ソニーの巨額買収で注目を集めたGaikaiやグーグルTVとの提携を発表したOnLiveなどクラウドゲームサービスへの関心が高まっていますが、日本発でかつ、2000年代前半から研究やサービス展開を進めてきた会社があります。Gクラスタ・グローバルとブロードメディアです。両社は"世界初のWiFiクラウドゲーム機"と銘打った「G-cluster」(ジークラスタ)を東京ゲームショウ2012で披露しました。
青山一丁目の本社にお邪魔し、色々とお話を伺ってきました。
対応していただいたのは、ブロードメディア株式会社 取締役 ホームエンタテインメント本部長の久松龍一郎氏、同じくブロードメディア株式会社 ホームエンタテインメント本部 販売促進部 担当部長の小林陽一氏、そしてGクラスタ・グローバル株式会社 日本・アジア統括 技術本部長の神鳥泰章氏です。
■技術は十分、しかし必要なのはコンテンツ
Gクラスタ・グローバルとブロードメディアという名前でピンとくる方はゲーム業界歴の長い方かもしれません。この両社がクラウドゲーミングの事業に挑戦するのは実はこれで2回目です。最初は2004年、まだクラウドゲームという言葉も無かった時代に、ストリーミングでゲームを配信する「Gクラスタ」というサービスを開始。Yahoo!ゲームなど様々なポータルサイトと提携し、主にPC向けに配信を行なっていました。しかし時期尚早だったのか、受け入れられず、ひっそりとサービスを閉じていきました。
「クラウドでゲームを遊ぶという技術はかなり前に確立していて、全く技術的なハードルはありません」久松氏はこう話します。長年この分野に投資を行なってきた両社。OnLiveやGaikaiが登場する以前から、この技術は確立していたと言います。問題はコンテンツです。久松氏は「ゲームといえば思い浮かべるのは家庭用ゲーム機のような本格的なゲームです。しかし、そうしたゲームの一部が遊べるからといって、ゲーム機のユーザーを移行させるというのは容易ならざることでした」と振り返ります。過去のサービスでも家庭用ゲーム機でリリースされていたようなゲームが一部登場しましたが、それだけでは不十分だったわけです。OnLiveやGaikaiでも、大作ゲームの一部はリリースされたとしても、そもそも全てのラインアップが揃っている家庭用ゲーム機と競争するのは困難です。
時が経ち、2010年からフランスの大手通信会社SFRで同社のIPTVサービス向けのクラウドゲームサービスに採用された際のラインアップはガラっと変わったものでした。東京ゲームショウでも紹介された『TOWER BLOXX』(次々に登場するブロックが崩れないようにできるだけ高く積み上げるアクションゲーム)など誰でも遊べるカジュアルなゲームに注力。ファミリーがリビングで遊ぶゲームというポジションを狙ったのです。
これが功を奏し、ファミリー、キッズ、主婦などに訴求。会員数は公表してないものの、非常に好調に推移しているとのこと。何より、今年に入ってから同じくフランスの通信会社フランステレコムでもサービスが開始されたという事実がサービスの成功を物語ります。
サービスでは4.99ユーロ、9.99ユーロ、14.99ユーロの3つのコースが用意されていて、それぞれ遊べるラインアップは異なりますが、月額固定料金で遊び放題です。カジュアルなゲームではPopCapやDigital Chocolateといった会社のゲームに始まり、本格的なゲームではユービーアイやディズニーの大作タイトルが揃います。小林氏によれば「最初は4.99ユーロのサービスを契約していたユーザーが、徐々に上のランクのサービスに切り替えていく、つまりゲーマーを開拓しているような傾向もあります」とのこと。
■日本でのサービスは検討中
実際にフランスで提供されているサービスを体験させてもらいました。インターフェイスはブルーを基調にスタイリッシュなもので、さすがフランス!といったところ(日本国内向けのサービスでは変更になりそうですが)。ゲームのブラウジングもクラウド経由ということを感じさせないサクサク感が実現されていました。
同社が「G-cluster」と同様のクラウド技術を用いて提供している、テレビ向けのオンデマンド映像配信サービス「T's TVレンタルビデオ」は、レンタルショップを模したようなインターフェイスで表現力豊かです。これは全て3D映像のストリーミングで実現していて、ワクワク感のあるものになっています。神鳥氏は「作品の視聴を楽しむだけでなく、それを探す部分も楽しみの一つにしたい」と話していて、「G-cluster」でも期待が持てそうです。
「G-cluster」の端末はWiFiを受信する機能と、映像を出力するHDMI端子、コントローラーを繋ぐためのUSB端子のみが備えられている非常にシンプルなものです。非常に軽量で、体感では100g程度に感じられました。サイズもコンパクトですので、テレビの背面などに貼り付けて固定しておくと便利そうです。
似たような製品として「Android Stick」のような、テレビと接続するだけでテレビがAndroid端末になり、ゲームやアプリを再生できるようになるというものがあります。安価な端末が多いのですが、この場合、端末自体でゲームやアプリの処理も行うため、スペックも必要になってきます。「G-cluster」の場合は全ての処理をクラウドで行うため、理論上、どのような高負荷なゲームでもプレイできます。また、コントローラーの接続など、ゲームに特化した部分が優位点になります。
一方、専用の端末だけでなく、将来的にはテレビに内蔵されることも大きな目標になるといいます。久松氏によれば、国内のインターネット対応テレビの普及台数は約4000万台、インターネットに接続されているテレビは日本でざっと500万台ほど。現在はビデオ配信の規格が貧弱なため、ゲームを遊ぶには適さないものの、将来的には十分な環境が整うのではないかということです。
また、「G-cluster」ではテレビだけでなく、スマートフォンやタブレットでのプレイにも対応しています。スマートフォン単体で遊ぶだけでなく、テレビで遊んでいる際に、コントローラーとしてスマートフォンを利用することができます。この場合、テレビとスマートフォンは直接通信するのではなく、それぞれがクラウドに繋がり、サーバーで同期が取られます。スマートフォンを利用することで文字入力やモーションを使った遊びなども視野に入ります。「テレビ、スマートフォン、タブレット、環境を問わず快適なゲームを提供していくのが使命」と久松氏は話してくれました。
神鳥氏も「ゲームがテレビと融合して、もっと一般の人の目に触れるものになっていけば、もっともっと日本のゲーム市場は広がるのではないか」と意気込みを語ってくれました。
現在、「G-cluster」は春のサービスインに向けてコンテンツのラインアップを揃えている段階だとのこと。詳しいサービス提供方法や価格などは追って発表していくとのこと。期待です。
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