「torne(トルネ)に注ぎ込まれたゲーム制作現場のノウハウ」では株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント 制作部 シニアゲームデザイナーの西沢 学氏とソフトウェアプラットフォーム開発部の石塚 健作氏がtorneのインターフェースの開発秘話を明かしました。
torneとはプレイステーション3用の地上デジレコーダーキット。直感的かつ操作性の高いインターフェースで知られ、発売直後は品薄騒ぎも起こりました。
地デジレコーダー数あるなかで、なぜtorneが評判になったのでしょうか。他社の地デジレコーダーはあらゆるニーズに応えるため多くの機能が必要とされますが、「家電はナンバーワンを目指すが、toeneはオンリーワンを目指す」という姿勢の元、本当に必要な機能のみを抽出・簡便化し、toeneにしかできないオリジナル機能をつけたことが勝因となったといいます。
プレイステーション3らしい地デジレコーダーとは「圧倒的な快適操作の実現」。
これを実現するため「マニュアル不要のわかりやすさ」「気持ちイイ応答」「効果的な演出」がキーワードになりました。西沢氏のゲーム制作部隊と石塚氏のシステムソフトウェア制作部隊が「社内でも珍しい横軸の制作体制」(西沢氏)で連携。ゲームデザインのノウハウを導入し、UI(ユーザーインターフェース)デザインを外注して制作が進みます。
2010年3月の発売に間に合わせるためには1月のマスターアップが必須。しかしながら実機が上がってきたのは前年9月という、アプリ先行の開発状況。
デュアルショックだけでなく、PSPやTVのリモコンでも操作できないといけない・・・という制約の下、○ボタンで決定、×ボタンでキャンセルするよう、すべての状況でボタンへの意味づけを統一。「左から右へ操作が進む」「リストなどは上下に並べて選択させる」「どこかで迷っても×連打で見慣れたトップ画面へ戻る」「ダイアログを小さくメッセージ量を抑え、視点を動かさなくても済むようにする」「必要な情報を際立たせ、不要な情報はぼかすなどして隠す」「番組表ではEPGで得られる情報のすべてではなく必要なもののみを表示する」「1フレーム(1/60秒)単位で操作を受け付け、どこでもキャンセルができるようにする」「常に画面のどこかを動かす」「スピード感を上げる効果音を鳴らす」など、ゲームUI制作の基本を取り込んだ配慮を加えることでtorneのインターフェースが完成しました。
こうした配慮をするには、西沢氏がゲーム制作の現場で培ったノウハウが役立ったといいます。インターフェースの評価にはゲームのチューニングチームを使い、ゲーム同様の工程でクラッシュアンドビルドを繰り返すなど「ゲーム作りの基本を忠実に守った」とのこと。
西沢氏は「いまはベース作りが終わり、ここから楽しいことが起こる土俵を整えた。これからのtorneの進化に期待してほしい」と講演を締めくくりました。
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