というわけで今回は名作ホラーゲーム『クロックタワー』のWii Uバーチャルコンソール版をプレイします。 人気作品の原点に立ち返り、その怖さを存分に楽しんでみようと思います。
■1作目にして完成された世界観
本作は少女ジェニファーが主人公。ジェニファーは養女になるために大きな時計塔のあるバロウズ邸を訪れます。しかしそこはなんと殺人鬼「シザーマン」が潜む恐怖の館!シザーマンの追跡から逃れつつ館からの脱出を図るのが本作の目的です。
基本は「逃げゲー」。主人公は特殊能力もなければ戦闘能力も持たないただの少女。密室と化した館から逃げるためのヒントを探しつつ、シザーマンの攻撃を回避していきます。昨今ではフリーホラーゲームでもよく見られる形式ですが、本作はそれらの元祖といえる作品です。元祖ゆえに完成度も非常に高い!
■「もどかしさ」が恐怖を煽る
まずサイドビューで描かれたグラフィックが秀逸。ゴシック調の不気味な洋館の中、いつ、どこからシザーマンが登場するかわからない恐怖…。第三者目線でまるで映画を見ている感覚でプレイできます。
この“第三者目線”は操作にも活かされています。キャラクターを動かしたい方向にカーソルを動かしてYボタンを押すとその方向に動き、Xボタンで停止。走ることもできますがすぐに疲れてしまうので定期的に休憩をとる必要があります。十字ボタンによる直感的な操作ではない分もどかしさを感じますが、このもどかしさこそが本作の醍醐味。この思うようにいかない動きが“第三者目線”のもどかしさに近く、やたらと焦燥感を煽られるのです。
独特の操作に慣れ油断したあたりでシザーマンが登場!→パニックに陥り、プレイヤーの焦りに合わせてジェニファーの行動も挙動不審に→ジェニファーの体力が減ってますます混乱!という流れるようなパニックの二重奏。シザーマンからの回避は完璧に隠れるか、撃退するしかありません。ホラー映画を観ていると「なんでそんなわかりやすいところに隠れるんだよ!」とか「2階に逃げたらアウトだろ!」とかツッコミを入れたくなりますが、実際パニックに陥ったらやってしまうんですよねぇ…。
■敵はシザーマンだけではない!
本作はシザーマンとの命がけの追いかけっこがメインですが、トラップはそれだけではありません。
「まさかここでやられるとは」という初見殺しの理不尽なトラップも多数用意されていて地味に心が折れます。筆者は初見プレイでシザーマンと遭遇する前にデッドエンド!やつも刃を研いで楽しみに待っていただろうに…本作はオートセーブ制なのでゲームオーバーになったらコンテニューから再トライ可能。これまでVCの「まるごとバックアップ」を推奨してきた筆者ですが、本作はいさぎよくコンテニューするのがよさそうです。
ちなみにトラップやシザーマンの攻撃はBボタン連打で回避することもできます。しかもやられでいるだけじゃない。その辺の木片を使って叩いたり、罠をしかけたりもします。先ほど「ただの少女」と書きましたが、何気にジェニファー、強い。むしろこの極限状態でくじけずにいられる時点で只者ではありません。
■エンディングは多数
本作はマルチエンディング制となっており、タイトル画面のエンディングリストで自分がどのエンディングをクリアしたのかが一目でわかります。友達の生存率や謎の解き具合で分岐していく模様。一回のプレイでは全ての謎は解けないので、何回もプレイして全てのエンディングを観ていきたいところです。
シザーマンとの遭遇は分かっていても慣れるものではありません。心に余裕がある時にプレイすることをオススメします。
■ホラーが苦手な方にもオススメ
本作は「怖がらせる」ことにトコトンこだわった作りこみがされているので、夜中に一人でプレイするとたちまち恐慌状態に陥るかも。CGを使ったリアルな表現でない分、人の根底にある恐怖心を煽られているという印象で、しかもアクションゲームとして割り切ることができず、ホラーが苦手な方にはやや敷居が高いかもしれません。
しかし、作りこまれた世界観や謎を解明していくアドベンチャー要素は一見の価値あり!ホラーが苦手な方にもオススメしたいゲームです。ホラー映画と一緒で誰かとツッコミを入れながらプレイすると若干恐怖も和らぐかも。身内や知人を巻き込んでプレイしてはいかがでしょうか?
Wii U VC『クロックタワー』は、ニンテンドーeショップにて800円(税込)で配信中です。
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■著者紹介
みかめゆきよみ
ゲーム好き、日本史好きの漫画家兼フリーライター。
ゲームはジャンル問わずなんでもござれ。難しければ難しいほど燃えるドMゲーマーです。
歴史・ホラー漫画、歴史コラム、イラストなど雑多に活動しています。
サイト「車輪の真上」
http://zwei.lomo.jp/syarin/