ニッチからマスへと立ち位置を移動しつつあるインディーゲームシーン。あの話題タイトルのクリエイターは今、何を思っているのでしょうか。
1 インディー精神を持ち続けよう
最初は「Spelunky」の作者 Derek Yu 氏が掲げた "教訓"から。Yu 氏はこれまで大きな課題だった開発資金と配信チャンネルの確保がデジタル配信プラットフォームの登場によって敷居が劇的に下がったことを述べた上で、それは同時に、これまでにない競争の始まりでもあったと語ります。そして数多のゲームが市場にリリースされた結果、凄まじい数のインディーゲームと肩を並べながら、他タイトルの商業的、批評的成功を目の当たりにするようになり、そういった状況で自分の "ボイス" を見つけ出すことがとても難しくなった、最近は商業的成功や受賞歴といったものに注力するようプレッシャーがかかりすぎているように感じている、と述べています。
そうして Yu 氏は続けました。
"インディーゲームの商業的成功を目の当たりにし、また実際に自分がその一端を担えたことはとても嬉しく思いますが、それでも私は、そういった「成功」が自分がゲームを作る理由を変えさせたくありません。インディーゲームがここまで躍進できたのは、私達が自らのゲームに愛を注いできたからだったのですから。"
2 ヒット作の後追いをやめよう
「Super Meat Boy」の Team Meat メンバーであり「The Binding of Isaac」のクリエイターでもある Edmund McMillen 氏。McMillen 氏は、自らのビジョンを貫くことの重要性を説きます。
"ヒット作を作りたいという、心でくすぶる火に身を委ねてはいけないんです。ただゲームを面白くする。あなたのファンは、あなたが完成させる日を待っていてくれるのですから。"
"どうやったら売れるか、ターゲットオーディエンスは誰なのか、それを考えだしたら、巨額の予算を投じて大規模チームで作っているスタジオと同じことをやろうとしていることになります。"
3 リスキーな、デカいアイデアに突っ込もう
続いて「Dear Esther」のクリエイター Dan Pinchbeck 氏。Pinchbeck 氏は、Greenlight、IGF、Indiecade、press outlets といった仕組みの登場により、求められるクオリティの水準は凄まじく上がり、一方でリリースされるタイトル数は膨れ上がったこと。そしてその結果、中堅タイトルというのはどんどん難しくなってきたことを指摘。その上で、次のように述べています。
"可もなく不可もなくという惑星軌道を抜けて、超良作ゾーンに突き抜けること、それが唯一残された注目を集める方法です。そんな時推進剤となってくれるのは、リスキーであること、ぶっ飛んでいること、イノベーションです。クローン作品や亜種では、軌道から抜けられません。根本的に、突き抜けたものを作りましょう。"
4 限界まで “面白く” 仕上げよう
ポイント&クリック型ミステリー「Gone Home」の開発に参加している Steve Gaynor 氏からは、実に根本的なコメントが。
"多くの人が遊びたいと思ってくれる、面白いゲームを作ること、それはいつだって簡単なことじゃないですけど、それでやっと入り口に立てます。"、"完成させるためにはクリアしなければならない現実的な問題がたくさんあります。Kick Starter や Indie Fund も出てきましたが、資金の問題はまだまだ大きいです。"
5 情報を広く大きく外に出そう
ファンタジーサイドスクロールアドベンチャー 「Dust: An Elysian Tail」Dean Dodrill 氏は、マーケティングの大切さについて語っています。
"資金とモチベーションの問題 (両者には関係性がありますが) はいつだってあります。たくさんのチームがこのおかげで解散してしまうのを見てきました。それでも、最大の難関はマーケティングです。作品を世に出してみて、大手パブリッシャーが多額の予算を投じてマーケティングする意味がよくわかりました。「Dust: An Elysian Tail」の時は、PR 担当の重要性を過小評価していました。次のタイトルでは、反省を活かしていきたいと思っています。"
まとめ
いかがだったでしょうか? インディーゲームを開発している人であれば常日頃意識していることがいくつもあったかもしれません。しかしそれらの教訓が2012年を代表するタイトルのクリエイターの口から出ていることが、それを実践することがいかに意志の力を必要とするかを示しているように感じられてなりません。Team Meat の McMillen 氏が述べた “心でくすぶる火に身を委ねてはいけない” というのが、結局のところすべての根底にあるのかもしれませんね。
また McMillen 氏のコメントには、「Braid」のクリエイターである Jonathan Blow 氏が「Indie Game The movie」で語った "もしあなたのゲームが個人的 (Personal) であるなら、それはインディーゲームであるということです (著者訳)。" という意見にも通じるところがあるように感じられます。
AppStore、Google Play、Steam のほか、昨年は Active Gaming Media 社の PLAYISM などもあり日本発のインディーゲームが世界中のゲーマーに届くことも特別なことではなくなってきました。今年も、マインドをブロウしてくれるインディーゲームの登場を期待したいですね。
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