―――『UFC』の企画はどのように始まったんですか?
森田:これについては、THQ様のほうから提案があったのがきっかけです。これも『WWE』シリーズでの信頼関係あってこその事だったと思います。ファイティングというジャンル自体、日本ではあまりメジャーではないんですが、これについて、ユークスはかなり信頼を築き上げることが出来たと思っています。格闘ゲームではあるんですが、ファイティングはスポーツであるという点、実在するにいる格闘家をモデルで起こしている点というところで違いがあります。
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―――海外の場合、Game Design Documentや、Game Technical Documentを書き起こすのが非常に大変という声がありますが、このプロジェクトの場合は如何だったんでしょう?
森田:仕様の段階からTHQに相談しながら決めていきます。基本的には通訳の方をはさんで、毎週テレビ会議を行って様々な事を決定していきます。
上野:THQにも専属の翻訳者がいて、ドキュメント関連の翻訳や会議での通訳などをやっていただいています。
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―――企画書や仕様書作成で当初苦労した点などはどうでしょうか?
森田:プロジェクト、プロジェクトごとにプロダクトマネージャの意向で変わるということはあるかと思いますが、大きくテクニカルなドキュメントを求められる場合もあれば、段階的にオーバービューから同意していって、提案書をやりとりし最終的に仕様書にまとめる、という場合もあります。
上野:基本的に書面でやりとりしていますので最終的に書面として上がるのはものすごい量になります。
森田:かなり大きなプロジェクトでしたので、技術的な壁を乗り越えなければならないという意識が開発スタッフの中でありました。また、この作品はハイエンドのハード向けであるということも踏まえ、ミドルウェアは出来る限り使うようにしました。Havokの導入などがその例ですね。『UFC』シリーズに関してはスタンディングでの殴り合いだけでなくグラウンドでの戦いもよく行われます。そのようないろんなシチュエーションに対して違和感なく動きを見せるというのが大事だったところが導入の理由です。
上野:物理演算系ミドルウェアの導入を検討したときいろいろ悩んだのですが、総合格闘技のゲームなので作り手がフレーム単位で調整出来ないと、完全に物理演算にまかせてしまうとコントロール出来ないのではという意識がありました。結果、アニメーションベースでその中に物理演算を取り入れるという形で使ってみようという事になったんです。
―――はじめてツールを実験的に導入してみたときの印象はいかがでしょうか?
上野:最初はとにかくビックリしました。これは凄いなと思うのと同時に、これゲームに出来るのかなというのが最初の印象でした。パンチとかをするにも物理演算に忠実すぎて腕が絡まったりしてしまっていたんです。まきついちゃって...凄くリアルなんですけどうまく制御しないと大変なことになるなと感じました。
森田:ラグドールは本当に人形を振り回しているような状態になるんです。あと、数値にちょっとしたミスがあるととんでもない方向に弾かれてしまったり...UFCでの試合のようなアクションを調整するためにかなり時間がかかりました。
上野:最初は本当に苦労しました。Havokというツール自体はよかったのですがそれをどう使うかという点に関するノウハウがなかったので試行錯誤しました。試しては壊しての連続でした(笑)。
森田:物理演算を入れることでアニメーションが意図したことと変わった所が出てきた事もアニメータ泣かせでした。ただHavokによってファイターに対してはラグドールを導入され、その結果、ラグドール同士が接触したらポリゴン同士が埋まらないような仕様がすぐに実現出来ました。ですので、ぶつかったときの反動やりアクションなどは自動的に組み込まれています。
上野:ただ、物理だけでコントロールというのは難しいので基本的にはアニメーションを使ってベロシティを計算して物理演算に渡すという仕組みをつくりました。アニメで誇張した表現を示しながら、ある起点から物理演算にお任せという形にしたんです。毎フレームごと速度を更新しそこで常に物理演算結果を得られるのでそれをレンダリングするわけです。結果として相手に殴られ、ちょっと顔がはじかれるといった表現は物理演算で自動的に表現出来るようになりました。
森田:相手と技の掛け合いを競い合っている時などで腕をはじいたりという表現は、手づけではやはり難しいんです。『UFC』的な動きを再現するためには調整、調整の連続でしたね。
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