現在、スマートフォンの出荷台数は世界的に伸び続けています。日本では2012年にピークに達して、伸び率が低下していますが、グローバルに見ればまだまだ伸びていきます。
アメリカの市場動向では、カードゲームのシェアが拡大していることを佐野氏は指摘しています。これらのカードゲームはDeNA自身も輸出しているタイトルであり、2012年にはUSのGoogle PlayでMobageのゲームがトップ3を独占するという大成功を収めています。このような現象は2011年の市場ではありえなかったことであるため、日本のSAPには朗報であると、佐野氏は述べています。
また、アメリカでは成功タイトルの展開パターンも既につかめているといいます。その基本戦略としては、ひとつのカードバトル系ゲームを成功させることで、同じようなゲームシステムを利用したタイトルを横展開していくことです。例えば、Mobageの『Rage of Bahamut』のヒットを参考にして、より人気のあるIPを使用した『Marvel: War of Heroes』、Mobage以外でも『Kingdoms of Camelot』を元にこれまた人気のあるIPを使用した『The Hobbit』などが挙げられます。ゲーム業界は当たり外れが大きく、リスクを抑え、確実にファンをつかむために成功しているゲームシステムを利用するのが重要だと、佐野氏は説明しました。
次に中国の市場動向に話は移りました。中国市場はAndroidのアプリストアが乱立しているため、非常に複雑化しています。それでも、今年1月の中国のiPhoneの売上ランキングを見ますと、トップ20にガチャ合成型のカードバトルが6つランクインしています。残念ながらこれらのタイトルは日本のものではありませんが、カードバトルというゲームジャンルが受け入れられていることは明らかです。また中国のカードバトルゲームは、日本のブラウザ型と少し違い、パラメータが複雑で戦略性はより高いそうです。
韓国の市場動向は、カカオトークが市場を席巻しており、カカオトークに連携するアプリの多くがランキングに入っています。パズル、シューティング、カーレースといった主にカジュアルゲームが中心であり、これらはトップ3を独占すると共に売上でもトップです。他方、『拡散性ミリオンアーサー』やMobageの『神撃のバハムート』、『逆襲のファンタジカ』など日本初のカードバトルのいくつかのタイトルも成功しています。
総じて、スマートフォンのマーケットは速いペースで拡大しており、ランキングのトップのアプリの売上はどんどん上がっているそうです。これらの成長率は、日本の伸びよりも速く、日本で成功を収めたカードバトル型ゲームは国産、海外産問わずグローバルな市場において受けいれられていると、佐野氏は強調しました。
次にDeNAの海外展開状況に話は移りました。DeNAでは国内のMobageの他、欧米圏のMobage West、中国、台湾、マカオなどを含むMobage China、さらに韓国のMobage Koreaの4つのプラットフォームを展開しています。それぞれ地域にあったプラットフォームを運営しており、現在では制作スタジオも欧米圏だけではなく、ベトナムやチリのサンチアゴなど世界中に拡大しています。
USランキングでは、内製と外製のゲームがバランスよくランキングの上位を占めています。いち早く海外でカードバトルゲームのヒットを飛ばしたCygamesの『Rage of Bahamut』はAndroidとiOSのランキングで1位を獲得し、内製の『Blood Brothers』もAndroidで1位を獲得するなど、成功を収めています。
最後にDeNAがゲーム開発者の海外進出に際して行なっているサポートについて説明されました。現在、iOSとAndroidの両者のスマートフォンでは、デベロッパーが直接マーケットにアプリをリリースすることが可能であり、極論するとDeNAのサポートは必須ではありません。しかしながら、デベロッパーにとって未知の部分が大きい海外市場において成功するためには、DeNAのサポートから得られることが多いと佐野氏は主張しました。
具体的に海外市場に際して、DeNAが行なっているサポートを説明すると、まず開発においてはExgameやShell Appといった開発ツールの提供と技術サポート、さらにセキュリティや不正対策へのアドバイスを行います。海外市場では日本以上にレアカードの複製などの不正行為が起こりやすく、セキュリティ対策を練る必要があるそうです。さらにローカライズに際しては、翻訳会社の紹介や翻訳時のアドバイスを行い、さらにロゴやアイコンの変更といったカルチャライズについてもコンサルタントを行います。リリース時には、マーケットのアカウント登録から海外の税務関連までサポートし、運営のためのインフラやサポート会社の紹介を行います。
ここでDeNAがサポートする「カルチャライズ」についてより詳しい説明がなされました。DeNAでは、言語翻訳を超えたレベルでの仕様変更を「カルチャライズ」と捉え、これまでに様々なナレッジを蓄積してきたといいます。カルチャライズの基本方針は、ユーザーの声をたくさん集めることだといいます。具体的には、ゲームのやっているユーザーのインタビュー、市場動向を把握するための調査、実際にプレイしている動画を分析しているそうです。
そこから明らかになったUS市場のユーザーの特徴として、当然のことですが日本人のようにカードバトルの予備知識がないことが第一に挙げられます。TCGやガチャの経験がないため、基本的な遊び方の部分でつまずくことも多く、ブラウザでのゲームにも慣れていないため、画面を下にスクロールしていく操作もわからない場合があるといいます。
そこで取り組んでいるUSのためのカルチャライズの基本方針は、チュートリアルをわかりやすくすることと、各種機能の改善だといいます。具体的に昨年11月にUSのAndroidランキング売上1位に到達した『Blood Brothers』では、30分という長いチュートリアルをデザインしたそうです。特にチュートリアルでは、バトルや合成といったゲームの基本システムを何回も反復練習させることで、プレイヤーにゲームに慣れてもらうことに注力したといいます。
また、日本のソーシャルゲームでは多い、いわゆる「5クリック」を繰り返していくクエストも、USのユーザーにとっては単調すぎて、選択性がないと感じられるそうです。そのため、クエストの選択性と進捗感を上げるため、マップでクエストを表現することにしたといいます。また『HellFire』というタイトルでは、クエストがペーパートス形式になっており、操作性を入れてクエスト自体に楽しみをもたせたことによって、高い継続率を維持しているそうです。
またバトルのシステムに関しても、「戦略性が感じられない」、「なんで勝ったのかわからない」といったユーザーの声に対して、『Blood Brothers』ではターン制のバトルを取り入れ、視覚的になぜ勝ったのかを明確にしました。さらに攻撃力やスキル、キャラの能力値を確認して、次のバトルへフィードバックできるように注意したそうです。さらに、ガチャや合成といった日本のソーシャルゲームではおなじみになったシステムに関しても、世界観にふさわしい言葉に言い換えるなどのカルチャライズを行ったそうです。
最後に、DeNAのマーケティング方針が説明されました。Mobageはプラットフォームとして集客を行なうだけではなく、ユーザーの定着プロセスを重視しているそうです。さらに定着したユーザーをクロスプロモーションによって他のアプリに回遊させることを実施することで、ガチャや合成といった日本のソーシャルゲームに慣れていくユーザーが増えるといいます。
これらのDeNAのサポートを通して、佐野氏は開発者にMobageと共に世界を取りに行きましょうと力強いエールを送りました。
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