2024年の年末に差しかかった頃になり、『ドンキーコング』が大きな注目を集めるようになりました。
USJの新エリア『ドンキーコングカントリー』の好評だけでなく、ゲームボーイ Nintendo Switch Onlineでの『スーパードンキーコングGB』の配信、そして2025年1月の『ドンキーコング リターンズ HD』の発売と、話題には事欠きません。今回の記事では、そんな『ドンキーコング』のこれまでの足跡を今一度振り返ってみたいと思います。
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というのも、『ドンキーコング』ほど「世代によって印象に温度差があるゲーム」は他になかなかないからです。
◆80年代育ちの人にとっての『ドンキーコング』とは
アーケードゲームの『ドンキーコング』が稼働したのは、1981年7月のこと。この作品は、任天堂にとっての大きなターニングポイントとなると同時に、ゲームの歴史そのものを変えてしまいました。
鉄骨の上を走って、ドンキーコングの投げる樽をジャンプで避けながら最上階を目指す。字面で書けば非常に簡単ですが、この作品のアクション性は当時としては革新的な説得力を帯びていました。そして、この『ドンキーコング』は様々な家庭用ゲーム機に移植されていきます。
その中でもファミコン版『ドンキーコング』は、限られた容量で極力アーケード版に近い仕上がりを目指した良作です。この時代、アーケードゲームの家庭用移植版といえば面数の大幅削減は当たり前、グラフィックもチープな代物でした。ファミコン版『ドンキーコング』もいくつかの制約を受け入れる一方、アーケード版に準ずるボリュームの確保に成功しました。
70年代生まれ80年代育ちの人にとって、この『ドンキーコング』が「人生初のドンキーコング」だったはずです。
◆90年代のドンキーコングは「超絶グラフィックの伝道者」だった!
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しかし、筆者を含めた80年代生まれ90年代育ちにとっての『ドンキーコング』は、それとはまた様子が異なります。
1994年11月発売の『スーパードンキーコング』は、当時の子供たちに極めて大きな衝撃を与えました。スーパーファミコンの性能の限界に挑戦するような立体的なグラフィック、ため息の出るような高クオリティーの音楽、そして高低差の激しいアクション。横スクロールでありながら、ドンキーとディディーは『スーパーマリオブラザーズ』以上に頻繁なジャンプを行い、いくつものギミックが仕掛けられたステージを攻略していきます。
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理想的な進行方向に沿うようバナナが配置され、それを取りながらできるだけ短時間でステージを攻略するタイムアタックが、当時の小学生の間で流行しました。
◆ゲームボーイでこのグラフィック!
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その上で、1995年7月に発売された『スーパードンキーコングGB』にも言及する必要があります。
この時代の携帯機は、まだ白黒画面のものばかりでした。ハードのスペックも高いものではなく、全体的にボリューム不足のソフトが目立ちました。しかし、その中でも数多くの名作が存在します。『スーパードンキーコングGB』も、まさにその一つです。
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ストーリーやステージ内容は異なるものの、『スーパードンキーコングGB』はスーパーファミコンの『スーパードンキーコング』のルール、操作性、音楽、そして何とグラフィックまで再現している意欲作。アーケードゲームを家庭用ゲームに移植するのが極めて困難だったように、スーパーファミコンで確立した技術やシステムをゲームボーイに収めることはまさに「至難の業」でした。それをやりつつ、遊びごたえのあるステージ数も確保していた『スーパードンキーコングGB』は奇跡の一本と言えます。
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当時小学生だった筆者自身、「これはすげぇ!」と目玉を飛び出していたことをよく覚えています。
◆『ドンキーコング』はコンピューターゲームを進化させた!
このように、80年代生まれ90年代育ちの人にとっての『ドンキーコング』は、「最先端技術の旗手」としてのイメージが強くあります。もっと言ってしまうと、ファミコンの『ドンキーコング』は「何で3面しかないんだ? ボリューム不足だ!」とも感じていたほど。大人からすれば「ほんの10年」の間に、コンピューターゲームは長足の進化を遂げたのです。
60年代育ちの人にとってのプロ野球読売ジャイアンツは、第一に長嶋茂雄さん、第二に王貞治さんでした。しかし、70年代育ちの人にとっての巨人は選手としての長嶋さんが衰え、引退して監督になった場面のほうが印象に残っているはずです。同じ球団、同じ選手でも、世代によってその見方は異なります。
それと同じ現象が、『ドンキーコング』にも見受けられるのです。
ですが、どの角度から観察したとしても、『ドンキーコング』がコンピューターゲームの進化に多大な貢献を果たしたということは不動の事実。このあたりでは、もしかしたら『マリオ』を上回る功績を挙げていると言えるのかもしれません。
そんな『ドンキーコング』の功績を振り返りつつ、過去の名作をプレイしながら年末年始を過ごす……というのも、休暇の過ごし方としてはアリかもしれません。