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元は田舎村の下僕でありながら、戦場に出て武功を上げ、三百人将となった信。

その信が率いる｢飛信隊｣は、秦国の特殊部隊として戦場を駆けまわっていました。

熾烈な戦を戦い抜いてきた彼らは数多の勝利を積み重ね、その存在は敵にも味方にも知られるようになっていました。

一方、王宮内では秦国の若き王・嬴政と国の実権を握る丞相・呂不韋の権力争いが激化。

様々な思惑・野望・激情が渦巻き、今、新しい時代が動き始めます！

昨年、王騎が討たれた秦趙戦の仇である趙国宰相・李牧が突如秦国へと来訪するといいます。

騒動の発端は他ならぬ呂不韋であり、この異常事態に、軍事総司令の昌平君より王宮に呼び寄せられた信と羌瘣は衛兵へと姿を変え会見へと紛れ込みます。

緊迫した雰囲気の中、固唾を呑んで見守る一同とは裏腹に和やかに会話をすすめる呂不韋と李牧。

その二人の様子に戸惑う信たちでしたが、不意に呂不韋は｢李牧を殺す｣と言い放ちました。

呂不韋と李牧の激しい駆け引きの末、秦趙同盟を成した両国はそれを祝して盛大な宴会を催すことになります。

会場内には、その場に出席した信と羌瘣が思わず目を奪われる程華やかな光景が広がりますが、それとは裏腹に秦趙両国の間には張り詰めた空気が漂っていました。

そんな雰囲気をよそに意気揚々と宴会の席に付く信でしたが、その向かいには仇敵・李牧の姿が。

大将軍・王騎を殺した張本人である李牧に対し、信は思わず殺気を漲らせます。

五年で将軍になることを政に誓い、再び戦場へと戻った信はひたすら武功を上げることを目指します。

しかし、大きな手柄を上げるほどの戦には出会えず焦りを募らせる信。

そんな中、信たちのいる前線地帯で秦国軍を押し返すべく魏国軍が集結し、思わぬ大軍と化していました。

この好機に、飛信隊は敵将を討つべく単独で敵本陣を急襲します。

しかし、相手の防陣を突破した先にいたのは、既に敵将を討ち取り悠然と佇む秦国の若き将・王賁でした。

貴士族のエリートで構成された秦軍特殊三百人隊・玉鳳隊を率いる王賁は、戦の素人集団である飛信隊を｢蟻｣と呼び蔑みます。

その屈辱に思わず剣を抜く信でしたが、王賁が繰り出した槍は信を圧倒し、力の差を見せつけました。

その夜、悔しさに吠える飛信隊は、玉鳳隊を出し抜くべく自分たちにしか出来ない過酷な作戦を実行することを決意します。

一方、王宮では政と呂不韋の権力争いが続く中、予期せぬ人物が政陣営に接触を図ってきました。

大王派と呂不韋派とは別に新たに姿を現した第三勢力・後宮。

そこは政の母・太后が支配する特別な領域であり、絶大な勢力を擁しますが、これまで権力争いには興味を示さず静観していました。

しかし、その後宮から大王派である肆氏の元に突如書簡が届けられます。

後宮勢力を取り込めば陣営強化に繋がりますが、太后の闇を知る昌文君は強い警戒心を示すのです。

この事態に大臣たちが対応を議論をする中、政は誰にも話すことなく一人後宮へと向かいます。

かつて秦国と趙国の間で起こった長平の戦い。

この戦で秦国は勝利を収めるが、未曾有の大虐殺を行ったことで趙国から深い恨みを受けることとなります。

その恨みは趙国に残された秦国の王子・嬴政に向けられ、彼は幼い頃から侮蔑と虐待の日々を暮していました。

月日は流れ、時の秦王崩御を機に、政を秦国へと逃がす極秘の計画が趙国の闇商人・紫夏の元に持ち込まれます。

紫夏はこの仕事を受けるかどうかを決める為、政に会うことを要求するのです。

失敗すれば命がないことを知りながら、紫夏は政を秦国へ送り届けることを決意し、一行は趙国を抜ける為の5つの関門へと向かいます。

紫夏の手腕により1つ目の関門を通過しますが、その一方で、政は虚ろな目のまま何かに怯えるかのように夢にうなされ続けます。

その様子を見た紫夏は政の身に異変が起こっている事を感じ取るがどうすることもできずにいました。

そんな中、2つ目の関門を通過する際、政が隠れている俵に突如矢が射ち込まれます。

味も匂いも痛みも何も感じることが出来ず、自分は壊れてしまっていると語る政。

過去の亡霊に縛られ前に進むことが出来なかった政ですが、紫夏が差しのべた手は政を闇から強く引き上げ、その手に救われた政は正気を取り戻します。

最後の関門を抜けた一同は秦国への道を急ぎますが、ついに趙国の騎馬隊に追いつかれてしまいました。

戦いながらの逃走は熾烈を極め、敵の猛攻に次々と仲間が倒れていく中、紫夏は決意の表情を浮かべます。

始皇5年、秦国は魏国の地・山陽一帯を領土とすべく、大軍を興して魏国へ侵攻させます。

その中で、飛信隊は秦国総大将・蒙驁率いる本軍に組み込まれ、この戦で大功を狙う信は気合十分で行進するのです。

その頃王宮では、後宮の権を握る実力者たちが政の元へと来訪し、これで助力を得られると、大臣たちは大いに盛り上がります。

しかし、ある夜、宮女・向は政の敵であるはずの呂不韋と仲睦まじく歩く太后の姿を偶然目撃してしまいます。

王宮内の勢力争いにおいて、実の子である政に協力したかと思われた太后でしたが、実は政の宿敵・呂不韋と裏で繋がっていました。

二人の密会の現場を目撃してしまった宮女・向は身を潜めるも、気配に気づいた宦官の手により深手を負ってしまいます。

王宮内に異変が起き始めているその頃、戦場では、魏国に侵攻中の秦国軍の中にいる信、王賁、蒙恬の三人の若き将が、それぞれ大きな武功を目指し、ついに最初の城・高狼へと到着します。

宮女・向の命がけの証言により呂不韋と太后の不義を知った政陣営は、一気に敵陣営を打ち砕くべくその事実を触れ回ります。

その効果は即座に現れ、呂不韋陣営を大きく揺るがすこととなります。

一方、高狼城を攻める秦国軍は、敵の巧みな防御術の前に苦戦を強いられていました。

幾日たっても戦局は動かず、徐々に士気が下がっていく秦国軍。

強固な城壁を前に飛信隊も手が出せずにいましたが、そんな中、玉鳳隊が単独前へと出ます。

井闌車を用い、高狼城の城壁の上へと攻め込んだ王賁。

その勢いのまま玉鳳隊は城門を奪いますが、開いた扉から城内へと攻め込んだのは蒙恬の楽華隊でした。

そして楽華隊による電光石火の早業で秦国軍は城を陥落させます。

ところが、その奪い取った城では秦国軍兵士による魏国の民への凌辱行為が行われ始めていました。

戦がきれいごとだけではないと知りつつ、そのあまりに悲惨な状況を目にした信は激高し、相手が秦兵にも関わらず剣を向けます。

かつて趙国三大天の一人として天下を恐れさせ、秦国六大将軍とも互角の戦いを繰り広げた廉頗大将軍。

しかし、時の趙国王の命に背いた事で国を追われ、魏国へと亡命する事となった廉頗は、それから一度も軍を率いる事はありませんでした。

しかしこの度、魏国王の命により国に攻め入ってきた秦国軍を討つべく再び戦場に立つ事になったのです。

そして大戦を前に、廉頗と共に死線を潜り抜けてきた四天王の一人・輪虎が密かに動き出します。

秦国軍は魏国侵攻後、三つ目の城となる近利関も落とし、その戦いの中で飛信隊も敵将を討つ武功を上げます。

しかし、喜びに沸いていたのも束の間、廉頗四天王・輪虎の暗躍によって秦国軍の千人将が次々と斬られていきます。

事の深刻さを感じた秦国軍は警備を強化するも輪虎を捕える事はできませんでした。

そして次の日、近利関を出立した秦国軍に再び輪虎が襲い掛かります。

その殺気に対峙した者たちは怯んでしまいますが、信は真っ向から斬りかかります。

魏国に名だたる武将はおらず、亡命した廉頗も軍を率いる事はないと考えられていました。

しかし、その廉頗が出陣した事が秦国軍に伝えられると、思わぬ大人物の登場に一同は焦りを隠せないでいました。

しかし、総大将・蒙驁は柔和な笑みを浮かべたまま動じる様子はありません。

ですが実は、蒙驁は若き頃、幾度となく廉頗と戦い一度も勝った事がないという過去を持っていました。

その夜、不思議な癖を持つ蒙驁は、老人歩兵に化け陣内をこっそり徘徊します。

輪虎の手により多数の千人将を失った秦国軍は、急遽、現在の三百人将の中から二名を千人将へと昇格させるといいます。

一同が注目する中、選ばれたのは玉鳳隊・王賁と楽華隊・蒙恬でした。

その結果に信は悔しさを隠せませんが、どうすることもできませんでした。

ところが、総大将・蒙驁の推挙により、信も臨時ではあるが千人将へと昇格を果たすこととなります。

そして、新しく加わった仲間と共に千人隊となった飛信隊は、信の檄で心を一つにします。

決戦の地・流尹平野へと到着した両軍。

此度の戦で蒙驁軍の副将を務める二人の武将、桓騎と王翦、この二人を率いた蒙驁は穏やかな中にも決意を秘め、長年の敵である廉頗に挑みます。

対する廉頗も共に熾烈な戦場を戦い抜いてきた四天王を従え、激突の刻を待ちます。

その顔には余裕の笑みを浮かべ自信と闘志が満ち溢れていました。

そして両軍の陣形が整うと、今、ついにその第一陣が激突します。

戦の序盤、勢いで勝っていた秦国軍ですが、時と共に第一陣として突撃した急造の千人隊は統率がとれず敵に押し込まれていきます。

それは玉鳳隊も同様であり、その隙を狙った輪虎が王賁に襲い掛かります。

王賁は怯むことなく輪虎に果敢に打ち込みますが捕えることはできません。

第一陣の苦戦を見た秦国軍は第二陣を送り込むも、やはり急造の千人隊は次々と崩されてしまいます。

しかし、その中で飛信隊だけは怒涛の攻撃をみせます。

猛威をふるう呂不韋に対し、成蟜と手を組んだ政陣営はその力により勢いを盛り返し、王宮内での発言権を持つ左丞相に昌文君を据える事に成功し、秦国の掌握、さらには中国統一への足掛りを得ます。

一方、李牧と相対した信は、その際の李牧の言動から、今後中国全土に更なる嵐がおこるであろう事を予感するも、それを乗り切る為決意を新たにします。

中国統一を目指す政と、天下の大将軍を目指す信。

二人の目は、それぞれの道をしっかりと見据えていました。