その輝かしい成績の裏で、ゲーム発売当初は、システムやバランス面でプレイヤーから不満が多数寄せられ、公式フォーラムは毎日のように炎上。
発売後の大型アップデートで、いくつかの問題は修正・改善されていったものの、長い間前作『Diablo II』に慣れ親しんだファンは『Diablo III』の新しいシステムに否定的で、PvPアリーナシステムの実装見送りという事態も重なり、責任をとるような形で、開発を指揮したゲームディレクターのJay Wilson氏はプロジェクトから身を引くことになります。
そんな『Diablo III』の光と影に関わった渦中の人物といえるWilson氏のGDC講演には、多くの関係者が詰めかけ耳を傾けました。
Jay Wilson氏がBlizzad入社前に担当した作品は、『Blood II: The Chosen』、『Homeworld 2』、『Warhammer 40k Dawn of War』、『Company of Heroes』など。氏がかつて『Diablo III』を批判した別の開発者に、Facebook上で「Fu** That Loser」と罵声浴びせてしまったのは、こうした素晴らしいキャリアによるプライドの高さゆえだったかもしれません(同氏はその後公式フォーラムで謝罪)。
今回の講演で語られたのは、『Diablo III』の支柱(Core Pillars)となる各要素と、自身がそれらのデザインでどのような決定を下したか振り返るということ。その本題に入る前に、Wilson氏は「Diablo IIIは素晴らしい成功を収めた過去2作の続編であり、自分が前作の開発には関与していない」という事実を提示。これはゲーム制作においては珍しいことでなく、「あなたもいずれ経験するかもしれない」と出席した開発者に忠告しました。
以下が、Wilson氏が示した『Diablo III』の7つの支柱。
・とっつきやすさ
・高いカスタマイズ性
・強力なヒーロー達
・テンポよく得られる報酬
・高いリプレイ性。
・力強い世界観
・協力マルチプレイヤー
次に、これらの要素のうち1~4について、さらに細かな各システムに着目し、『Diablo II』のシステムを受け継いで“安全策”を選んだ部分、新システムに作り変えて“再発明”した部分とに分けて整理し、それらが結果として成功したのか、あるいは失敗だったかを分析。前作と同じシステムを採用するのは、安全策でありファンに敬意を払うやり方であると同時に、クリエイティブ性や革新性は失われてしまう。この選択肢が大きな挑戦でありジレンマだったと言います。
“とっつきやすさ”の要素で、『Diablo III』開発チームが前作から受け継いたのは、ディアブロシリーズの象徴とも言える、見下ろし型カメラ視点、マウスクリックを主体としたシンプルな操作性などです。しかし、ただがぶ飲みするだけでゲームプレイの幅を狭めてしまっていたポーションシステムは再開発し、新たにプレイヤーの位置取りやランダム性による防御的スキルの使用を促すHealth Globes(ヘルスグローブ)のシステムを導入。
『Diablo II』で最も多く使用されたクラスだというSorceress(ソーサレス)は、装備する武器のダメージに影響を受けない魔法攻撃が可能だったため、Magic Find装備だけをひたすら積むというスタイルが主流になっていました。開発チームは、全てのクラスが平等にアイテムの必要性を持つべきと考え、“Primaly Stas”のシステムを採用。ところがこれには、アイテム選びが単純な数字ゲームに変わってしまう弊害が生まれてしまいます。
“高いカスタマイズ性”という支柱では、賛否両論だったスキルシステムについて語られます。Wilson氏は、『Diablo II』のスキルシステムの短所として、1つのスキルに多数のポイントを割り振らなければならず、実際に使用しないスキルも取得する必要があるなど制約が多かった点を指摘。伝統的なツリー型スキルシステムを廃止した『Diablo III』では、プレイヤーが全てのスキルに自由にアクセスできるようにし、非常に高いカスタマイズ性が生まれました。
自由にカスタマイズ出来過ぎてリプレイ性が損なわれ、レベルアップによる成長感も失われた等いくつかの問題はあったものの、開発チームはこのスキルシステムの再開発には概ね満足しているようです。
“ゲームの進行においてテンポ良く得られる報酬”という柱では、単にアイテムが入手できるだけでなく、ボスを含む新たなモンスター、ステージ環境、ストーリー展開、スキルやルーンなど様々な報酬が、連続的にプレイヤーに与えられるように設計されました。ここで、『Diablo III』を語る上で外すことのできないオークションハウスの存在がピックアップされます。
前作『Diablo II』でRMT業者やアカウントハックを狙った詐欺まがいの行為が横行したため、その対策として、自社運営によるリアルマネーサービスも取り入れたインゲームオークションハウスが採用されたのは以前から知られた話。Blizzardは、開発当初ごくわずかのプレイヤーしかオークションを利用せず、流通するアイテムの量も制限されると見積もっていたそうですが、この予想は裏切られ、オークションハウスには膨大な量のアイテムが氾濫することになります。
その結果、比較的性能の高いアイテムが安価で入手できるようになり、プレイヤーが自分でアイテムを拾ってアップグレードしていくという、ゲームの支柱となるテンポが失われることに。Jay Wilson氏は、「オークションハウスがゲームに深刻な被害を与えた」と、初めて公の場で失敗を認める発言をしました。ここから得た教訓は、「壊れていないものを修正しようとしないこと」かつ、「大きな問題(RMT業者など)に対応するのをおそれないこと」。
最後にWilson氏は、『Diablo III』のMonkクラスのデザインする上でのアプローチや定義を説明。別の日に実施されたテクニカルデザイナーWyatt Cheng氏による『Diablo II』デザインの講演でも、開発段階でボツになったスキルシステムやルーンシステムの興味深いインターフェースが披露されたので、それらのスライドをまとめてご紹介します。
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