背景として挙げられたのは米国の教育現場の荒廃です。実に1/3がハイスクールまででドロップアウトし、学校内でのいじめも頻発、子供の自殺も日本と同じように問題とされています。スマートフォンやタブレットのようなデバイスの普及は、学習を妨げる要因になっているとホーキンズ氏は指摘。その一方で、「こうしたデバイスで育ってきたいわゆるデジタルネイティブな子どもたちにゲーム的な教育を提供するのにはまたとない機会ではないか」とも述べます。集中力を高め、モチベーションを与える、ゲームの核を教育に用いる。過去に流行したタイピングゲームは楽しみながら学習効果を得られる良い例だったとしました。『Minecraft』もとても良いとしました。
「ゲームの教育化ではなく、教育のゲーム化だ」とホーキンズ氏は説明します。学習を楽しくするのではなく、楽しいものを学習にする、という考え方です(ゲーミフィケーションではないと言う)。If You Can Companyが来月から基本プレイ無料で提供するゲーム(といって良いものか?)はゲームエンジンのUnityで開発。「教育ゲームと言えば2Dで地味なものというイメージを変える、3Dパワーと素晴らしいビジュアルで直感的な体験を提供していく」とのこと。
If You Can Companyはホーキンズ氏が作り上げた「EA Sports」と同じモデルで作られたそうです。すなわち、餅は餅屋ということです。ジョン・マッデンのようなプロに協力を仰ぎ、ルールブックに基づき、選手の統計データを獲得し、最新のゲームテクノロジーとUIで楽しめるものにする。そして同じフレームワークで横展開をしていく。If You Can CompanyにはEAのベテラン開発者、教育的な仮想空間として知られる『Moshi Monster』のリーダー、教育の専門家たちが集っているといいます。
Unityで作られた世界は『Nintendogs』のようなカジュアルな3D世界で、ユーザーは世界のあちこちに移動しながら、レシピと呼ばれるカリキュラムに挑戦していきます。ホーキンズ氏は「良いゲームは、良い物語とゲームプレイでできている」と述べ、レシピも物語が鍵になると言いました。「物語は感情的な力を与えます、それは何かを前に進める力になります。それに、物語と共に提示された情報は強く頭の中に残るものです」
レシピは毎月追加されていくようなイメージです。物語を追いながら徐々に進めていくようになりそうです。子供が単独で遊ぶのではなく、学習ですから親や教師も進捗を確認して対話をしながら進めていくべきです。ということで状況をひと目で理解するためのダッシュボードという仕組みも提供されるとのこと。
まずはiPad向けに来月から提供されるというこのゲーム。レシピの核心には触れられませんでしたが、登場したものを見てみたいところですね。将来的には他のプラットフォームへの展開も想定されているようでした。「Now is the time=いまでしょ!」という力強い言葉もありました。どんなものになるのでしょうか。楽しみですね。