文化庁は3月11日、令和6年度(第75回)芸術選奨 文部科学大臣賞および新人賞の贈呈式を都内ホテルにて行いました。
阿部サダヲさんや青山剛昌さんなど各界の著名人が選ばれる中、ゲーム関係者からはソラの桜井政博氏とアトラスの橋野桂氏が受賞。本稿では、そんな贈呈式の様子をお届けします。
◆桜井政博氏、アトラスの橋野桂氏が登壇!贈呈式をレポート
芸術選奨は、文化庁が芸術各分野において国内外で優れた業績を上げた人にや新生面を開いた人へ賞を送るもので、これまでに俳優・佐藤浩市さん(令和5年度)やアニメーション監督・新海誠氏(令和4年度)などが受賞しています。
贈呈式には、あべ俊子文部科学大臣と漫画家で文部科学大臣政務官の赤松健氏をはじめとする文化庁関係者に加え、芸術選奨各賞に選ばれた48名(代理含む)が登壇。あべ文部科学大臣より各受賞者に賞状が手渡されたほか、代表挨拶として歌舞伎俳優の坂東彌十郎さん(演劇部門)と作家の井戸川射子(文学部門)さんがスピーチを行いました。
今回の芸術選奨では、桜井氏が2022年から2024年にかけて投稿したYouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」で文部科学大臣賞に選出。橋野氏は、自身がクリエイティブディレクターを務めた2024年発売のRPG『メタファー:リファンタジオ』で新人賞に選出されました。両氏はメディア芸術部門での受賞となり、この部門では他にも漫画家・青山剛昌さんや映画「ルックバック」で監督・脚本・キャラクターデザインを務めた押山清高氏が選ばれています。



◆「大変面白がってます」YouTubeチャンネルで受賞した桜井氏に直撃
贈呈式の後、祝賀会と受賞者インタビューが実施されました。桜井政博氏への合同インタビューも行われ、受賞に対する気持ちや今後について伺いました。

ーーまずは、受賞おめでとうございます。今回、YouTubeチャンネルとしての受賞になりました。選考過程でも作品定義について議論されつつ、多くの人々に影響を与えたことが評価されています。今回の受賞についてお聞かせください。
桜井私個人としては、大変面白がっています。今までゲームディレクターをずっと続けてきたわけですけども、YouTubeチャンネルが評価されて今に至っている。とても興味深いと思います。
ーーゲームをつくる人に向けたコンテンツが受賞したということで、ゲーム業界を目指す人々にメッセージを頂けないでしょうか。
桜井そうですね、やっぱり「自由にやれ」ということが一番言いたいですかね。今回チャンネルを作るにあたって自分の考えを押し付けるのは良くないと、実は思っています。自分が思っていることとか伝えていることは、あくまで一つの考え方に過ぎないので。
チャンネルでも言っていますけども、それぞれの人の「下駄を履かせる」という目的のもとにできています。それに倣えというわけではなくて、それをヒントにして、どう受け入れるのか、何をするのかが大事だと思います。
桜井要はそれぞれの人たちが、自分が信じる方向に突き進んで色々な方向に作品を尖らせてくれるといいなと思っています。なので、お互いに頑張りましょうということで。
ーー今後、第2弾・第3弾のようにまだまだもっと発信していきたいものは桜井さんの中に詰まっているのでしょうか?
桜井いや~また作ろうとは思っていないですね。お見せしたものはゲームディレクターの、ごくごく一部のノウハウや知見にすぎないものなので、ネタにできるものはいっぱいあります。だけど、やっぱり大変過ぎるんですよね。
同じように続けるのは難しいとは思うのですが、形を変えてノウハウを伝えることはあり得るのではと思っています。せっかくチャンネルを持っているので、他のいろいろな告知に使える可能性も考えています。
ーー中国のゲーム市場が盛り上がっていると肌で感じているのですが、日本のゲーム業界において桜井さんが思う「こうしたらいいのに」というアイデアのようなものはありますか?
桜井自身のアイデアというわけではないのですが、ゲーム業界の傾向として「日本人は日本人の好きなものを突き進んだほうがいいぞ」と思っています。少し前にアメリカで色々な作品が受けているから、アメリカナイズされたようなものを作ろうという文化は確かにありました。デファクト・スタンダードに寄せるといいますか。
ですが、意外と海外のゲーム好きというのはそういうところは求めていなくて、日本は日本の独自性や面白さみたいなものを求めているように感じます。先ほどの話にも通じるところもあるのですが、好きなように作って、それを受け入れられる人が楽しむというのが理想なんじゃないかなと思います。
ーーありがとうございました!