アベノミクス旋風で、株価も上昇に転じ、日本全体としては明るさのあった一年ではなかったでしょうか。楽しさを届けるエンターテイメント産業のゲームでも明るい話題が目立ちました。
2013年の締め括りとして編集長の独断で、今年印象に残ったテーマを10個選びました。すっかり抜け落ちていた話題などありましたら申し訳ございません。読者の皆様の今年のニュースもTwitterなどで教えていただければと思います。
第10位. パズドラ、黒ウィズ、チェンクロ、大ヒットスマホゲーム続々
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日本国内でもスマートフォンの普及率が50%に到達。それに伴いスマホゲーム市場も拡大、大ヒット作品が次々と誕生しています。昨年から続く『パズル&ドラゴンズ』の大旋風では、開発元のガンホーの時価総額を1兆円まで押し上げました。コロプラの『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』はユーザー層を女性に大きく広げました。ゲームメーカー勢もセガネットワークスの『チェインクロニクル』など凌ぎを削っています。ちなみにApp StoreとGoogle Playの合算売上でも日本が世界最大になったようです。
第9位. ドラゴンクエスト、スマホで登場
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日本で最も愛されているRPGシリーズの『ドラゴンクエスト』。スマートフォン向けにも配信が開始されました。まずはシリーズ作品が配信。アラサーな筆者の周りでも、過去に遊んだ作品を改めてスマートフォンで遊んだ、という声が多く聞かれました。また、スクウェア・エニックスではドコモのスマートフォンとタブレット向けに、最新作のオンラインタイトル『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族』も配信。どちらも狙いとしてはユーザー層を広げることが念頭にあるようです。
第8位. 有名企業も倒れる アトラス、ネバーランド、THQ
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6月のインデックス倒産は大きなニュースとなりました。同社はアトラスブランドを有して、事業は好調でしたが、過去の買収案件の失敗などの多額の負債が重荷となり、直接的には粉飾決算の疑いで強制捜査が入ったことがが引き金となり民事再生法を申請。事業はセガが買収しました。中堅デベロッパーのネバーランドカンパニーも事業を停止。こちらは本業の不振です。正確には昨年末ですが米国のTHQも倒産。資産はオークションにかけられました。投資額が上がる中で、ヒットビジネスであるゲーム事業を継続していくのは名前が知れた企業であっても容易ではないことを思い知らせてくれます。
第7位. スクウェア・エニックス、和田社長退任
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2001年から社長を務め、ゲーム業界に関する様々な発言でも注目された、スクウェア・エニックスの和田洋一社長が5月で退任しました。野村證券出身ということもあって、"ゲームより数字"というような見方をされることもあった和田氏ですが、実際にはゲームを誰よりも勉強し、社内開発体制の強化に注力し、社内の評判は良かったようです。最終的に業績には反映されなかったのが残念でなりません。和田氏は現在も在籍し、クラウドゲーム技術「Project FLARE」の発表では名前が出ていました。
第6位. モンハン、ポケモン トリプルミリオン達成
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2013年はニンテンドー3DSがクリティカル・マスに達した一年だったと言えるでしょう。夏に発売された『モンスターハンター4』そして『ポケットモンスター X・Y』は300万本を突破。日本では携帯ゲーム機強し、という印象を鮮烈に残しました。年末にはスマートフォンで誕生した『パズドラZ』が3DSに登場。こちらもあっさりと100万本を超えました。早くも収穫期という趣の3DSです。
第5位. 生き残るのは数社か ガンホー・ソフトバンクがスーパーセルを買収
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10月、ガンホーとソフトバンクが共同でフィンランドのスーパーセル(Supercell)を買収しました。その額、実に約1500億円。数百億円クラスの買収はソーシャルゲームの世界では欧米のパブリッシャーで幾つかありましたし、グリーのFunzioもそれなりの額でした。しかし、4桁億円となるとビベンディがアクティビジョンを買収した際の約2600億円まで遡るかもしれません(2007年)。
スーパーセルは『Clash of Clans』や『ヘイデイ』を提供するデベロッパーで、世界中のチャートを席巻しています。スマホゲームの世界も優劣がはっきりしてきていて、例えば米国のチャートを見てもKing.com、Supercell、EA、Funzio、Kabam、Zynga、Big Fish、Glu Mobileなど(プラス日本勢)お馴染みの名前ばかりで、上位に新たに入るのは困難になっている様子が伺えます。ガンホーを始めとする日本勢の2014年の戦略が興味深いですね。
第4位. Oculus、Ouya Kickstarterが変える世界
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クラウドファンディングサイトのKickstarterが今年も多数のプロジェクトを生み出してきました。Kickstarter前であれば資金調達が困難であったようなものが世の中に生まれ出しています。残念ながら商業的な成功は難しいようですが、Androidベースのゲーム機のOuyaは実際にリリースまで漕ぎ着けました。来年の注目はVRヘッドセットのOculus Rift。別途資金調達を行い、人材獲得も順調で、消費者向け製品を来年にもリリースすると見られています。想像もしないようなプロジェクトがゲームの世界を変える日も近そうです。Kickstarterプロジェクトのその後、ゲームカルチャー系プロジェクトを追うも参照。
第3位. ゲームもシェアする時代に ゲーム実況も盛況
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Facebookに陰りが見えてきたという報道もありますが、シェア全盛の世の中。その流れはゲームにも押し寄せています。これまでも非公認のゲーム実況やスクリーンショットの投稿といった行為は多分に行われていたわけですが、PlayStation 4、Xbox Oneの両次世代機ではプレイ動画の投稿機能が標準搭載されることに。メーカーがコントロール可能ですが、配信が公認された形に。ゲーム実況プレイヤー(生主)の中には知名度を上げていく者も。ゲームもシェアが文化となりつつあるように感じます。
第2位. PlayStation 4、Xbox One発売 ― 次世代の幕開け
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次世代ゲーム機のPlayStation 4とXbox Oneがそれぞれ米国などで発売されました。前者はゲーム機にしかできない本格的なゲーム体験を追求、後者はエンターテイメント端末としての進化を目指しました。汎用機全盛の時代に専用機としての意味を模索する両者ですが、最初の商戦期では両ハード共に200万台を超えるセールスを記録したと報告されており、まずは順調な滑り出しと言えるでしょう。ゲーム機としての意味を見せられるゲームをどこまで提供できるかが鍵となりそうです。
第1位. 山内溥氏逝去
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任天堂の中興の祖にして、第3代目の社長を50年に渡って務めた山内溥氏が9月19日に逝去しました。山内氏は、横井軍平、宮本茂というクリエイターを見出し、今のゲームビジネスの根幹を作り上げたといっても過言ではありません。奇しくも東京ゲームショウの初日、閉幕後にホテルで報道に接した筆者はひとつの時代の終わりを感じざるを得ませんでした。その精神は「独創」であり、「われわれが考え、形成し、創造し、歩む。人に影響されたり他の会社の動向に左右されるようなビジネスをするつもりはない(東洋経済オンラインより)」という言葉に集約されます。任天堂はこの言葉の下、数々の世界的なゲームフランチャイズを生み出し、ゲームの歴史に残るハードウェアを生み出し、他の追随を許さない強大なブランドを打ち立ててきました。今年も様々なニュース、話題、流行があり我々は日々伝え、この記事では振り返ってきたわけですが、山内氏の言葉はそうした移ろいやすい世からクリエイティブもビジネスも独立しなければ本質は追求できないことを示しているのかもしれません。その時代は終わっても、精神は受け継がれることを願ってやみません。