になりにくいバランスにされている”印象を受けました。そしてこれから紹介する「ジンテーゼ」により、パーティ単位で編成する重要性が高まっています。
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「ジンテーゼ」は戦闘中に使える特殊なスキルであり、使用にはプレスアイコンを通常より多く消費するほか、“パーティ内に特定のアーキタイプの組み合わせが無ければ使えない”という特徴があります。効果には敵全体を対象とする属性魔法や、味方全体への補助魔法、単体では行えない属性攻撃など、“ジンテーゼを前提にパーティを組んでもいい”と思えるほどに強力・便利なものが多めです。
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『メガテン』『ペルソナ』ではメンバー単体で行えたようなスキルも「ジンテーゼ」に取り入れられているため、本作でパーティを編成する際は、メンバー1人1人の強さより、“パーティ全体で何が出来るか?”を意識させられました。
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なお、パーティには隊列の概念もあり、メンバーを前列と後列、どちらに配置するか次第で“近接攻撃の威力”、“敵から受けるダメージ”が増減します。編成時はメンバーが近接攻撃担当か、魔法・支援担当かといった点を考慮しながら決める一方、戦闘中にはプレスアイコンの消費無しに隊列を変更できるので、“ダメージが多い味方を後列に移動させ、一旦回復に専念する”など、状況に応じた使い分けもできます。
アクションゲームさながらの駆け引き、戦闘前の選択肢が増える「ファスト」
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ここまでコマンドバトルの説明をしましたが、本作にはアクションゲーム的要素も存在。本作では「ファスト」として、フィールド上を徘徊する敵に干渉して戦闘が始まる、「シンボルエンカウント」方式を発展させたようなシステムが採用されています。
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シンボルエンカウントを採用しているゲームの多くは“背後から敵に攻撃すれば、こちらに有利な状態から戦闘から始まる”、いわゆる「バックアタック」を実装していますが、相手の向いている方向に左右される都合上、積極的に恩恵を受けにくい側面もありました。
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一方、本作はバックアタックに加え、フィールド上で正面から攻撃&気絶させ、強制的にこちらに有利な状態からコマンドバトルを始めることが可能。さらに相手が格下なら、コマンドバトルに入らずそのまま倒せてしまいます。
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しかし注意しなければいけないのが、フィールド上では敵も同じく攻撃できるようになっている点です。同格以上の敵に攻撃されてしまった場合、“相手に有利な状態からコマンドバトルが始まってしまう”ため、相手の攻撃を避けつつ、こちらの攻撃を加えて気絶を狙う、アクションゲームのような駆け引きを楽しめるシステムとなっています。
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ちなみに、「ファスト」における操作難度ですが、敵の攻撃前にわかりやすい合図があり、パターンも読みやすいため、“アクションゲームに慣れていれば、体感8割は気絶に成功できる”程度。フィールド上で攻撃せずとも、最初からコマンドバトルを仕掛けることもできるので、アクションゲームが苦手・嫌いといった方も安心の仕様です。
わかりやすいチュートリアルに“いつでもリトライ”、先人を参考に出来るネットワーク機能も
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戦闘だけで多くのシステム・要素が絡み、一見ハードルが高い本作ですが、初心者から上級者まで、様々なユーザーに配慮した施策もあります。
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例えば、本作の最序盤では全ての要素が解禁されず、小刻みにチュートリアルを挟みつつ順を追って解禁。各解説もゲームテンポを阻害しない程度の長さとなっており、RPG初心者でもいきなり敵前に放り出されることなく、本作の戦闘に少しずつ慣れていけます。
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さらに、本作コマンドバトルはアトラス作品の例に漏れず、通常の雑魚敵ですら弱点や不運が重なれば全滅させられる難度ですが、「リトライ機能」を使えば“途中からでも戦闘開始時に戻る”ことが可能です。その気になれば、相手の耐性・ギミックを確認してから戦闘をやり直せるため、初見では対応が難しいボスでも即再戦でき、試行錯誤がしやすい配慮がされています。
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なお、“それでは簡単になりすぎるのでは?”と思う方もいるかもしれませんが、リトライ機能を使っても、“相手に先制を取られた”“敵のギミックに有効なスキルを持って行かなかった”など、不利な状況で戦闘を開始した場合、やり直しても同じ状況が再現されるだけ。あくまで“現状のパーティによる理想的なムーブがしやすい”機能に留まっているので、準備不足を感じたら思い切って逃走orセーブ・オートセーブ地点まで戻った方が有効な場面もあります。
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RPGに慣れない方は“じゃあどう準備すればいいんだ!?”となってしまうかもしれませんが、本作にはネットワーク機能を介して他プレイヤーのクリア時のパーティ編成を確認したり、ゲーム内施設で攻略に役立つコツを学べたりするため、これらを活用するのもいいでしょう。
QoLもバッチリ!『ペルソナ』シリーズから引き継がれたカレンダーに沿う日常生活
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本作のゲーム進行は基本的にカレンダーに沿って1日ずつ経過し、期日までに目標の達成を目指しつつ自由に過ごし、期日が来たらイベントを挟んで次の目標へ…という形です。『ペルソナ』では3以降のナンバリング作品でお馴染みのシステムとなっていますが、本作はそれ以外の要素も同シリーズから引き継ぎつつ、アレンジが加えられています。
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1日は昼と夜の2パートに分かれており、自由行動中に取れる選択肢は様々です。具体的には、主人公の人間力を磨いて「王の資質」を高めたり、「支援者」と交流して絆を深めたり、街の人々から依頼(クエスト)を受けたりと、最近の『ペルソナ』シリーズをプレイ済みの方であれば“あれに相当するシステムかな”と想像しやすいかもしれません。
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本システムで筆者が個人的に着目したのは、“「支援者」との交流”の部分。支援者と過ごす際、会話や行動の選択肢も用意されていますが、少なくとも筆者がプレイした範囲では“どの選択肢を採っても”絆が1段階深まりました。
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本作はカレンダー形式でゲームが進行する都合上、1日あたりの行動は効率的に進めたいところですが、この仕様により“どの選択肢が最も好感度を上げられるか”を気にする必要が無いため、ストレスなく支援者と交流していけます。
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また、自由行動中は“絆を深められる支援者がいないか、”“受けられる依頼が無いか”を一発で確認したり、支援者の元にファストトラベルする機能もあったりとQoLもバッチリ。依頼の過程で本編とは関係ないダンジョンに挑むこともでき、“暇になることも無ければ、忙しすぎることも無い”、いい塩梅でダレることなく自由行動期間を過ごせました。
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『メタファー:リファンタジオ』の先行プレイのレポートは以上となります。筆者は『メガテン』は外伝含めそこそこ触れ、同作から派生した『ペルソナ』シリーズはナンバリング作品を一通り遊んだ程度ですが、本作からは両シリーズから引き継ぎつつ、新たな形に仕上げた“アトラスの集大成”に相応しいタイトルであると感じました。初心者からRPG好きはもちろん、“学園もの以外のカレンダーシステムを使ったRPGを遊びたい”といった方にもオススメできるタイトルです。
『メタファー:リファンタジオ』は、PS5/PS4/Xbox Series X|S/PC(Steam/Windows)向けに10月11日発売予定です。