ムームーは過去多くのタイトルを家庭用ゲーム機向けに開発してきましたが、現在ではスマートフォン向けに『ネコ探偵』『指忍者』『ブロック・ガイ』『ネコがきた』といったタイトルを自社でパブリッシング。中には世界で100万ダウンロードを突破したものもあるそうです。
家庭用からスマートフォン、数多くのゲームを開発し、自身の成功/失敗そして他人の成功/失敗を見てきた森川氏は過去から学ぶ必要がある一方で、なかなか身にならない事も多いと言います。自分の成功は「成功体験が足を引っ張って考えを変えられない事に繋がるし」、自分の失敗は「痛すぎて直視できない」、他人の成功は「その人の能力や時代性によるところも多い」。しかし他人の失敗は「そこには汎用的な失敗の法則が含まれているのではないか、失敗は世界の財産」だとして失敗から学ぶ重要性を説きます。そして自身の幾つかの失敗談を今のゲーム開発者に共有しました。
1.誰もそんなこと求めてなかった
冒頭でも挙げた『がんばれ森川くん2号』(1997年)は人工知能で成長していくキャラクターがパズルやステージをクリアしていくという当時としては非常に斬新なゲーム。森川氏は「飽きるほどゲームを遊んでいたので、遊ばなくてもいいゲームがあってもいいかもしれない」という着想からゲームを企画。しかし「みんながゲームが大好きな時代だった」ということで広くは受け入れられなかったそうです。ただ、森川氏はこのアイデアが大好きで、iPhoneアプリの『ゆけ!勇者』(2010年)で同様のアイデアが盛り込まれていたことに満足している様子でした。
2.早すぎた
時代性というのは大事です。『アストロノーカ』(1998年)は農場の経営とタワーディフェンスゲームを融合させたようなゲームです。プレイヤーは農場を育てながらも襲いかかってくるモンスターを撃退するトラップを設置する必要もあります。「これからは一次産業ゲーだ」と意気込んだ森川氏でしたが、結果は残念だったようです。しかし『サンシャイン牧場』(2009年)や『FarmVille』(2009年)を皮切りにした農場ゲームのヒットは記憶に新しいところ。やはりタイミングは重要なようです。
3.エッジを効かせすぎた
斬新すぎるのも考えものです。『くまうた』(2003年)は音声合成でキャラクターが歌うというゲーム。そのキャラクターとは恐ろしいクマで、更に歌うのは演歌という3重の意味でチャレンジングな作品でした。「ミスマッチな感じが良いのではないか」と森川氏は考えたそうですが、ユーザーからは完全にイロモノ扱い。森川氏は「一つリスクを取るなら他の要素は鉄板をやったほうがいい」と教訓を述べ、『初音ミク』の登場に対しては「クマ+演歌よりも可愛い子+テクノポップの方が断然いいのは明らか(笑)」と話していました。
4.似て非なるモノだった
多くの家庭用ゲーム開発者が直面した問題で、スマートフォンゲームはどういうものなのか、森川氏も苦悩したと言います。『ブロック・ガイ』というパズルゲームの開発時、家庭用とスマホの差は「規模の違いだけではないか」と考えていたそうですが、実際には何もかも異なるもので、"映画とテレビ、寿司屋と回転寿司、サッカーとフットサル、プロレスと格闘技"のような関係で、「なまじっか似ているものだから難しかった」と振り返りました。
5.うっかりしていた
『指忍者』(2011年)では日本では10万ダウンロード程度でしたが、気付いたら海外では90万ダウンロードもされていたそうです。しかし「うっかりしていたことに広告を入れ忘れていた」そうです。思わぬヒットに慌ててアップデートで広告を入れても時すでに遅し・・・だったようです。
番外として森川氏は蛇足はダメとコメント。『アニマル・レスキュー』というパズルゲームで、適当に描いたキャラクターでリリースした際に、思いがけないヒットをしたため、慌てて清書したキャラクターに差し替えたところ大不評だったそうです。結果、元に戻す事になり、ユーザーからは「本当にありがとう」というメッセージが届いたそう。蛇足はダメということですね。
森川氏は「今日話した事は、やっちゃいけないことリストに入れてもらえれば」と語り、会場に集った開発者の多くが深く同意したようでした。
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