この他にデュラ氏が言及したのが「脳汁」現象。これは、ゲームに夢中となり興奮してプレイし続けた結果、脳がシビれたような感覚を受けることを指すとデュラ氏。ゲームディレクターは開発中にゲームの優劣を判断する際、この体験の有無を面白さの指標とし、デザイン調整するとのことです。この体験無しにグラフィックの秀逸さのみを追求してしまうとプロジェクトは炎上するとデュラ氏。
同氏は、更に「脳汁が出る」現象を生み出しやすい体験として、「ギリギリで競り勝った時」、「絶対絶命の危機を脱した時」、「不利な状況から大逆転した時」、「すごい速度でタスク処理を要求された時」、「すごく速いものをコントロールする時」、「勝利への勝ち筋を脳内で思考錯誤している時」等を挙げ、これらを総じて「脳というコップの表面張力ギリギリまで負荷を与え、思考のクロック数をあげた状態」と表現。この現象を脳が「面白い」と錯覚するのだと持論を述べました。ゲーム開発者は人間のこの特性を利用する形で、ユーザーにとって高く評価されるゲームを開発できるのだと言います。
また、ユーザーの「脳汁」を引き出すには、難易度の強弱が重要とデュラ氏。今回の講座ではその点について『百鬼』を例に説明しました。同作は、各ステージごと「手ごわい」と「手ぬるい」モードがあり、双方とも敵の攻撃が10ウェーブで構成されています。普通に考えれば、ウェーブが上位に上がれば敵数も多くなると考えがちですが、「手ぬるい」モードでは、第四ウェーブまでは敵数も漸増するものの、第5ウェーブ目で一気に敵数を増やすのが重要とデュラ氏。第4ウェーブまでの間に、ユーザーに自信をつけさせておき、第5ウェーブで危機感を煽る事でスリルを感じさせるというわけです。第6ウェーブからはまた一気に敵の数を減らし、そこから改めて敵数を漸増させ、最終ウェーブでは同ステージ最多の敵を出現させているとのこと。「手ごわい」モードでもこのペースを早めながらも強弱は同様につけているということが明らかとなりました。
■自らの子供と思い、ゲームの認知度向上のためにあらゆる手をつくす
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