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【DEVELOPER'S TALK】手のひらサイズでも「ACE」級、iPhoneアプリ『ACE COMBAT Xi Skies of Incursion』開発チームのチャレンジ

バンダイナムコゲームスがiPhone/iPod touch向けに配信中の『ACE COMBAT Xi Skies of Incursion』は、バンダイナムコゲームスとして初めて、シリーズを手掛けてきたメンバーが直接iPhoneに挑んだ作品であり、シリーズの原点に立ち返った作品でもあります。

ゲームビジネス 開発
ACE COMBAT Xi Skies of Incursion
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■サウンドの出来も「エース」級

―――今回は音楽もこだわったポイントだと言われていますよね

山崎: iPhoneは元々が音楽プレイヤーなのでサウンドのポテンシャルが高いハードです。据え置きゲーム機と比べても遜色ないくらい高音質のサウンドが再生できます。作り手としてもそれを視野に入れて、周波数の高い、よりダイナミックレンジが広いものを使っています。良いサウンドになったと自信はあります。

―――無線通信のリアリティやスロットルを効かせた時のサウンドなどこだわりを随所に感じます

山崎: そのあたりは特に意識したポイントですね。とはいえモバイル端末ですので、多くの制約の中で制作していて、家庭用ゲーム機と比べれば音のバリエーションは少なめではあります。これまでの『エースコンバット』シリーズは自社で開発しているサウンドエンジンをフルに使ったような贅沢な実装をしていたので、それに遜色ないサウンドに聞こえるようするためには、どの音を選べば効果的なのか、かなり吟味しながら作りましたね。

加藤: 久々にサウンドコーディネーターが職人技を活かせるゲームでしたね(笑)。

山崎: サウンド再生にはCRIさんのミドルウェア「ADX」を使っています。実は同時最大6音しか鳴っていませんが、その中で、いかにかち合わずに、自然に聞こえるか。昔のノウハウを引っ張り出して仕様を書きました。エンジン音もリアルタイムでのピッチの変更ができないんですが、色々と小技を使ってアップダウンを実現しています。

加藤: 家庭用ゲーム機ではかなり贅沢な同時発音数でやっていますので、それに比べると、作り方も原点回帰した形で、気持ちのいい音を、気持ちのいいタイミングで鳴らす、ということを職人技でやっていきました。それにiPhoneは音楽プレイヤーの素地がありますので、アンプはとても良いものを持っています。なので高音質で、感情を揺さぶるようなサウンドが実現できたと思います。

―――東京ゲームショウのブースにもヘッドホンがありましたね

上田氏
上田: 実はヘッドホンの設置はやめようという話もあったのですが、せっかくのiPhoneゲームなのに音を聴かせないのはおかしいと説得して実現しました。携帯機とは思えないような良いサウンドになっていますし、会場は賑やかなので、ヘッドホンで聴いてもらうことができてよかったです。プレイしていただいたユーザさんの評判もとても良かったですね。

山崎: 東京ゲームショウで予想以上に好評をいただいたので、当初の予定より頑張ってしまいました(笑)。それで無線ボイスが豪華になっています。

加藤: 東京ゲームショウでの反響もそうですが、CRIさんのミドルウェアを組み込んで、初めて音が鳴った段階で、3人とも「これはいける!」という確信はありました。それでサウンドを前面に出していこうということになりました。

■エースコンバットとエアロダンシングの夢の競演?!

―――今回は『エースコンバット』シリーズとして初めてCRI・ミドルウェアの技術を採用いただいたのですが、理由をお聞かせください

加藤: 『ACE COMBAT Xi Skies of Incursion』はハードの性能をフルに使わなければ快適に動かないタイプのゲームであることは最初から分かっていて、まずはサウンドに割ける限られた性能の中で、音が鳴るかどうかが最初の課題でした。もちろんバンダイナムコゲームスとしてもiPhoneでのサウンド再生技術も他のハードウエア同様、研究しています。ただ、サウンドドライバなどのツールは、道具(ツール)である以上、使用条件や環境によって向き不向きがあります。それを無視して自前にこだわるあまり、お客様に提供するものの完成度が落ちてしまったり提供時期が遅れたりとというのは、あってはならないことだと思っています。

今回、自社のものも含め、様々なツールをテストしていく中で、CRIさんのミドルウェアが、最も我々の使用条件や環境に適していて、「良いものが作れる」との確信が持てましたので、採用することに躊躇はありませんでしたね。

―――「エースコンバット」は音質ももちろんのことリアルタイム性が大事なゲームだと思います。レスポンスはいかがでしたでしょうか?

江藤: もちろんこだわっています。音を出したいタイミングで出せるように、いろいろとチューニングしています。3Dの描画とサウンド再生のバランス取りは苦労した部分です。

山崎: クイックに再生したい音はメモリ上に置いて、BGMなどのレスポンスがあまり必要ない音に関してはストリーミングで再生しています。ADXのマルチストリーミング機能を使って、メモリ消費を効率化することができました。

金子: 今回、ゲーム機向けに提供してきたADXをiPhoneに移植するにあたって、メモリ使用量やCPU負荷などかなりのチューニングをしました。家庭用ゲーム機とはちがって、iPhoneならではの苦労も多々ありました。今回ADXをお使いいただいて鍛えていただいたので、今後も継続的にブラッシュアップしていきます。

―――CRIは以前は競合とも言えるフライトシミュレーター『エアロダンシング』を開発していた会社だというのは・・・

山崎: もちろん存じておりました(笑)。

―――話をもらった側のCRIとしてはどんな心境だったのでしょうか?

幅氏
幅: 『エースコンバット』シリーズとしてミドルウェアを採用いただいたのは今回が初めてということで、CRIの人間としては感慨ひとしおでした。それに『エアロダンシング』シリーズには全て携わっていたこともありますので、フライトゲームには思い入れが強いです。。また、実は私がゲーム業界に入るきっかけとなったのが『エースコンバット2』だったんです。遊んで非常に感動、感銘を受けて「これがゲームだな」と。今回、そんな自分にとっても意味深いタイトルの縁の下の力持ちとして関わらせていただいたのはとても感慨深いですね。

幅: 実はスタッフクレジットにも名前を載せていただきまして・・・。これは自分で気づいたんじゃなくて、『エアロダンシング』時代に全国を行脚するイベントをやったのですが、その当時のユーザさんから「幅さん、エースコンバットチームに入られたんですか?」と(笑)。本当に驚きました(笑)。

江藤: CRIさんには非常に多大なサポートをいただいたのでクレジットにも入れさせていただきました。

―――今ではミドルウェアメーカーのCRIが当時はゲームを手掛けていたんですね

江藤: 「エアロダンシング」の編隊飛行は楽しいですよね~。あれをもとに『エースコンバット』でオンラインで皆で編隊飛行をしている人たちがいます。シンクロナイズドスイミングのように掛け声をかけながら。通信のラグも計算して、まさに"変態"的な・・・。

加藤: まあ、操作という点では、自動車ができるまで人間は馬の速度以上を体験したことがなくて、自動車ができて何十年で時速百キロの世界を一般の人が操縦するようになったんですから、もう何百年かすれば普通の人も時速300キロも操縦できるようになるかもしれませんね。とりあえずSFに出てくる浮上式の車はきっと戦闘機と近いような経験になるでしょうから・・・。

―――その日に備えてエースコンバットを練習するのが良さそうですね(笑)


■こんな地域でも売れる

―――実際にiPhoneでゲームを作ってみて感じられたことはありますか?

加藤: 一つ感じたのは、iPhoneの遊びはアーケードゲームと家庭用ゲームの間のような存在かもしれないということです。ゲームセンターでは、色々な種類のゲームを眺めながら、自分が興味のあるゲームを選んで少しずつの時間を楽しむというスタイルです。家庭用ゲームは吟味して買ったゲームをじっくりと構えて遊ぶというスタイルです。実は私も今でこそ専ら家庭用ソフト制作に携わっていますが、入社当時はアーケードゲームを作っていました。そんなことを考えると、私としてはもう一度、自分のゲーム作りの原点に立ち返れるようなハードじゃないかと感じました。

幅: iPhoneのゲームにはアーケードとの共通点が確かにある気がしますね。昔ゲームセンターで味わった、色々な遊びが詰まっているワクワク感がありながら、現代的なネットワーク対応も備えている、不思議なポジションの製品ですよね。

―――ワールドワイドで配信できるという意味で、今まで家庭用ゲーム機の『エースコンバット』が発売されていなかった国でも購入できるようになっているんですよね

江藤: 凄く面白いデータが出ています。今まで発売してこなかったような中東や中国、ロシアといった地域でも反応が良いんです。ランキングも上の方にいっていて、ロシアでは2位になっていました。残念ながら今回はロシア語には対応してないんですけどね。ロシア語なのでレビューは読めないですが、星は付いていたので、ちゃんと直感的に理解されているんだなあと。主要地域の事情はある程度把握できるんですが、通常の家庭用ゲームソフトでは我々に入ってくる情報が少ない地域でも意外と買っていただいていて、国境はないんだと実感するばかりです。

左:加藤氏、右:山崎氏
加藤: 反応については江藤の言った通り「おおー」という感じですよね。実際の声は、私には読めない言語の地域も多いので、星でしか判断できませんが・・・(笑)。

江藤: 家庭用ゲーム機の市場はまだ難しい地域が沢山あると思います。そういうところでアップルさんがこともなげにやっているというのは、ただただ驚きです。気軽にアプリを買えるというのが大きいと思いますが、10年前では考えられなかった世界ですね。

加藤: そういう意味ではiPhoneが基本は電話であるという強みがあるかもしれません。携帯電話は、起きている時はほぼずっと身につけている、現代で最も身近な道具になっています。「遊び」自体は人間にとって欠かせないものと思いますが、ゲーム機、エンターテイメント機は生活と心にある程度のゆとりを持てないと入れ込めないものです。、iPhoneは生まれは日常に必須の、人間に最も身近な道具の一つで、そこに我々が蓄積してきた、幅の拾いエンターテインメントを提供する場所を作ってくれたという気がしますね。

―――iPhoneで成功する方法のようなものは見えてきましたでしょうか?

加藤: まず、ビジネス的な観点でいくと、家庭用ゲーム機と同じ体制で挑むと痛い目を見るなと途中で気づきました。途中で気づいたのでなんとか結果的に痛い目を見ることはなかったのですが(笑)。一つには、ユーザに何を楽しませるかという取捨選択を、目的を明確にして果断速攻で臨む必要があると思います。考えがブレると手戻りがあったりと途端に手間がかかって、ビジネスとしても難しくなります。もちろん家庭用ゲーム機でも同様でありますが、より精度とスピードが求められるんじゃないでしょうか。

上田: ワールドワイドで配信でき、パッケージのように流通や製造コストがかからないのは利点ですが、配信されているアプリ数が膨大で玉石混交の市場になっています。弊社のように、お金をかけてハイクオリティのゲームを作る会社としては、いかに埋もれずに競争できるかが課題ですね。

―――まさに玉石混交ですよね

加藤: 玉石混交なのはまだ健全な市場だと思います。しかし、そういう状態の中で、夢をもってコンテンツを作っていくというベースそのものが壊れてしまわないか心配しています。アメリカでは数十年前にアタリショックというのを経験していて、粗製乱造によってゲーム市場が完全に崩壊したという例があります。第二のアタリショックは絶対に来てほしくない。目先の利益のために、中身のない飾り付けばかりのものを売ってしまう、ということが氾濫しなければいいなと思います。

―――少し戻りますが、115円のゲームが氾濫している中で900円という価格はどのように考えられたのでしょうか?

加藤: 紆余曲折ありました(笑)。我々はクリエイターとしてゲームを作らせていただいている一方で、ソフトウェアビジネスをやらせていただいているので、そもそも赤字になっては企業としての在り方を問われてしまうことにもなります。価格設定は、赤字にはならないようにと考えましたが、どういう状況で赤字にならないかは色々なパターンを考えました。日本、北米、欧州、世界中で売るものですから、どこに落ち着ければそれぞれの地域のユーザさんに納得いただけて、我々も上手くいくかという折り合いをつけた価格になります。

―――企画の当初から追加コンテンツはビジネスモデルとして考えられていたのでしょうか?

加藤: そうですね。そういう場所も挑戦しなければならないという危機感はありましたので、そのための戦略というのは当初から組んでいました。

―――最初の段階から追加コンテンツとして機体の販売をやられていますが、反応はいかがでしょう?

上田: 予想以上に追加で機体を購入していただいているお客さんが多いですね。気軽にどこでも買えるというのが一つ大きいのかなと思います。115円ならダウンロードしてみてもいいかなと思ってくださるお客さんがいらっしゃるということでしょうか。

―――今後の配信予定などがあれば教えてください

上田:ミッション数と実機体が増えた新バージョンを先日リリースしました。来年も1月に入ってからミッション数と実機体が増えたバージョンが配信されます。こちらは本体のバージョンアップということで、無料でボリュームが増えてます。追加コンテンツの方も、大手メーカーの実機を順次追加していく予定です。

既に第一弾のアップデートは実施済み


■ダウンロードコンテンツの未来

《土本学》
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